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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第6部 終章

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第77話 遅滞戦術

最終周回 帝国領ゴブラン近郊 勇者軍本陣 勇者


斥候より前方にあった魔王軍の陣がもぬけの殻との報告があり、その行方を探りながら軍議を開いていた時だった。


「報告します!

一昨日の晩、帝都近郊にて帝都発の義勇軍を中心とした一万五千と魔王軍が激突し、夜間であったためか、お味方は抗しえず壊滅したとの事です!」


「そりゃ…義勇軍が夜間に戦闘を仕掛ける訳ないんだから、魔王軍に夜襲食らって壊滅したってことだろ?そんな事を今更取り繕ってどうするんだよ…。」


と、苦々しい表情で話すタスク。

帝都には色々な派閥があり、勇者を疎ましく思っている派閥も多数あるのは確かだ。特に大貴族などは彼らの巨大な利権を奪うように見える勇者を少なくとも歓迎していない。そして帝都では大貴族の意見がとても強い。軍務大臣などの主な軍部は勇者の味方だが、帝国直属の軍は長引く反乱の影響で兵数をかなり減らしており、現状帝国最大の兵力は大貴族の私兵であるため、軍部も大貴族の意見を無視できないのだ。


恐らく帝都内で義勇軍を募るという形で貴族の兵力を損なわない形で兵力を作り、その上で大貴族の誰かが軍を率いてあわよくば魔王軍に一撃を食らわせて、帝都での発言力を上げようとでもして魔王軍に返り討ちにあったのだろう。

魔王軍はそんな簡単な敵ではないのに。


「義勇軍一万五千か。義勇兵は使いづらいとはいえ、無事であれば大きな力になったのにな。」


「まったくだ。しかも絵に描いたような見事な各個撃破…分かってはいたが、これは敵軍に優秀な指揮官がいるな。あいつが…アドラブルが確実に敵陣にいると見ていいだろうな。」


勇者フミヒロ、それでどうする?」


「どうするとは?」


「結果的に軍の位置的には魔王軍が帝都方面へ一歩退いたんだ。こちらが一歩前に進めて相手が退いた分を詰めておくのもありだろう。帝都もこのままでは終わらんだろうから、帝都からの次弾がある事を考えるとここで詰めておくのもありだと思うが。」


「確かにそれもありではあるが、こちらの策源地は大都市ゴブランだ。ゴブランとの距離が遠くなるのは良い要素ではないな。帝都の次弾がどれほど期待できるか不透明な以上は、ここの軍が少しでも動き易いようにする方がよいだろう。」


「そうか、そうだな。ここから一日進んだ場所よりここの方が地形的にも多少守り易いし、それがいいか。」


「うむ。だが、一部の工兵とあたりから集まってきた義勇兵のうち一千を連れてここから後方一日の距離にもう一つ簡単な陣を作らせておいてくれないか。」


「…ああ、わかった。それはこの陣を放棄することになるかもしれないという事か?」


「ああ、そうだ。魔王軍は強いし、兵はこちらの倍以上いる。防御陣を頼りに戦っても苦戦は免れないだろう。一旦敗走したらその勢いを止めるのは難しい。だが、後方に自陣がまだあればそこを頼りにまた戦えるかもしれない。

敵は補充が出来ない。それに対して、こちらは少しずつとはいえど周囲の都市から義勇兵が集まってきている。義勇兵はそのままでは戦えないが、それでもいないよりはだいぶマシだ。時間は我々の味方だ。少しでも時間を稼いで魔王軍を削りたい。」



三日後、魔王軍が勇者軍の陣地に攻撃を仕掛けてきた。

メルウェルが開戦直後に全魔法力を注ぎ込んだ魔法を敵陣に浴びせたり(メルウェルはそのまま後方の陣に撤退『こ、これは作戦通りなんだからねっ!』)、三日間必死で防御力を高めた陣を頼りに魔王軍に出血を強いたりと、敢闘はしたものの魔王軍の数に押され最終的には左翼を敵の精鋭部隊らしきものに崩壊寸前まで追い込まれた。それでも日没は目前であったのでギリギリまで粘る選択肢もあったが、勇者は指揮系統が生きているうちに全軍に撤退を指示した。まだギャンブルする時ではないと。

もっともゴブリンは夜目が効くから、相手も体力は尽きているだろうけど日没後少しくらいならそのまま押し切ってくる可能性を考慮したというのもあるが。


勇者軍は夜通し後退し、後方の陣まで退いた。

翌日は再編成した魔王軍が勇者軍が退いた距離を詰めるだけだった。

そして翌々日、魔王軍がまた新たな勇者軍の陣に攻めかけてきた。

今回は前回より簡易的な陣で地形もそこまで有利ではないので、先日の戦いよりは苦戦する事となった。激しくぶつかり双方とも被害を出した。朝から始まった戦いは昼過ぎには勇者は劣勢を認めざるをえない状況になっていた。勇者は被害を最小限に食い止めるために即座に撤退を決断し、予め築いておいた後方の陣に退いた。


その翌々日にはまたもや魔王軍にその陣を攻められた。そこでも敗退した勇者軍は更に後方の陣に退いた。


ここまででゴブランや北部諸都市からは合計で五千程の義勇兵が集まっている。最初から率いている兵やゴブランの守備隊一千と合わせて勇者軍は合計で三万五千になる。

とはいえ、陣を三回奪われる敗戦を経験しており、そこで合計一万程失っている。もちろんその全てが戦死ではなく負傷で離脱した兵も多い。ただし、義勇兵の方は戦死率が高いのは致し方ないところだろうか。聖女マミアもそれを嘆いていた。流石に死者は蘇らせられない。

魔王軍の戦死者がどれ程かはわからないが、それ相応に失っているようには見える。こちらは日ごとに義勇兵が集まってきており兵が増える要素があるのに対して、魔王軍は減る一方であるため悪くはない。悪くはないが負け続けているのも事実だ。負けるということは基本的にこちらの方が被害が大きいともいえる。そして負け続けているので士気はよくない。これが現代より勇者が持ち込んだ遅滞戦術という作戦(といってもわざと負けている訳ではないが)だとわかっているのは、勇者から説明を受けた首脳陣だけだ。しかし末端の兵はそうはいかない。負け続けているという事実だけが彼らに重くのしかかる。


それでも勇者軍が崩壊していないのは、ひとえに勇者とその一行のカリスマを含む指揮能力の高さと、帝国内で侵略者と戦っているという事実だろうか。でも危ういバランスの上に成り立っているのは事実で、勇者もそれは分かっていた。


その後もその都度後方に陣を築きながら戦闘と撤退を繰り返し、魔王軍に押されて要塞エルグレアまで行軍距離にして10日分という地点まで勇者軍は退いていた。

ここは北部の諸都市と繋がる直通路があり、ここが最終防衛拠点になるかもしれないと少し前から防衛準備をしていたため、今までよりは少し立派な防衛陣地が出来ていた。逆に言えばこれ以上退くと勇者軍の補給ができるような規模の都市との連絡路が乏しく、補給が今までよりは簡単ではなくなるともいえるし、一方で要塞エルグレアともかなり近くなるので、そこに駐留しているであろう魔王軍五万の動向も気になってくる。一応、もう一つ簡易防衛陣を後方に築いてはいるが、恐らくそれを使うことはないだろう。


そして翌朝、勇者軍の陣の前に魔王軍が現れた。


「みんな、聞いてくれ。ここが最終防衛ラインだ。これより後ろはもう無い。しかもここではただ勝つだけでは足りない。ここでどれだけ魔王軍を減らせるかに人類の未来がかかっている。

ここまでの数戦でただの一度でさえ勝てていないのは重々承知だ。

ただ我が軍に好い材料が無い訳ではない。今日もまた各地から義勇兵が集まってくれた。一方で魔王軍は連戦続きでその数は減る一方だ。

我らも連戦続きであるが、魔王軍は帝都からの追撃部隊とも戦っており我らよりその戦闘数は多くその分疲労も溜まっている。今までの敗北と撤退は今日この日のための布石だったのだ。諸君らの一層の奮起を期待する。」


―――おおーっ!


勇者が全軍に対して演説を行ったため、低かった士気も多少は上がったようだ。これでダメなら仕方が無い。

勇者は肚をくくった。

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