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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第6部 終章

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第92話 再び…

最終周回 聖女マミア


涙で前が見えない。

誰か、お願い…誰か、勇者を助けて…。

涙でぼやけて…何も…でも目の前にうっすら光るものが…


…何かいる?


ごしごしと煤けた袖で涙を拭う。するとそこには…


「くぴ?」


と小首を傾げる…とっても小さなクジラ?サメ?がふよふよと漂っている。いや、違う。こんな地上にクジラもサメもいない。

という事は…


「精霊!!!」


精霊なら手に入れられれば魔法力が手に入る!

がっ、と空を漂うサメだかクジラだかの精霊を掴むと言った。


「ほら、早く。私に仕えなさい。そして早く私に魔法力を寄越しなさい!早く!早く!急いでいるのよ!早くしないと食べちゃうわよ!!!」


と私は精霊を掴んだまま大きく口を開けて飲み込もうとした。するとその精霊はふっと私の手の中から消えると、傍らにいたアドラブルの胸に飛び込んで泣いている。


「うえええーん!うえええーん!くぴー!くぴー!」


「おー、よしよし。あの女性も悪気があったわけじゃないからな。」


とアドラブルが精霊をなだめていた。それを見てあの精霊は彼のだとわかった。


ううん、悪気は…あったよ。勇者を助けるためなら、私は何でもやるつもりだった。でもこんな荒野に精霊がいる訳がなく、精霊を連れているのは珍しいとはいえ、誰かの所有物に決まっているわよね。


「ごめんなさい。こんな荒野で野良の精霊とかそんな都合の良い事があるわけないのに、我を忘れてしまったわ。貴方にもその精霊にも…本当にごめんなさい。」


私は潔く頭を下げた。

大泣きする精霊を見て私は少し冷静になった。しかし…これで万策尽きてしまったわね。勇者、ごめんなさい。私の力は及ばなかったわ。


「くぴー!くぴー!」


「そうか、そうか、怖かったなー。きれいなおねーさんが困ってそうだったから、様子を見に行っただけだったのかー。そうか、そうか。もうお姉さんも怖い事しないらしいぞー。誰もジンベをを食べたりしないし、俺が守ってやるからなー。」


本当に申し訳なくていたたまれなくなる。私は勇者を助けるためとはいえ、なんという事をしてしまったんだろう。でも、本心ではまだまだ諦めたくない。でもこうまでして助かる事を勇者《この人》は望まない気がする。


「んー?でも、ジンベは、お姉さんに何か出来たのか?んー、そうかそうか。俺がついててやるから、やってあげてくれるか?」


胸にその精霊を抱いたまま、アドラブルさんがこちらに来た。その精霊さんはちょっと怯えながらこちらを見ると、その精霊の周囲の光が瞬いたと思うと、そこから光の帯が私に向かって延びてきた…その光が私に触れると私の体中に広がっていく。


「これは…?何か温かい…気持ちが安らぐ気がする。ありがとうね。精霊さん、ジンベ君って言うのかな?先程はあんなに怖い思いをさせたのにこんな事までしてくれるなんて、本当にごめんなさいね。」


「ジンベ!」


かわいいわね。私はあんな事してしまったのに癒してくれるなんて、本当に悪い事をしてしまったわ。


「ジンベ!ジンベ!」


その後もしきりにジンベジンベと連呼している。ん?何かしら?まだ何か伝えたい事があるのかし…

これは何?身体や精神の負荷が解消されたかと思ったら今度は魔法力が回復していく…!?

精霊さんを見ると、ジンベジンベ!と連呼している。早くいけって事かしら?

わかったわ、お礼は後で言うわ。



両手にそれぞれ杭を持ち神聖力を込める。いける!

はぁぁぁぁっ!


―――パリンッ!パリンッ!


立て続けに二本の杭が割れる。しかもこれは…私の周りに漂う光から更なる魔法力が流れ込んでくる。これなら…っ!


―――パリンッ!パリンッ!

―――パリンッ!パリンッ!


はぁはぁ…


―――パリンッ!


私の周りの光は消えてしまったけど、まだいけるわ。これで、最後っ!


―――パリンッ!


「やったっ!」


喜ぶ私、とうとうこの悪趣味な色の杭を全部祓う事が出来たわ。


「まだだ!」


アドラブルさんから鋭い声が聞こえる。

はっとして私は勇者を見る。血が流れ過ぎたのか、もはや身体に空いた二十四の杭があった穴から血はほとんど流れていなかった。勇者はもう意識どころか呼吸も無かった。


「ダメ、貴方は私が絶対に死なせない!」


私は私の命を懸けて、勇者に聖女の力を注ぎ込んだ。

辺り一帯は聖女の力の白い光に包まれた。

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