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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第6部 終章

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第79話 最終防衛ライン

最終周回 6月 帝国領北部街道 アドラブル


翌朝、早い時間から魔王軍は勇者軍に攻め掛ける事にした。無駄に時間を伸ばしても義勇軍が近付く暇を与えるだけだからだ。

逆にここで勇者軍に攻め掛けることなく滞陣したまま義勇軍が近付くのを待って、そちらを撃破するという案もあったが、義勇軍がある程度の距離を保ってそれ以上こちらに近付いてこない可能性もある事や、義勇軍を討つために後退した我が軍を追うように勇者軍が追いかけてくるというような義勇軍と勇者軍の両軍が近過ぎる事による挟み撃ちに遭う可能性も考慮され、その案は却下された。


「かかれ!ここを落とせば、本国に帰れるぞ!」


基本的にこの戦場は要塞エルグレアと帝都を結ぶ帝国を縦断する大街道上であるため、勇者軍の陣地が守るに易く攻めるに難しい要害に作られているという訳ではない。ただ、その中でもここは比較的傾斜があって勇者軍の陣地が比較的高い場所で少しだけ守り易い地形である。

そこに更に柵や楯としての木の板が互い違いに設けられていたり、穴を掘ってそこから攻めづらくしたりしており、攻め手を制限した作りになっていて少しでも守り易く攻め辛い工夫がなされているようだ。


数を頼りに勇者軍の陣に攻め掛ける魔王軍。勇者軍に技量の必要な弓兵は多くないのか、降ってくる矢はそれほど多くは無いが、ゴブリンは一部を除いて基本的に弓矢を扱えないので、開戦直後はゴブリン兵が一方的に射すくめられる事になる。

だが魔王軍は士気も高く射抜かれるゴブリンも数多く出たが、乱戦になってしまえば弓は使えないので、すぐに勇者軍の前線部隊にとりつき乱戦となる。邪魔な柵や板を引き倒し、穴を埋め、時折投石を混ぜつつ、魔王軍は数を頼みにどんどん勢いよく攻めていく。そのまま一気に押し切ってしまいたいところだが、連戦連敗であるはずの勇者軍も思ったより士気が低くなく、ここを守り抜くという気迫が伝わってくるようで、今までのように突破はそう簡単ではないようだ。

勇者軍も兵の総数こそ、この一連の十戦以上にも及ぶ魔王軍との連戦前と比べてそこまで減っていないが、その補充兵のほとんどは義勇兵であった。勇者陣の中でも激戦区への義勇兵の補充は最低限にしているが、逆を言えば義勇兵ばかりで構成された防衛部隊もあり、アドラブルの戦術眼でそのような防御の低い場所は見破っていたが、そのような部隊が配備された場所は、流石に攻めにくい二列目三列目といった場所に配置されており、そこを狙って攻撃を仕掛けるとは中々いかなかった。ただその近くを攻める事は、その近くの陣からの支援の薄さにつながるため、積極的に狙っていった。

しかし結果的には、魔王軍は惜しいところまで攻めたもののそのまま日没となり、初日は勇者軍がよく守ったと言えるだろう。初日だけでは攻め落とせないという展開は、魔王軍にとっても予想の範疇であったために無理攻めはせず、魔王軍は一旦攻め手を下げた。


アドラブルはこの一戦に臨むに際して、精鋭部隊は予備兵力として後方に留める事にしていた。まだ6月のこの時点では鍛錬期間も半分で年末の最終決戦時程の精鋭っぷりではないが、それでもゴブリンの進化種のみで構成されている精鋭部隊は、素のゴブリン兵と違い命令がスムーズにいきわたるため魔王軍の作戦行動にとって非常に重要な存在だった。そのため今まで一番キツイ場面を何度も任されてきており、虎の子の精鋭部隊も魔王国を出るときは五千以上を数えたが、今はもう三千近くまで減っていた。しかも働き詰めで疲労も溜まっていた。

魔王軍がこれまでと違い初日で敵前線を突破できなかったのは、その精鋭部隊を後方に控えさせているせいもで迫力を欠いた面もあったかもしれない。


二日目、この日も魔王軍は一般ゴブリン兵を中心に勇者軍を激しく攻め立てた。昨日の戦闘で破壊した勇者軍の柵や穴等の防衛機構は、勇者軍工兵の夜を徹した作業により半分くらいは復旧していた。勇者軍は夜の内に前線を少し押し返した形となったが、一方で初日の開戦時よりは魔王軍の前線が上がっている状態から始まっていると言えた。その分のアドバンテージが昨日よりあるため、今日こそは攻め落とすといった感じであった。そして二日目は、初日では届かなかった義勇軍中心の脆い防衛陣まで攻撃が届くようになり、そこから完全に崩せそうな場面になったものの、勇者軍が何とかなけなしの予備兵力を投入して踏ん張り、今日もあと少しというところまでいったものの結局勇者陣を攻め落とすまでには至らなかった。


三日目、更に魔王軍が前線をあげた状態で戦闘が始まる。今日こそは勇者陣を陥落させるとアドラブル以下、魔王軍は勇者軍の陣を攻め立てた。勇者軍もよく頑張って魔王軍と戦っているものの陣の陥落は時間の問題とも言えた。太陽が中空の一番高いところにある頃、戦況は明らかに魔王軍側に傾いていた。しかし、今日攻め落としきれるかと言われると恐らくいけそうな雰囲気だが、絶対かと言われれば微妙だった。そこでアドラブルは満を持して精鋭部隊の投入を決めた。ここ2日間は臨戦態勢にあったとはいえ、戦闘には参加しておらず束の間とはいえ休息がとれたはずだ。精鋭部隊を後方から前方に回してその統率のとれた意思のある攻撃が開始された。形勢はますます傾く、と思われた正にその時だった。

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