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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第6部 終章

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第82話 それぞれの出陣

最終周回 冬 勇者


勇者にとっては魔法陣による1年間という周回縛りが解けた今、必ずしも例年のように年末に最終決戦を魔王軍に対して挑まなくても良いのだが、種々の状況を加味すると結局は年末に最終決戦を挑むのが都合が良さそうだった。


まずは人族側から見た魔王軍全体についてだが、アドラブル率いる魔王都にいる魔王軍だけではなく、世界各地でアドラブル以外の魔王軍が暴れている。魔王都のアドラブル率いる魔王軍に比べれば数は少ないとはいえ、その矛先は帝国より脆弱な諸国に向けられており劣勢は否めない。アドラブルを打ち破り北部の安全を確保してから、帝国軍の主力を差し向けない限りは各地の魔王軍が優位である事は揺らがないだろう。そしてそれは今この瞬間も真綿で首を締めるかのようにじわじわと人類の生存圏を狭めてきていた。


一方で人族の主力たる帝国軍だが、二十五周回と連綿と続いてきた勇者の作戦の要の魔法陣を破壊されてはしまったものの、5~6月の帝国内に侵略してきた魔王軍との戦いで数多くのゴブリン兵を討ち取った。が、ゴブリン兵は時を許せば、短期間で際限なく増える魔物だ。折角多数のゴブリン兵を討ち取り大幅にその数を減らしたのだから、帝国を始めとする人類側にとっては魔王軍がその数を減らしているうちに決戦を挑みたい。しかし現状の帝国軍を見ると、こちらも内乱で元々の戦力が乏しかったために今すぐ魔王軍に決戦を挑むだけの力はない。しかし帝国内で侵略者を追い払ったこれらの一連の戦いは、当然帝国内で行われた事もあり民衆への絶好のアピールの場になったのか、帝国において好戦ムードが非常に高まり志願兵の集まりがすこぶる良かった。ただ志願兵はそのままでは軍隊としては微妙なので多少なりとも鍛える必要があるが、多少鍛えた程度で意思疎通が取れる分ゴブリン兵よりかなり使える兵となる。そのためここ数か月間はゴブリンの驚異的な増加数による魔王軍の戦力増よりも、志願兵の一次的な急増とその強化で帝国の戦力増の方が大きそうであり、半年くらいは帝国の戦力増の方が大きそうな見込みだ。それと同時に勇者一行としても聖剣や聖杖、聖騎士の盾等の勇者一行の個人戦闘力を上げるユニーク装備も確保しておく時間も欲しい。と諸々の事情を考慮すると、例年通り年末に最終決戦を迎えるのがよさそうだった。


なお最終決戦に先だって要塞エルグレアは帝国軍により再奪取されている。要塞エルグレア内部から見る帝国領側の城壁は、魔王国側の城壁と比べて高さも厚みも乏しかったせいか、魔王軍としても何が何でも死守するという気が最初から無かったようだ。それに加えて帝国軍にだけ伝わる要塞内から帝国領への秘密の地下通路があったためにこれを利用して容易く陥落させる事に成功した。もっとも魔王軍もそれは想定内だったのか、要塞内に帝国兵が急遽出現した事を悟ると、それ以降は無理に要塞を死守しようとせず、整然と魔王国側へ撤退していった。帝国軍としても要塞エルグレアの奪還で十分に満足だったので、無理な追撃は行わなかった。

ここに要塞エルグレアは帝国の手に戻り、同時に魔王国への遠征拠点になるのだった。


そして月日は経過し12月になった。ここにおいて正真正銘最後の最終決戦が行われる。今までの周回では10万が限界だったが、人類はここに今までよりも圧倒的に多い総勢14万もの大軍を揃える事が出来た。

冬の朝日に14万もの兵の槍の穂先がキラリと反射する。


「いよいよだな、タスク。」


「ああ、勇者。今までの借りを返してやろうぜ。」


「よし…全軍、出陣せよ!」


目指す決戦地はもちろんアドラブル率いる魔王軍と帝国軍他を率いる勇者とが何度もぶつかってきたエルデネサントの野である。





最終周回 冬 アドラブル


一方で魔王軍がこの最終決戦に用意できた兵は総勢18万だった。

魔王軍は毎周回20万もの兵で臨んでいたが、6月の敗戦の傷は大きく20万まで戻ることはなかった。常に激戦地にいた精鋭部隊も例外ではなくその数を大きく減らし、魔王国を出発する時は五千以上いたが、要塞に辿りついた兵は二千に満たなかった。


本隊が本国に撤退した後もしばらくの間は、恐らく戦場で散り散りに逃げた兵がぱらぱらと戻ってきていた。ただ、それらを含めても二万には満たなかった。五万以上の兵が帝国の地に散ったことになる。


だが、魔王軍は…アドラブルは後悔していなかった。

魔法陣を破壊した事で本当にこの終わらない戦いを終わらせる事ができるのかという点は、勇者側と違って確証はなかったがアドラブルはあの戦場に勇者の執念を確かに感じた。

そしてそれが答えなのだろうと悟った。


そうと決まれば後は勝つだけだ。

今までも敗北は許されなかったが、今回は勝つことが本当に勝利に繋がるのだ。


さしあたっては魔王軍本隊の再編成からだ。

魔王軍にとって幸いだったのは、精鋭部隊は大きくその数を減らしたが激戦を生き残った魔王軍兵はその後の訓練によってほぼ進化種となる事ができた。それはそのままそっくり精鋭部隊化する事が出来たという事だ。そして生き残った精鋭部隊はもう一段階進化して更に強い個体となる事が出来た。尤も魔王軍においては兵の強さというよりも意思疎通がうまくいき指示通りにちゃんと動ける事の方が大事なのだが。


精鋭部隊の生き残りを中核として、精鋭部隊は再編制されて今までの周回では最大で一万だったのか、今回はその数は二万となった。魔王軍総数としては二十万からはだいぶ減ってしまうが、これならば以前と遜色なく戦えるのではないだろうか。

そしてそれはバルダッシュがどれだけ精鋭部隊を鍛えられるかにかかっており、眼下では今日も烈しい訓練が繰り広げられていた。


「あれは、私も受けたくないな…。」


ともかく魔王軍も準備は整った。勇者率いる帝国軍も先日、エルデネサントの野を目指し、要塞エルグレアを出発したとの報告を受けている。


「長かったな…。」


アドラブルの脳裏に今まで積み重ねてきた25もの周回が走馬灯のようによぎる。

だが、それもこれで終わる。最後の最後で負ける訳にはいかない。今まで何のためにここまで勝ちを積み重ねてきたのか分からなくなるから。



翌朝、魔王軍全軍は魔王都城壁前に勢揃いした。まだ幼い魔王陛下にもこの光景を覚えておいてもらおうと思い、城壁上の正面の一番良いところで臨席していただいた。

他にも城壁上や城門の向こう側から数多くの魔王都の住民が心配そうにこれから出征する魔王軍を見守っている。


アドラブルは振り返り陛下に向かって敬礼すると、士官以下もそれにならい敬礼した。陛下はどう返してよいかは分からなかっただろうが、きょとんとした後にっこりと笑って手を振り返してくれた。


アドラブルは敬礼を解いて騎乗すると


「行くぞ」


と軽く声をかけた。


―――おおおおおおおおっ!


大きな雄叫びがあがった、魔王都中に聞こえるような。


こちらも目指す決戦地はもちろんエルデネサントの野である。


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次回よりとうとう最終決戦開始、

物語は第4コーナーをも通り過ぎていよいよ最終ストレートに入ります。

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