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クール・エール  作者: 砂押 司
第3部 アリスの家族

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カミラギノクチ

地図上、ネクタ大陸はカイラン大陸の3分の1ほどの大きさであり、その輪郭は日本の四国のようなくびれた平行四辺形をしている。

ほぼ全てが森林に覆われたその大陸全てが「ネクタ」という単一国家であり、その内部は4つの小さな地区と1つの大きな地区に分けられていた。


すなわち、北西に位置するカミラギ地区。

南西に位置するカンバラ地区。

東に位置するカミカサ地区。

北に位置するカンテン地区。

そして、中央から南の全てを占めるカミノザ地区である。


森人エルフが住んでいるのはカミラギ、カンバラ、カミカサ、カンテンの4地区で、それぞれ海際の一画にノクチ、つまり港町を設けている。

アーネルからはカミラギノクチ、チョーカからはカンバラノクチ、エルダロンからはカミカサノクチ、サリガシアからはカンテンノクチにしか船は着けられない。

来航者が滞在できるのはノクチだけで、それぞれのノクチから勝手に地区内に入ったり他の地区に転移した場合は、……死罪」


「カミノザは?」


「そこはフォーリアル様がいらっしゃるところだから、森人エルフも立入禁止。

入るには4地区の区長に申請を出して、2人以上から許可を貰わなければいけない。

来航者の立ち入りなんて論外。

南の海岸は船を着けられるような浜がないから密入国も無理だし、しても木竜に殺される」


「……えっと。

じゃあ、まずはカミラギノクチからカミラギに入る許可を取って、その後カミラギからカミノザに入る許可を取らないといけないわけか」


「そう」


「……そもそも、俺はカミラギに入れるのか?」


「私のパートナー、ということで許可を取るしかない」


「家出したお前に許可が出ない、なんてことはないよな?」


「……」


「そこで迷うのか?」


アーネルポートから出港してちょうど2週間後、『青の歓声号』に与えられている船室のテーブルで頬杖をついて座る俺は、正面で無言のまま視線を横にずらしたアリスに問い返していた。

テーブルの上に広げた地図、ザザから借りてきたそれには四国をさらに斜めに引き延ばしたようなネクタ大陸の形が記されている。

横の別の紙には、ネクタ大陸内の地区割の線がアリスによって描かれていた。

そのカミラギノクチ、四国に当てはめれば愛媛県松山市の辺りになるであろう部分に目を落とし、再度視線をアリスに戻す。


普段の無表情のまま、やや目を細めた家出娘の緑色の瞳は不安そうな、困ったような……。

家出の事実を俺に告白したときと同じような色を浮かべたまま、何もない船室の壁の板をにらみつけていた。


「……私の扱いがどうなっているか、わからない。

……だけど、無理矢理入るのだけはダメ」


「最初から、そのつもりはない」


やがてぼそりとそう付け足したアリスにそう即答すると、アリスの瞳には意外そうな色が映る。

俺の恋人は、俺を何だと思っているのか。


「お前の故郷で暴れてどうする?

……それにフォーリアルがどんな奴かもわからないのに、下手なことはできない。

俺の方が強いなんて保証は、ないんだからな」


「……うん」


アリスが最初の部分だけを聞いて少し頬を緩めたことに気づいて、俺は現実的な問題点も指摘しておいた。

まぁ正直なところ、アリスをカミラギへ入れることや森人エルフと交渉することについては、水の大精霊としての権威を使う、という最終手段があるのでそれほど心配はしていない。


俺の懸念はむしろ、後者だ。


木の大精霊、フォーリアル。

歴史上は創世直後からネクタの深奥に君臨し続ける、実在が確認されている5属性の中では最古の大精霊。

大精霊になって1年も経っていない俺よりも、……おそらくは強いはずだ。


「……」


「……」


「……まぁ、正攻法で行こう。

何とかなるだろうし、何とかするしかないんだから」


「……うん」


そう、今回は何もかも相手のルールに合わせなければならない。

アリスの家族にしても、森人エルフにしても、そしてフォーリアルにしても。


船室の中、不安を打ち消そうと無理矢理笑みを浮かべた俺に、アリスも小さく笑みを返してくれた。

















「では、お支払いはご帰国後に王都の商会本部でさせていただきます。

こちらが証書になりますので、ご確認ください」


「……よし」


2日後、『青の歓声号』はカミラギノクチに到着した。


甲板の上の竜魚や甲魚こうぎょ鎧魚よろいぎょ剣鱗けんりん蒼石鱗そうせきりん宝蟹たからがに……。

航海の間に集めたAクラス及びBクラスの魔物の死体や素材の氷漬けの山の前で、証書にサインを入れた俺と満面の笑顔のザザは、売買契約完了の握手を交わした。


普通なら、これら魔物の素材は冒険者ギルドに持ち込んで売却すればいいのだが、ここではそれができない。

なぜならカミラギノクチ……というよりも、他種族が立ち入れないネクタ大陸には、冒険者ギルドの支部が存在しないからだ。

その上、ノクチならともかくネクタ内では金貨などの貨幣も使えない。


逆に、竜魚をはじめとするAクラス、Bクラスの魔物素材の数々は航海の間から、商人としてのザザの心を激しく刺激していたらしい。

商い次第では2倍や3倍どころか、数字の桁1つが変わるであろう希少品と珍品の山。

もちろん、自分の腕を試し業界に顔を広めようという目的の他にも、『魔王』とのパイプを作っておこうという計算もあったはずだ。


あるいは、ウォルの将来のことも考えて俺がそう仕向けた、と言ってもいい。

互いの都合とそして利害が一致した結果、俺の手元にはイラ商会に対する金貨8千枚の債権証書が残っていた。

この取引と握手をもって、ザザたち『青の歓声号』の面々とはここで一旦お別れだ。

俺とアリスがどのくらいネクタに滞在することになるかわからない以上、帰りはおそらく別の船になるだろうしな。


「大変良い旅と、勉強をさせていただきました。

今後とも、ご贔屓ひいきのほどを」


「旦那方のおかげで助かりました。

また一緒に、船に乗りましょうや!」


「「ありがとうございました!!」」


ザザ、コーザック、その他の乗船員たち。


「ああ、またな」


「こちらこそ、お世話になった」


見送る全員と挨拶を返し、俺とアリスは渡板わたしいたから桟橋へと降りた。


「暑いな……」


「海風があるし、ノクチはまだ涼しい方。

気温よりも、湿度が高いからそう感じる」


「気温、下げるからな」


「私もその方がいい」


「……お前は森人エルフとして、それでいいのか?」


森人エルフでも、暑いものは暑い」


前日、まだ海の上にいたから徐々に気温が上がり出しているのは感じていたのだが、どうやらネクタ大陸の気候は亜熱帯といったところなのだろうか。

桟橋を並んで歩きつつ、帰郷一番で地元民失格なことを言う恋人も範囲に収めながら、俺は大気中の水分に……確かに湿度が高いな。

……水分に干渉し、周囲の気温をアーネルと同じ程度まで下げる。


今更だが、アーネルポートでアリスに通気性のいい薄手の服を勧められた本当の理由が、ようやくわかった。

白い幾何学模様が入った黒地の風布かざぬのでできた服は、別に実家の両親に会わせるための勝負服ではなかったらしい。

そんなことを思う俺の視界には大小20以上の帆船と、木製の巨大桟橋に何本ものロープを投げる他の船の操船技師たち、あるいは桟橋の上を木箱や樽、布袋を担いで船と浜を往復する船奴たちの姿が映っていた。


通常、港は湾内や入り江などU字状の地形に設けられ、その岸は大型船舶が接岸できるように埋め立てられる。

実際、ラルポートやアーネルポートも土属性魔法によってそのような造成がなされていた。


しかしカミラギノクチは、浜から湾内に頑強な桟橋を伸ばすことによって港としての機能を確保していた。

海上を10本、扇状車庫から続く線路のように設置されたその桟橋は全て組織密度の高い、おそらくはウォルで俺が建材として利用した鉄の木が使われているのだろう。

それぞれが4車線道路ほどの幅を持ち、高速道路の柱のような太さの丸太で各部を支えられているその分厚い木製桟橋は、もはや木造建築物とは思えないほどの安定感と強度を有していた。


サクリ、……サクリ。

桟橋を渡りきり俺とアリスのブーツに包まれた足がネクタ大陸、その浜の細かい砂を踏む。


「久しぶり……」


「……」


さらに100メートルほど歩き、地面が白い砂から赤茶色の土に変わる頃にアリスはぽつりと懐郷の言葉をこぼした。


が、俺はその言葉に何も返せないほどの衝撃を受けていた。

なぜなら、ネクタ大陸北西部カミラギの港町でありアーネル王国との交易を行う、カミラギノクチ。


その光景が。

まるで、日本の町家街まちやがいのようだったからだ。


ある程度は区画整理がされているらしく、独立した8から10軒ほどが列となって建てられている町家。

それらは全てが木造で引き戸と小窓、その内側に障子しょうじの窓が設けられているのが見える。

屋根にかわらこそないものの、2階の格子窓にかけられたすだれが海風にゆらゆらと揺られていた。

さらに、見える範囲の町屋の全ての1階部分は商店らしく、布の暖簾のれんがはためく軒先には木製のベンチが置かれている。


もちろん、理解はしていた。


木属性魔導を得意とし、国土のほぼ全てが森林であるネクタが木造建築を得意とするのは当たり前だ。

潮風で錆びてしまうのだから金属の蝶番ちょうつがいは使わない方がいいし、蝶番を使わないなら引き戸にした方が早い。

紙の生産地なのだから、障子紙も非常に安いのだろう。

この気温だ、窓を閉め切れば暑いし強い日光も遮りたいので、簾を下げるのは理にかなっている。

同じ理由で、戸を開け放しても中が見えないようにする布暖簾も役に立っているに違いない。

高温多湿な地域ならこのような建築構造になるし、それはただ合理的な選択の結果に過ぎない。


ここは異世界だ。

日本では、ない。


事実、食堂らしい店に入っていく中年の男は、腰にミスリル製の魔剣を下げている。

店の店主か従業員なのだろう、その魔剣士を笑顔で招き入れる女は黒いウサギ耳の獣人ビーストだ。

道の真ん中を大八車だいはちぐるまで運ばれる木箱には、見たことのない極彩色のバスケットボールほどの果物が積まれている。

その先の軒先のベンチでは、年老いた魔導士が火属性【発火ファイン】を使って葉巻煙草はまきたばこの先端に火を点け、ゆっくりと紫煙をくゆらせていた。


「……どうしたの、ソーマ?」


立ち尽くしていた俺の右手、【精霊化】させて水の塊となっているその手を、包んでいる黒い手袋の上からアリスが握る。

ゆっくりと視線を向けると、青色のマントのフードを脱ぎ瑠璃色がかった銀髪。

怪訝そうに俺の顔を見つめる、緑色の瞳があった。


「大丈夫?」


「……ああ……、……行こう」


「う、うん」


その色が心配に変わる前に、俺は歩き出した。

表情を消した俺のその手に引かれて、アリスも歩き出す。


「……いい所だな、と思っただけだ」


「……そう?」


すぐに取り繕うように俺が漏らした言葉に、アリスはそれだけを返した。


「あれは、木で造った格子の窓に内側から紙を貼っている。

他の国と違って、ネクタの中なら紙が安いから。

それから、あれは……」


歩きながら町屋の説明してくれるアリスの声が、どこか遠く聞こえる。


そうだ。

ここは、日本ではない。

それが何なのか形容できない、しかし冷たいような感情を押し殺して、俺は顔を前に向けた。


そう、ここは。

俺とアリスが、変えようとしている世界だ。


2人で歩く道の先には。

長大な丸太で組まれた都市壁と、その奥でうっそうと茂っているのであろう大森林の深い緑色が、高くそびえ立っていた。





「……?」


近づいていくと、木製の都市壁は20メートル近い高さがあるようだった。

遠目で見た通り、巨大な丸太を縦に並べて連結されたその壁は、異様な圧迫感を感じさせる。

湾のU字を大きく囲むように浜のきわまで囲んだその都市壁は、排他的、と評される森人エルフの性格を強く表しているようだった。


その中央。

都市壁に設置された巨大な門の前で立ち止まった俺とアリスを見て、脇の詰所から若い男の森人エルフが出てくる。

いぶかしむような緑色の視線は、アリスのそれとは違う濃さと暗さを宿していた。


「ネクタに来るのが初めてなら、ここから先は森人エルフしか通れないよ、と言うつもりだったんだが……そっちのお嬢ちゃんは同族だよな?」


アリスを指してお嬢ちゃん、とは言ったものの、正直俺の目には眼前の森人エルフがアリスと同世代にしか見えない。

人形のように華奢で美しい外見と、人間よりも長くとがった耳。

銀色の短い髪に、アリスのそれとは違うもっと濃い緑色の瞳を持つその年齢不詳の男は、躊躇いなく腰から木製の杖を抜く。


「アンタは、何だ?」


さすがに、それをこちらに突き付けるようなことはしなかったものの、既にその瞳には剣呑な色が混じり始めていた。

排他的で、閉鎖的で、頑固。

一般にそう言われる、種族としての森人エルフの特徴を思い出し、俺はいかにアリスが森人エルフとして変わっているのかを思い知る。

……まぁ、アリスも結構人見知りのはあるし、頑固と言えば頑固だけどな。


そんなことを思いながらどうしたものかと考えていると、そのアリスが1歩前に踏み出した。


「私はカミラギ地区、カンナルコ家の次女のアリス=カンナルコ。

こっちは私の……パートナーの、ソーマ。

区内の実家に帰るため、中に入りたい」


「……」


アリスにしては大きな声での口上に、門番の男は無言で視線だけをそちらに動かす。

顔が端整なだけに、そこに浮かんでいる悪感情が露骨に表れていた。


「そんな名前での出区しゅっく申請も、他の地区からの入区にゅうく連絡もないんだが?」


「なら、カンナルコ家のマックスかアリア、マリアに連絡を……」


「その前にどうして出区申請がなかったのか、説明を」


「……それは」


おそらくは、規定の手続きが成されていない点で止められているのだろう。

が、文字通りの部外者である俺が強引に口をはさむわけにもいかず、とりあえずアリスの話が終わるまでは黙っていようと思っていたときだった。





「そのヒツヨウはない」





突如、金属音のような声が門番の傍らから響き渡った。


「ケイヤクシャ、モローよ。

そのカタは、ワレラがチチウエのオキャクジンである。

またそのムスメも、ドウヨウである」


男が立っていた地面、その片隅に生えていたタンポポのような花が根元から増殖しつつ、一気に伸びあがる。

茎や葉、花が絡まり合いながらそれは人の形となり、やがて眼前の森人エルフ、モローとほぼ同じ背丈の男の姿となった。


「ヤズナズ……、どういうことだ?」


「コトバのとおりだ」


契約者であるモローから乾いた声で問いかけられた、ヤズナズと呼ばれた木の上位精霊は、しかしその契約者を無視して俺の前に跪礼きれい姿勢をとる。


「トウダイのミズのダイセイレイ、ソーマどの。

ワレラがチチウエ、フォーリアルさまよりゴライホウのケンはうかがっている。

ようこそ、ネクタへ」


「……」


「……ああ」


どういうこと?


知らない、お前は?


私もわからない。


状況についていけず無言でアリスと視線を交わした後、とりあえず俺はそれだけを返事した。

俺もアリスも、本当に意味がわからない。

おそらく当事者ではないモローは、尚のことだろう。


「お、おい、ヤズナズ……」


「やかましい、小童こわっぱ


そのモローが、契約する上位精霊に確認の言葉を発しようとしたとき、さらにもう1名、幼い少女の声が加わる。

都市壁を構成する丸太、その1本の表面が人型に変形し、それはすぐに全身を木目に覆われた木製マネキンのような、……そう、ちょうどアイザンくらいの小さな少女の姿をとった。


「ムー様……!?」


自身に慌てて跪くモローを無視し、ムーと呼ばれた上位精霊はこちらへ歩いてくる。


「!?」


「カンナルコ家の次女、そなたはよい」


「……はい」


ムー、というモローの発した言葉に俺の隣で同じく膝を突けようとしたアリスは、ムー本人からの制止の言葉に戸惑った様子を見せたが、結局立ち上がった。

そのムーはヤズナズの隣、俺とアリスの正面で優雅に一礼する。


「お初にお目にかかる、みず殿。

わらわはムー、偉大なる当代の木の大精霊フォーリアル様の最初の子にして、このヤズナズら兄弟姉妹たちの長姉ちょうしに当たる。

まずは、あのヤズナズの契約者の不遜な態度、代わってお詫びする」


「……シツレイした」


続けて深く一礼したムーに続き、ヤズナズも跪いたままもう1度頭を下げた。


「!?!?」


「い、いや……、門番としては当然の仕事だったと思う、し……。

別に、全然気にしてない、から……」


自身が契約する属性の、上位精霊筆頭。

水属性でいうシムカと同じクラスの存在が現れ、角度的には自分に向かって頭を下げられていることに、アリスからは強い混乱の空気が漂ってくる。

俺としてもさすがにモローが不憫で、若干歯切れ悪く蒼白になっている門番をフォローした。

フォーリアルがどういう情報を得てどういう指示を下したのかはわからないが、いくら何でもモローが可哀想だ。


「お心遣い、痛みいる。

……父上からは、正規の手続きをとられた後にカミノザへおいでいただきたい旨、言伝を預かっておる。

カンナルコ家の次女、そなたも水殿と一緒に来るように、とのことじゃ」


「カンナルコのイエのモノには、ワレがつたえよう」


「……そうか、わかった」


「わ、わかりました……」


しかしムー、そしてヤズナズとしてもモローのことはどうでもいいようで、そちらを見ることもなく会話はどんどん進んでいく。

明後日の方向に跪いたままの門番の耳がどんどん赤くなっていく光景を、俺は渾身の力で視界から外した。


森人エルフが勝手に定めた細かい決まり事など、妾は知らぬ。

しかし父上は、『正規の手続きで』カミノザまで来られるように、とのおおせじゃ。

ヤズナズ、妾は水殿とカンナルコ家の次女を宿にお連れする。

後はお前とお前の契約者に任せる故、話が決まったら知らせに来い」


「たしかに、アネウエ」


「は、はいぃっっ!!」


変わらず金属音の声で応えるヤズナズと、もう半泣きで返事をするモロー。


「では水殿、お待たせした。

こちらじゃ」


ジャイアントスイング並みの丸投げをかました木の上位精霊筆頭はやはり優雅に一礼し、トコトコと歩き出した。

振り返ってカミラギノクチの中央付近、他よりもやや大きな建物に向かうらしいムーについて、俺とアリスも歩き出す。


ただ、その前に。


「……」


「……申し訳ない」


俺はモローと目を合わせ、お前は間違っていない、としっかりと頷き。

アリスは、深々と頭を下げて謝罪した。

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