グロー・アップ 中編
その日の夕食が終わった後、俺とアリスの部屋にはサーヴェラ、アンゼリカ、ロザリア、タニヤ、ルーイー、ヨーキ、ランティア、ニア、ネル、ガラ。
10人の子供たちと、そしてミレイユがいた。
さすがに部屋の中心にあったイスとテーブルは動かしたが、ウォルの1部屋は16畳近い広さがあるためそれほど圧迫感は覚えない。
ミレイユが魔導で発動させた【灯火】の、その天井近くに浮かぶ拳大の真球から発せられる光のオレンジ色により、普段ならもう暗いはずの俺たちの部屋の中はまるで、まだ日が出ている時間のような明るさになっている。
電気のないこの世界で夜の灯りとなるのは火そのものか【灯火】のような火属性魔法、あるいはそれが霊字で刻まれた魔具、そして月の光くらいしかない。
俺の場合は【水覚】で周囲の知覚が可能なためにそれほど難儀することはなかったが、都会に住む現代人にとってこの世界の夜は暗黒と言って差し支えないだろう。
ウォルの場合もそれは変わらず、ましてや村一面に無数の水路が張り巡らされたこの村を夜に歩き回るのは、それなりに危険でもある。
したがってウォルでは毎晩、日が暮れた後は各住居が集まっている一帯と浴場、そしてトイレの付近とその間の道には無数の篝火を用意していた。
他に一応【灯火】の魔具もいくつか備えてはいたが、これは主に来訪者向けの貸出用だ。
夕食と入浴が終わったら日没と同時に寝て、夜明けと共に起きる。
これが村の住人たちの生活サイクルで、俺も日没後に何かの仕事をさせることはない。
住民同士の各部屋間の行き来くらいはあっても、夜に集団で行動するようなことも基本的にはないはずだった。
しかし、今日に限ってその基本的にはなかったことを俺がさせているため、夕食の際に呼び出しを受け、今は俺たちの部屋の床に座っているサーヴェラたち10人は少し緊張した面持ちだ。
クロタンテ・プロン組、初期入植者の中でも各班の班長を務める、今やそれぞれがウォルの運営の核となっている子供たち。
その前に向きあって立つのは俺と、その左右にアリスとミレイユ。
その間に移動させたテーブルには、木製の鉢が1つとタンブラーが10、そして封をされたままの白い石製の小さなボトルが1本置かれている。
「……また何かやるの、にーちゃん?」
「……まぁな」
普段立ち入ることが少ない俺とアリスの部屋の中、特に本棚の方をもの珍しげに眺めていたサーヴェラが、俺の瞳を見つめてにやりと笑う。
「何か、緊急の臨時作業ですか?」
「いや、そういうことじゃない」
「「?」」
ここにいる全員が班長であることからそう問いを重ねてきたアンゼリカ、サーヴェラの声に反応して慌ててアリスの衣裳箪笥から視線を戻した少女に否定の返事をすると、全員の顔に疑問の色が浮かんでいた。
対照的にアリスは静かな無表情を貫いており、ミレイユは穏やかに微笑んでいる。
この2人には先に、今から俺がやろうとしていること……。
いや、今から子供たちにやらせようとしていることについて俺の考えを説明し、意見も求めていた。
そして。
昼過ぎ、頭を抱えて小さく唸りながら手紙を書いていたアリスからは、緑色の瞳を閉じて少し考えた後。
いいと思うけれどそれぞれの意思は尊重してほしい、と。
夕食前、味噌汁の味見をして難しい顔をしていたミレイユからは、真紅の瞳を細めてふふふ、と笑った後。
きっとあの子たちなら大丈夫でしょう、と。
その結果、それぞれの考えと言葉で賛成の意を示してくれている。
だが、俺としても。
アリスに言われるまでもなく、子供たちに無理強いをする気は最初からなかったし。
ミレイユに言われるまでもなく、それを子供たちが拒否するとも思っていなかった。
「お前らには、今から俺の血を飲んでもらう」
「「!?」」
たとえ、それがこのような内容だとしてもだ。
「「……」」
俺との付き合いも半年を超えたクロタンテ・プロン組の人間は、俺の言動の大半が本気のものであると知っている。
そのためこの場で、血を飲ませる、という俺のアブノーマルな宣言を冗談と受け取る者はいなかった。
とはいえ、何のために、という困惑した表情や視線はそのままだ。
だが、俺が続けた一言でその表情は一転して驚愕のものとなった。
「ここにいる10人に、魔導士になってもらう」
「「!!」」
じわじわと湧き上がる子供たちの表情、歓喜と興奮のそれをみとめて、俺は小さく安堵の息を吐く。
畜産班・グリッド班班長、サーヴェラ。
農業班班長、ランティア。
森林班班長、ニア。
家禽班班長、ネル。
ヤギ班班長、ガラ。
生活班・教育班班長、アンゼリカ。
食事班班長、ロザリア。
宿泊班班長、タニヤ。
清掃班班長、ルーイー。
販水班班長、ヨーキ。
あらためて全員のそれぞれの顔を注意深く眺め、その全員の顔に不安感や忌避感がないのを確かめた。
隣で頷くアリスと、笑みを深くしているミレイユともその視線を交わした後、俺は右手に氷のナイフを生成する。
冒険者、魔騎士、魔具職人……。
この世界で花形と言われ、あるいは英雄や重鎮と呼ばれる多くの人間には、絶対の共通点がある。
すなわち、その全員が魔力3万を超える、高位魔導士だということだ。
この世界で魔導士になれる人間、つまり精霊と契約できる人間が全体のおよそ3パーセント。
さらにその中で高位魔導士と呼ばれるBクラス以上になれるのが、約2パーセント。
つまり1万人の内わずか6人、0.06パーセント。
それがこの世界で最強や最高、最良や最善の座を奪い合える人間の数だ。
そして、たとえ決戦級や超戦士といったその頂まで到達しなくとも、この0.06パーセントが路頭に迷うことなど絶対にあり得ない。
例えば、この世界での必需品である金属装備を造る鍛冶職人として。
例えば、市民の憩いの場である公衆浴場の管理者として。
例えば、貿易や水運に欠かせない帆船を操る操船技師として。
例えば、土や石から壁や屋根を練り上げる建築業者として。
例えば、痩せた大地を緑溢れる楽園に変える農業指導者として。
例えば、重傷や重病ですら一瞬で治してしまうギルドの治療担当者として。
コストや威力、精度などあらゆる面で霊術に勝る魔導を使えるというだけで、彼らの人生は町の名士として約束されたようなものだ。
それこそ赤字にでも堕ちない限りは家族も縁者も愛人も、余裕で養っていくことができる。
加えて、魔導に関する資質は遺伝する、という事実もある。
よって彼ら、あるいは彼女らは結婚相手に困ることもない。
複数の相手と結婚する高位魔導士は決して少なくはないし、男なら2桁に届く愛人を抱えているケースすらあった。
ちなみにこの場合は、自分の子供が高位魔導士になりいずれは国の中枢となれるかもしれない……と、愛人たちもその親も、むしろその関係性を喜ぶのが普通らしい。
国家の方もその辺りの事情は心得たもので、この世界で厳格な一夫一婦制を敷いているのは森人が住むネクタだけだ。
高位魔導士の数はそのまま国の力であり、魔力10万を超える決戦級の人数は国の趨勢に直結する以上、国がその子孫の繁栄を望まない理由などない。
実利の前に倫理が捻じ曲げられるのは、ある意味で定義式や化学現象のように、必然かつ当然のことなのだろう。
そして、現実は残酷でもある。
魔力資質の大部分は先天的なもので、魔人でもない限り後天的に大きく上がるケースはほとんどないからだ。
この世界の人間は生まれた瞬間から魔導士かそうでないかが、すなわち、強者か弱者かが決まっている。
それがこの世界の社会構造で、常識だった。
しかし、ほとんどない、ということは例外もあるということである。
その例外が高い魔力を持つ者の体液を摂取すること、つまり俺とアリスのようなケースや、ミレイユの【吸魔血成】だった。
俺がやろうとしているのはこれを逆手に取った一般人の魔導士化、すなわち魔導士の量産である。
この世界の「常識」に照らし合わせればありえない暴挙だろうが、これからさらにウォルの人口を増やしていく中で、その作業効率のアップと負担の軽減、そして人数の増加によって今後起こるであろう組織内の規律の乱れを抑える方法としては最も適確で、……何より手っ取り早い。
また、子供たちの将来を考えたときのメリットが大きいことも、否定の必要がない事実だった。
ウォルのこと、子供たちのこと。
それぞれのこれからのことを考えた上で、俺はこの10人の現実を、今からさらに捻じ曲げる。
だからこそ。
「勘違いはするなよ」
「……」
「……ふふふ」
「「……?」」
俺が氷のナイフを黒い手袋した右手で握り込みながらそう言うと、アリスは黙って頷き、ミレイユは静かに笑った。
不思議そうな顔をした子供たちの前にかざすその透明な刃は鋭く、そして薄い。
見た目には美しいが、刺せば当然に痛いだろう。
「俺はお前たちに、魔物を狩ったり戦争で活躍してほしいわけじゃない。
あくまでも村の人間を守るための、ウォルでの生活に役立てるための力として、この10人を魔導士にするつもりだ」
透明な刀身越しに響く俺の声は、部屋の空気を少しだけ下げているようだった。
だが、それでいい。
彼らの鼓膜を叩く言葉がより硬く、より冷たくなるように、俺は淡々と声を続ける。
これは狂喜に浮かされた熱い心ではなく、思考を重ねた末の冷えきった頭で聞くべき言葉だからだ。
「手に入れたいものを手に入れる、守りたいものを守る、倒したいものを倒す、救いたいものを救う。
それは片方で、何かを奪って誰かを殺すということだ。
使い方次第でそうできる力をお前たちに与える意味と理由を、しっかりと考えてくれ」
そして、強さを得た者はその強さを使う意味を理解し、その結果を背負う覚悟が必要だとも、俺は思っている。
なぜなら。
例えば俺が、魔物や盗賊や、アーネルやチョーカにそうし、そうされているように。
誰かを守るということは、誰かを守らないということでもあるのだから。
「よく考えて、そして覚悟しろ。
自分が与えられた力の大きさと、そしてそれを使う恐ろしさを」
「「……」」
20の瞳に映る10色の輝きと、黒と緑と赤。
俺たち3人の視線を受ける、子供たちの瞳に真剣な色が宿ったのをみとめてから。
鉢の上にかざした自分の左の掌を、俺は氷のナイフで貫いた。
短い悲鳴が何人かから上がったが、当の俺は痛みではなく熱さを感じていた。
手の甲から突き出た刃先からはポタポタと赤い血が落ち始めていたが、俺の目にはそれがスローモーションに映る。
やがて熱さと異物感は強烈な痺れに変わり、そして激つ……痛え!!!!
飲ませる子供たちの手前、叫んだりするつもりはない……が、あり得ないほど痛い!!
俺は無表情を崩さず、しかし口の中では歯を食いしばりながら、ナイフの刃を部分的に消失させ傷口に隙間を作った。
そこから細い糸となった血液が吹き出し、鉢の底にある程度が溜まった段階で、すぐに左手を【精霊化】させ物理的に止血する。
続いて刺さったままのナイフを消失させ、無傷の状態の自分の手を強くイメージしながら【精霊化】を解き、ゆっくりと指を握りこんだ。
……傷はないし指も動く、とりあえず大丈夫そうだな。
「ソーマ?」
「いい」
冷や汗を拭って深く息を吐いた俺は、隣で【治癒】の陣形布を用意していたアリスに、必要ない、と首を振る。
そう言えば、このレベルの怪我を負ったのは本当に久しぶりかもしれない。
【氷鎧凍装】が完成してからは、せいぜいアリスに爪を立てられるくらいだからな。
「甘すぎますね……」
一方で、鉢に白いボトルの中身、ネクタの果実酒を注ぎ入れたミレイユはそれを白い人差し指ですくい、その指を舐めて顔をしかめる。
アルコールによる鉄臭さの相殺と、多少飲みやすくするために強烈な甘みを加えようと果実酒で割らせたのだが、どうやらストレート愛好家のミレイユの舌には適わなかったようだ。
ただ、残念ながらその点についてこのソムリエールと語り合える人間は、この大陸には存在しないと思う。
が、子供たちからの信頼が厚く日常的に俺の血を吸っているミレイユの存在が、他人の血を飲む、ということへの心理的なハードルを随分下げてくれているのもまた事実だった。
「弱いお酒ですし、旦那様の至高の一雫なのですから心配はないと思いますが、もし気分が悪くなったらすぐにわたくしの部屋に来てください。
お薬を渡しますわー」
「それから、目に見えるものに変化が出たらすぐに私たち3人の誰かに言うこと。
精霊と契約できると、光の点が見えるようになる。
それが明日か、明後日か、来週になるかはわからないけれど、個人差があるから心配はしなくていい」
全員が躊躇なくその赤い液体を飲み干してから、ミレイユとアリスから注釈が入った。
子供たちがどの属性の精霊と契約できるかはなってみるまでわからないし、場合によっては追加で血を飲ませる必要もあるだろう。
真剣な、しかしどこか興奮した表情で頷いた10人の瞳が、最後に俺に向けられる。
しつこいようだが、繰り返しておこうか。
「いいな、これは守るための力だ。
村の人間のために、ウォルのためにその力が活かされると、……俺は信じている。
これからも色々大変になるし、お前たちの負担も大きくなるが頑張ってくれ」
「「はい!」」
解散、と告げると、サーヴェラたちは一礼して部屋から出て行った。
ミレイユも優雅に一礼し、鉢とタンブラーを重ねて退室する。
洗い物の手伝いのために出て行ったアリスを見送り、俺は1人でイスとテーブルを元の位置に移動させ始めた。
木製の家具の堅い感覚が、触覚のある左手だけに伝わってくる。
俺の掌には、もう何の傷も残っていない。
あの痛みも、もう幻のようだった。
翌日の朝食の際に確認したが、サーヴェラたちの体に異常や変化は出ていなかった。
まぁ、アリスの言った通り個人差があるであろうものだし、俺に焦りはない。
留守番をミレイユに任せ、ウルスラにナハ宛の返書、ただ1行だけ「検討します」と書いたそれを渡した後、俺とアリスは王都に転移した。
冒険者ギルドでアリスが実家宛の手紙の郵送手続きを済ませた後、その足で俺たちは町の北端にある、国営の奴隷商館に向かう。
もちろん、新たにウォルの住民とする人員を獲得、つまり購入するためだ。
予想通り、悪名高い魔王とその恋人が現れたことで商館の受付はやはり大混乱に陥ったが、数分を費やして受付係を落ち着かせ、既定の入館料を支払った俺たちはそのまま貴賓室に通される。
額に汗を浮かべた館長、ベイガンという初老の男から直々に、売買に関する説明と奴隷の所持に関連する法律などのレクチャーを受けた後、俺はその後の交渉を全てアリスに一任した。
大オリハルコン貨を50枚ほど持ってきているし、後天的な身体欠損や内臓疾患程度なら【領内完全回復】で治すことができる。
アリスのことだからこの商館にいる全ての子供を引き取ろうとするかもしれないが、別にそれならそれで構わないだろう。
ベイガンから差し出された分厚いリストを、上の段から緑色の瞳で追いかけだしたパートナーの様子をうかがいつつ、俺は湯気の立つカティをすすっていた。
ちなみにこの世界の奴隷の身元であるが、金に困って売られた、あるいは自分を売った者や引き取り手のなかった孤児と、赤字ではない犯罪者に大別される。
アーネル国内法においては、長期に渡る税金や借金の滞納、戦災孤児などの経済能力のない人間は、身元保証人がいなければその身柄の所有権が国に移されてしまう。
孤児などの未成年の場合は一定の猶予期間が設けられるが、その期間内で子供が欲しい夫婦などの引き取り手が出なければ、やはり同じ結末だ。
同様に、犯罪の刑罰として奴隷に落とされる者もいた。
赤字になれば即斬首がこの世界の基本方針ではあるが、そもそも赤字なる重犯罪者など犯罪者全体の2割程度だ。
残りについては罰金、肉体罰、奴隷化のいずれかに処される。
貧しい者を国家全体で支えようという意思も、犯罪者を税金で幽閉して更生を援助するといった発想も、基本的にこの世界にはない。
食い扶持を稼げなければ死ぬし、罪を犯せばその人権は剥奪された。
奴隷になった後その人間は物品として扱われ、女性のほとんどと一部の少年は性奴、若い男なら騎士隊付の戦奴、それ以外は重労働かつ危険性も高い船奴にされることが多い。
同じ性奴にしてもギルドがある娼館に買われるのと、冒険者などに私的に買われるのでは大きく扱いに差が出たりもするのだが……、まぁその辺りの詳細を掘り下げる意味はないだろう。
尚、負債や刑罰に応じて奴隷には期限が定められており、一応はその期間を過ぎるか自分が買われた値段を主人に返済できれば市民階級に戻ることができるようになっている。
……ただ、それまでに死ぬか主人に反逆して死罪になる、あるいはそこから逃げる間に罪を重ねて赤字になるケースがほとんどなので、実際は一方通行と言って差し支えなかったが。
またベイガンの話によると、奴隷の売買を国営の商館だけで行い、賃金などそれに関する法律が整備されたのはこの30年くらいのことなのだそうだ。
それまでは私的な売買が横行しており、奴隷の境遇は現在よりももっと悲惨だった、とのこと。
しかし本当にそうなのだとすれば、もはや俺にはその光景を想像することができない。
だいたい……。
「ソーマ」
皮張りのやわらかいソファーに体を沈めてもの思いにふけっていたところで、右に座っていたアリスから声をかけられた。
大樹の葉のあたたかい色とエメラルドの冷たい輝き、両方の緑色を宿したアリスの瞳が、俺の方を向いている。
「とりあえず86人、金貨で19,756枚になる」
「そう」
……1人あたり金貨約240枚、240万円か。
この世界で家族が2年半食べていける金額だが、人間の値段とはそんなものなのだろうか。
「いいの?」
「本人たちが、ウォルに来ることを望むならな」
2億円近い出費を2文字で承諾し、無言でポーチの中の黒く冷たい金属片を数え始めた俺に、アリスも短く確認の言葉を返してきた。
俺が頷くと、わかった、と印を付けたリストをベイガンに渡す。
別に、構わない。
アンゼリカやサーヴェラたちと同じだ。
どん底を味わって何かを諦め、それでも這い上がろうとする人間は、強い。
少なくとも強くなろうとしてくれるならば、とりあえずはそれでいい。
最後に救われるかどうかは、本人たち次第だ。
「で、では、全員をこちらにご用意いたします」
パートナーと必要最低限のやり取りだけをした俺が、磨き抜かれた石のテーブルに大オリハルコン貨40枚を積んだのを見て、ベイガンは慌てて立ち上がった。
「これは商取引だ。
お前たちが渇かず、飢えず、凍えず、そして無意味に傷つけないことを、当代の水の大精霊の名の下に約束する。
代わりに、俺たちの村で裏切らず、怠けず、そして人間として強くなり続けることを約束できる者は……、その場で1歩、前に進め」
その30分後。
俺とアリスと、新たなる住民の86名は、シズイとサラスナの待つリーカンへと転移した。




