表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第5部 終わりの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/98

第64話 お前ってやつは!

第23周回1月 魔王都総司令部 アドラブル


それは本年2回目の勇者対策会議中の事だった。

前回の勇者対策会議で顔合わせと軽く触れた全体の流れに引き続き、俺は今までの周回の流れを説明しているところだった。


「なるほどなるほど…」


ハキム他、勇者対策会議のメンバーが頷いている。そんな時だった。


「んべー。」


「ジンベちゃん!どうしたの!?」


勇者対策会議の面々のために紅茶を淹れながら俺の話を聞いていたタリアトが焦ったように声を上げて立ち上がった。そして俺の執務机の上でごろごろと遊んでいたジンベの元に駆け寄る。何か吐いているようで、心配になったようだ。


そりゃ、あんなに小さな生き物がなんか吐いていたら心配になるけど、生き物じゃなくて精霊だからな。お腹壊したりする事は無いはずで、遊んでいるだけだろう。と別にそこまで心配はしていない。

俺、薄情か?


そしてタリアトはジンベのお腹をさすっていたが、何かに気が付いたようで執務机にあった書類を手に取る。おやおや、上司の机にある書類を堂々と勝手に見るなんて感心しませんなぁ。重要機密書類かもしれませんよ?まぁ、司令部付きメイドだし、普段から目に入っているだろうけど。

ん、でもあんなところに書類置いてたかな?しかも結構な量の山で。


「閣下、これ…!?」


少し焦ったようにこの書類を見て欲しいと手招きするタリアト。ん?なんだなんだ?と、会議スペースからマイ執務机の方に移動する。そこにはキャッキャキャッキャと喜んでいるジンベがいる。ほらやっぱり大丈夫だっただろ?

そしてタリアトから書類の一部を手渡され、それに目を通す。


―――!!!


「こ、これは…。」


それを見た瞬間、俺の中で雷鳴が走り激震が走った。

それが何かといえば、前周回の最後にジンベが食べてしまった報告書(の山)だった。


「お前ってやつは…」


「ジンベ?」


ジンベは『なぁに?』とばかりにお腹を前にだしてにこにこしている。お腹触ってほしいのか?それくらいお安い御用だ。いくらでも触ってやるぞ、うりうりー。


「くぴくぴー♪」


とっても嬉しそうだ。俺も嬉しいよ!


「閣下…?」


と、背後から怪訝そうな声を掛けられる。ああ、そうだ。忘れていた。


「喜べ、我が大精霊ジンベがやってくれたぞ!これを見ろ。前周回の報告書だ!」


この報告書の効果は絶大だった。

勇者対策会議の面々だけなら、時の巻き戻りなどを説明、説得させるのは俺自身との関係も深いためそこまで難しくない(いや、ここですら最初は苦労したけどさ)が、研究機関など、関係各所は多岐にわたる。それらを説明して回るのはそれなりに労力なのだ。

上司の命令だからとりあえず従ってはくれるけど。


そこをいくと、報告書は基本的に1年後の自分たちが書いた内容である。筆跡はもちろん、文章の書き方や理論の持って行き方の癖もある。それらは未来の自分が書いたと思わせるのに十分な説得力を持っていた。未来の時の巻き戻りを信じられるならば、その文書への信頼度が上がり、ひいては理解力も上がり、結果的に能率も上がる。

そして年末の引継ぎもアドラブルに記憶してもらって次回の自分へ引き継いでもらうための内容ではなく、直接過去の自分に分からせる内容になるため専門用語も多様出来て、より伝達効率は良くなる。

なお、気まぐれな精霊であるジンベが次回以降も文書を引き継いでくれる保証など無い(結果的にやってくれる事になるが)ため、アドラブルも一応覚える事になり目を通す必要はあった。

そこでは未来の自分なら分かってくれると、明らかに自己中心的な文章で作成された理解しかねる報告書が続出した。もちろんそれには是正指示が出た。やっぱりチェックって必要だね!


そしてこの報告書だけでもジンベは破格の活躍だったのだが、それを上回るとも劣らない衝撃を勇者対策会議室の面々に与えることになった。

なんと最終決戦で私ことアドラブルの傍にいて顕現している時に自らが見た様子を映し出して…再現してくれたのだ。もし勇者がこの光景を見たらこう言ったに違いない。文書保存に動画再生機能とか、スマホかよ!これはチート過ぎる!と。


なので、もちろん前回の最終決戦の上映会を行った。

極光魔法こそ自分が天幕の中にいたため映っていなかったが、天幕越しにも伝わる衝撃と直後確認できた護衛隊員が使った(この時点ではグダンネッラの引継ぎ資料だけで現物は無いが)3人がかりで防ぐ魔道具付きの護衛兵用の白銀の魔法盾が半ば溶けている事で騒然となった。


そして魔法使い(メルウェル)こそ途中離脱して本陣まで来なかったので映っていないものの、勇者や重戦士や聖女の容姿が確認できたのは大きかった。特に諜報部隊のエルデネトにとって。

今回、その力の一端は見せたものの重騎士と聖女が呆気なくやられたのに対して、その後に勇者が最終的には負けてしまうものの単独でアドラブルとほぼ互角に打ち合えていたのが、皆の目には非常に脅威として映ったようだ。今回この最初にやられた重戦士と聖女の二人が機能していたら危なかったのではないかと。


皆の目の前に具体的な目標が示された。彼らのやる気は確認するまでもなかった。



そして、4月。北東攻防戦が発生した。

なるべく前回と同じ状況にしようと結果的にゴブリン兵3万余を犠牲にしたが、その甲斐あってかエルデネト率いる諜報部隊は魔法使いメルウェルの暗殺に成功する。メルウェルの容姿はジンベの最終決戦動画からは確認出来なかったのだが、聖女と割といつも一緒にいたのですぐにわかったそうだ。聖女と魔法使いどちらが暗殺し易いかをじっと偵察していたら、聖女は部隊の指揮官を務めており部下とも頻繁に遣り取りをしていて個人としても割と隙が無く、魔法使いが特に軍での役割もなく自由に動いていたので標的はメルウェルとしたようだ。遠目にメルウェルの気の引きそうなものを動かしたり木から落としたりして気を引いていたら、割とすぐ釣れたそうだ。

割と何でも良かったっぽいが、メルウェルの視界に入るように遠くで木からりんごをどさどさと落としたら、遠くから駆け寄って嬉しそうに食べ始めたらしい。そこを背中から一突き…という話だな。諜報部隊からも呆気なさ過ぎてびっくりしたようだ。

ちなみに割となんでもよかったというのは木苺やブルーベリーとかでも既に釣られていたらしく、トドメを刺した時はりんごだったというだけらしい。魔法使いめ、その果物がなる木すら無いのに、大量の果物がそこら辺に落ちてる訳無いだろ!


これによりメルウェルを欠く事になった勇者一行は、最終決戦でも精彩を欠き、魔王軍は問題無く勝利を積み重ねた。そしてこの一年の研究成果を次の周回に引き継ぐことができ、更なる魔王軍強化が図られたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
本格的に魔王側に強化入ってきたな。 こうして見ると勇者側が周回引き継ぎ要素を上手く使えてなく思えるな。 手探りだったとは言え19周目までで罰除いて永続ボーナスが2個はゲーム感覚が過ぎるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ