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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第5部 終わりの始まり

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第74話 勇者と魔法陣

第25周回 5月下旬 大都市ゴブラン 勇者


込み入った話をしたかったので、店主に頼んで個室に移動する。腹が減っていなかったわけではないが、あまり食欲も無かったのでオーダーはしなかった。

一方でマミアはなみなみと注がれたエールとボウル一杯の枝豆と共に、メルウェルは骨付き肉を抱えたまま移動していたが。

みんなが席に着いて個室のドアが閉じられると俺は開口一番、


「すまん、まずは遅れた事を詫びる。それから、みんなの知恵を貸して欲しい。」


と、みんなに頭を下げた。すると…

きゃははははと下げた俺の頭を聖女マミアがぺしぺしと叩いている。


「スマン、マジメな話なんだ。」


俺は頭をぺしぺしと叩かれながら、そのままマミアの両目をじっと見つめてそう言った。するとマミアは叩いていた手を止めて溜め息を一つつくと、早口に神聖魔法を一つ唱えた。するとすんっとマミアの雰囲気が変わった。アルコールを毒素と見立ててそれを浄化する魔法でも使ったのかな。


「あーあ、つまらない酔いの醒まし方をしちゃったわ。」


「いや、今日は大事な話があるって伝えたと思ったんだけど。」


「それとこれとは話が別よ。」


えっ、そんなんある!?と思ったが、100倍になって返ってきそうだったので突っ込まない事にした。早く本題に入りたいからな。


「さて俺からの話なんだが、これはまだ他言無用に願いたいが…勇者の能力の一つ…いや、最大の恩恵とも言える何度死んでも一年前に戻ってやり直せるという能力がどうやら失われた。」


その発言をした刹那、部屋の空気が一瞬で冷え固まった。


「ほえ?」


違った。メルウェルの周りの空気だけはのほほんとしていた。


「それは…確かなの?」


先程とは打って変わってマミアは真剣な表情だ。


「ああ…。正確なところは召喚魔方陣がある帝都郊外の祠を見る必要があるかもしれないが。」


「帝都郊外の…ああなるほど、そういうことね。あのあたりには今魔王軍がいたわね。そいつらの目標は帝都じゃなくて、そっちだったって訳ね。」


「ああ、そういう事なんだと思う。今までの周回でも召喚魔方陣の存在に気付いていたり、狙っているような素振りは全く無かったのにやられたと思う。」


「ああ、この前説明された魔王軍にも周回を知覚しているやつがいそうってやつね。でも改めて考えてみると、それ酷くない?勇者フミヒロはその存在を聞いてなかったんでしょ?」


「まぁな。ただその神の使いっぽいのは一方的にこっちに肩入れしてくれてる訳じゃなさそうだったし。人類と魔王軍の戦いを高みの見物したい感がヒシヒシと感じられたからなぁ。」


「何それ、サイテ-ね。

…でも、それ他の人には言わないでね。神が人類の一方的な味方じゃないとか神殿の上層部に知られたら、あなた消されるわよ?」


「おお、こわ。分かった、他では言わない。」


「うーん。本当にその力は失われたのか?たまたま今日ちょっと調子が悪いだけとかないのか?」


とタスク。


「残念だが無いな。その理由を簡単に説明するか。まず、その召喚魔方陣には俺の名前が刻まれていた。敗北するたびに俺の魂は、俺の真名が封じられたその魔法陣を目標地点として復活していたんだ。タスク、俺の名前を言ってみて?」


古橋史博フルハシフミヒロだろ。どうした急に。」


「そう、それなんだが、俺が説明を受けた内容はこうだ。

勇者おれが無限に復活できる絡繰りの一部として、魔方陣に俺の名前を復元ポイントという形で刻み込み、同時にこの世界でその名前の存在を封印していたんだ。なぜ封印するかというと、この一年間という周期のどこかで俺の名前が呼ばれるなどして俺の名前がこの世界で魔法陣以外で存在してしまうと、敗北時に俺の魂が魔法陣に戻るために俺の名前の存在を探した時に、誤ってその魔法陣以外の名前を呼ばれた場所に行ってしまい、結果的に魂が魔法陣まで辿り着けず復活出来ないという事がありえるからだと。だから俺の名前は封印され、今まで皆に勇者としか呼ばれた事が無かったんだ。だが、今こうやって名前を呼ばれるようになった。なってしまった。これが意味することはその魔法陣が力を失って封印も解けたという事に他ならないだろう。」


「なるほど、そういう事ね。でも今の勇者フミヒロの身体は大丈夫なの?これだけの奇跡を実現するのには、かなりの…その…呪いのような強い力が魔法陣とあなたにかかっていたと思うのだけれど。」


呪いという表現が俺に対して酷な言い方と思ったのだろうか、その言葉を発するのを躊躇していたマミア。なんだかんだで良い奴だよな。そう思いながら俺は手を握ったり開いたり腕に力を込めたりして体調を確認するが、特に違和感は感じられなかった。


「うん、特に身体に異常は無いよ。勇者の力が失われたという事もなさそうだ。」


「本当ならその帝都郊外のほこらをちゃんと確認した方がいいのでしょうけど、状況からするとどうやら動かない事実みたいだし、魔王軍が近くにいる今それをしている余裕はなさそうね。」


「ああ、そうだ。今まで二十数周回、一度も勝てなかったこの戦いを、この最後の一回で勝たなければならなくなった。言い換えれば、今まで俺は二十数回負け続けてきた。全敗だ。今まで一人で自分勝手に決めてきて、今更勝手な言い草なのは分かっている。でも俺の力だけでは足りない事は明白だ。だからみんなの力を貸してほしい。」


俺は再度頭を下げながら言った。

その瞬間室内は無言になった。酒場特有の喧騒がドア越しに聞こえるため、個室内は全くの無音というわけではないが、誰も声を発しなかった。俺は頭を下げているため皆の反応が見えない。どういう表情で俺の言葉を聞いていたのだろうか。正直怖い。彼らに拒否されたらもうどうしていいかわからなくなりそうだ。

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