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婚約者が嘘告をするそうです。私に。  作者: もも


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5/9

5 屋上で

 マリエッタ嬢と一緒に屋上に来た。階段を登りきって簡単に鍵を閉めた。鍵の使用権は教務課で貰っておいた。聞かれたくない話があるからだが、まずはランチが先だ。


ベンチにハンカチを敷いてマリエッタ嬢に座って貰った。

「まずは食べましょうか、時間が無くなると困りますから」


「そうですわね。あの名前の呼び方なんですけどマリエッタ嬢は婚約者っぽくないのでマリエッタでお願いします。それと敬語も止めていただけると良いと思いますの。婚約者としての信憑性が増すと思いますので」



ヴィクターが変わらないままであれば婚約解消も考えていたマリエッタは、出来るだけ有利な立場に持っていくために提案をした。


真っ赤になったヴィクターが頷きながら言った。

「信憑性ですか、本当に婚約者ですからね、問題はありません。じゃあ僕も様は要らないかな、ヴィクターと呼んで欲しいです。欲しい。マ、マリエッタ」


ゆっくりとマリエッタが声に出した。

「ヴィクター」

赤い耳や首がまだ残っているヴィクターが呟いた。

「呼び捨てって嬉しいけど照れるものです、 だね」


自分で言っておきながら外と恥ずかしくて、どうにか気持ちを持ち直したマリエッタも頷いた。


「そうね。頂きましょうか。美味しそうなサンドイッチね。卵とハムとキュウリにローストビーフにチキンが小さく切ってあって綺麗。ピックにさしてあるから手も汚れないわ」


「こっちにはデザートの果物があるよ」


「美味しそうね」


「え〜と、今朝みたいな嫌がらせはよくあったんだね。名前を教えてくれるかな。家から抗議させて貰うよ。今まで気が付かなくてごめんね。僕なんかを狙う女がいるとか考えもしなかった。婚約者がいるのに可笑しな話だ」


「婚約者が機能していなかったでしょう?」


「ごめん、本当に馬鹿でごめんなさい。政略結婚の本当の意味が漸く理解出来たというか、身の程知らずだったというか。どれだけマリエッタの家がしてくれたか分かっていたつもりだったんだけど、身に染みていなかったんだよね。分かった途端今度は恥ずかしくて貴女の顔が見れなかった。此処で土下座しろと言われたらしたいくらいだよ。して良い?」


「意地悪な言い方をしたわ。ごめんなさい。身に染みたのならもう良いわ。でも嘘告はどうするの?」


それを聞いて真っ青な顔色になったヴィクターが声を絞り出した。


「どうしてそれを・・・?」


「此処は私の避難場所だったの。あの日いつもの様に来てみたら貴方とギルバート様が話しているのが途切れ途切れに聞こえてしまったの。全部聞こえた訳では無いわ。引き返したから。でも

そっちがそのつもりならやり返すつもりだった。ヴィクターが薔薇の花束を持ってお茶会に来た時、言うの?と思ったのだけど違っていて。その内いつ嘘告をしてくるのか楽しみというか待っていたと言うのが正解かしら」


「ごめん、本当に情けない。このまま婚約者でいても良いのだろうか?ギルバートが言ってくれたんだ。政略結婚でもちゃんと告白しないとマリエッタは皆が狙ってる高嶺の花だって。あれは彼なりの発破のかけ方なんだ。いつもからかってくるんだ。一生貴女の下僕で良い、側にいさせて。裏切らないし泣かせないと誓うよ。嘘告の話は無しでお願いします」


「ヴィクターをこてんぱんにやっつけようと思っていたのに残念だわ。側にいればまたチャンスがあるかしら」


「最初から僕に勝ち目なんてないよ。貴女に釣り合う様な良い男になるから見捨てないで」


今までが冷えた関係だったのに下から顔を覗いてきた。顔の良さを分かってやっているのかしら。


あざと可愛いなんて男の癖にズルい。

今までとのギャップが凄い。

こんなテクニックも持っていたのかとこの男の可愛いさにしてやられたのを思い知った。


今は気持ちがなくてもその内本気の告白とやらをして貰おうじゃない、マリエッタは心の中で呟いた。


何かあれば祖父と父と兄がいる。三人はイケメン揃いで腹黒いがマリエッタには特別に甘いのだ。マリエッタの手綱が緩む事は無いだろうが裏切られた時の保険は大事だ。



 それからのヴィクターは執務の勉強も学院の勉強も頑張り、合間に剣の訓練をした。プレゼントや会話もしてマリエッタに見捨てられないように必死だった。


マリエッタも何かあった時の為に小さな商会を始めた。女性用の化粧水を扱うことにしたのだ。クロス商会の力で育てた肌に優しい植物を技術部門に丸投げした。専門家に任せるに限るとは父の教えだった。


貴族用から始めた。やり方は小さな頃から見ていた父のまねをした。

品質の良いものを綺麗なガラス瓶に入れてSクラスの同級生に試供品として配った。母にもあげて喜ばれた。こちらは子爵夫人なのでお茶会の参加者はまだターゲットではないが、その内広めて貰うつもりだ。


同級生の六人は侍女に使わせて安全を確かめてから自分用と家族用にと注文をしてくれた。侍女の肌が綺麗になった事実は周囲に衝撃をもたらした。大いに売れた頃に乳液を作り又同級生に試供品として配った。こうして販路を拡大していった。



卒業する頃にはマリ商会と名付けた化粧品の一大商会になっており、マリエッタは自分の財産を作ることに成功した。


読んでいただきありがとうございます!。マリエッタからのぎゃふんが足りなかったでしょうか?ほのぼの系なのでお許しください。

誤字ありがとうございます!

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