第96話 祝勝会後半
まず呼ばれたのは護衛隊長ボルガン。護衛兵を代表しての表彰であるので、他5人もその後ろに控えている。
「護衛兵の皆はよく頑張ってくれた。君達が勇者一行との戦いにおけるキーパーソンであった事に疑いはない。ええと、そうだな。勲章の贈呈は聖女にやってもらうか。」
その瞬間勇者は噴き出し、聖女の笑顔がひきつった。この遣り取りを直接理解できるのはアドラブルを含む3人だけだが、護衛隊員を含む勇者対策会議室の面々も彼らとの物語は理解しており、聖女のその引きつった笑顔に笑っている。
アドラブルは各員と固く握手を交わし、肩を叩いて労った。そして聖女が勲章を授与していく。最後コナタムが険悪な表情で聖女に何かささやいていた後、なぜかコナタムが笑顔になって意気投合していたのが謎であったが。
「次、タリアト!」
犬人族のメイドが進み出る。その姿を見た勇者が『あっ!』と声を上げてタリアトを指さす。みなの注目が勇者に向かう。
「てっ、てめ…うぬ…うぐぐぐぐ。」
勇者はタリアトを見るや否やここであったが百年目とばかりに詰め寄る気配を見せた。
しかし当の本人であるタリアトを含め、この因縁を知る者はほぼいない。アドラブルですら知っていると言えば知っているが、タリアトが勇者を絶妙に煽ったところまでは知らない。唯一聖女マミアだけが知っているが、同時にそれを相手に言っても詮無きことで、勇者の気持ちがよく分かってしまい苦笑いを浮かべるしかない。
今度は勇者がさっきの聖女のような立場になったあたり、実は似た者同士のカップルなのかもしれない。
タリアトは詰め寄る気配を見せた『勇者コワーイ』とばかりにアドラブルにぴとっとくっついた。事情を知るアドラブルは苦笑しながら、勇者にマイクを渡す。
「勇者、悪いがこのタリアトの功績を皆に教えてくれぬか?」
「ぐぬぬ…仕方がない。…ふぅ。
アドラブル卿と私の間で20回以上戦い私が全敗した事は諸卿もご存じの事だと思う。その中で一回だけ私がアドラブル卿個人に勝ったと言える回があった。」
と言って私の事を見てきたので大きく頷いてやる。その瞬間、諸将よりどよめきが起きる。勇者の面目が大いに施された。
「私の前には力尽きたアドラブル卿が倒れこんでいた。私は勝利を確信し聖剣を大上段に構えた。後は振り下ろすだけだった。それで私は勝利し魔王軍は敗北するはずだったのだが、その刹那、目の前のメイドにアドラブル卿が取り落とした刀を背後から突き立てられたのだ。」
―――うおおおおおおおっ!
沸き起こる大歓声。そして興奮のあまり皆がどんどんと地面を踏み鳴らし、大騒ぎとなる。そんな中、タリアトはちゃっかり私の手を誘導してタリアトの頭を撫でさせている。まぁいいけど。
勇者は更に何かを皆に告げたがっていたが、皆が大興奮過ぎて誰も話を聞いてくれないようだ。聖女が首を振ってあきらめろと勇者にジェスチャーすると、がっくりとうなだれた勇者が私にマイクを返してきた。
興奮収まらぬ中、次に呼ばれたのはバルダッシュ。
バルダッシュの精鋭部隊の鍛錬と部隊運用は終盤の要だった。
「見事だった。バルダッシュの精鋭部隊は魔王軍の要だった。だが、精鋭部隊はこれで終わりではない。これからも頼むぞ?」
うおおおおっと歓声が上がる。バルダッシュは叩き上げだけあって人気があるな。
そしてバルダッシュに勲章を手渡した。あれ?リザードマンの目にも涙。まぁ、触れないでやるか。バルダッシュは私とがっちりと握手をして列に下がった。
エルデネト…は諜報部隊の長ゆえに、流石に皆の前で表彰する訳にはいかないのでパス。
「ハキム、よくやってくれた。」
そして腹心のハキム。彼にはこの一言だけでいいだろう。腹心中の腹心でもあり、副司令官をも勤め上げた。最終周回の帝国領侵攻では要塞エルグレアで魔王軍の後方拠点を守った。帝国領最終防衛線で魔王軍が敗北した時、戦場に駆け付けそれ以上の兵の損耗を防いだのは隠れた大きな功績だろう。
ちなみにグダンネッラは、宴会に興味なしと参加すらしていない。勇者の召喚魔法陣のデータという新しいおもちゃが楽しいんだろう。今度、何か贈っておこう。
「これで表彰は全て終わったな。ここで発表がある。」
パンパンと手を叩き改めて注目を集める。
「ここにいる勇者と聖女だが、捕虜という名目でここにいるが、実情は我が国への亡命だ。帝国に戻るのが非常に危うい状態となっている。そこで我が国は勇者と聖女を迎え入れる事にした。先日までは敵ではあったが、皆仲良くやってほしい。表彰式でもわかるように気持ちの良い奴らだ。なお、後見人は私がなるので、何かあったら私に言って欲しい。」
ぱちぱちぱちと拍手が起こる。
「さて表彰は終わったが、酒も食事もまだまだあるので、皆はまだ楽しんでいってほしい。」
私はそろそろ自室に戻って一人静かに盃を傾けるのもいいかもしれないと思っていた。そのうち勇者と昔話に花を咲かせながら飲むのも良いかもしれないが、今日は一人ゆっくりとが良いかな。
なんて思っていたが、なんか部下達が目くばせをし合っている。ん?
「閣下、一人表彰され足りていない者がおります。」
とハキム。誰だ?そんな者いたか?
「閣下、最大の功労者たる閣下が表彰されておりませぬ!よし、お前らいくぞー!」
と皆がわらわらと私の周りに集まってくるとおもむろに私の身体を持ち上げ胴上げを始めた。そして
「アドラブル閣下、万歳!魔王国、万歳!」
の掛け声とともに私の身体が何度も宙に浮く。大精霊ジンベも嬉しそうに横でぴょんぴょんと飛び跳ねている。その胴上げは何度も何度も皆が飽きるまで続いた。
「お前ら胴上げなんて普通数回だろうが、何回やれば気が済むんだ!」
アドラブルが大勢に何度も胴上げされ、そのそばを大精霊ジンベが飛び跳ねるその光景は魔導写真機に撮られ、後年発行されるアドラブル記の表紙を飾る事になる。
ということでアドラブルのTrue ENDですね。
今思えば、これがエピローグでも良かったかもなぁ。第93話は停戦締結とかにして。
でもいったんあの形で終わってからアドラブルのENDが見たかったって声をもらって、やっとこの形を考えれたってのがあるから最初から書けたかは微妙かなぁ。
という事で今後もこんな形で後日談とかを書いていこうと思います。
新作のラブコメもよろしくね♪




