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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第5部 終わりの始まり

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第63話 北東攻防戦反省会

第22周回 5月 魔王都総司令部 アドラブル


時は戻り、ここは第22周回5月下旬。

バルダッシュが魔王軍総大将を務めた北東攻防戦で魔王国が大敗を喫し、バルダッシュが戦死寸前のところをギリギリで飛竜部隊で救い出したその翌月だ。

アドラブル以下、勇者対策会議の面々は4月に帝国領北東部での激戦――北東攻防戦を振り返る結果報告会及びその分析を行った。療養から回復し、この後精鋭部隊の訓練を行う予定のバルダッシュも報告も兼ねてこれに参加している。なお、その後精鋭部隊の訓練において目覚ましい結果を残したため、最終決戦でもそのまま精鋭部隊の指揮官としたところ、見事な部隊運用を見せたバルダッシュは勇者対策会議のメンバーになっていくことになるのだが、それはまた別の話である。


軍監からの報告書やバルダッシュの報告を元に当日の帝国軍の編成及び行動を丸裸にしていく。


「ううむ…偽装撤退からの伏兵攻撃か。これは見事な用兵だな。」


報告書や参加者の報告を元に地図の上で兵を表すコマを動かしながら、敵味方の移動を再現していく。他のメンバーも同様に唸っている。


「たとえ指揮官が相手の作戦を見破ったとしてもゴブリンどもは勝手に追撃してしまいそうだな。むしろそうなるのが自然か?」


「そうですな。しかし、これは勇者とやらの指揮能力も侮れません。これを撃破するのであれば、軍として作戦行動が出来る精鋭部隊を注ぎ込まねばなりますまい。ただ、精鋭部隊の訓練状況はまだまだです。この時期にここに出せば少なくない被害が出ましょう。勇者直属の帝国兵をここで減らしておくことに意義はありますが、温存したくもあります。」


とハキム。そうだなと思い、ハキムを見て頷く。皆もそのような意見のようだ。

そして盤面は、伏兵攻撃を食らって総崩れとなり、バルダッシュが撤退する場面になった。バルダッシュが苦い顔をしながらその場面の報告をしている。気持ちはわかるが、正確に報告し次回以降に生かして欲しい。するとそのバルダッシュからの報告の中で、気になる報告があった。それはバルダッシュが撤退時に受けたしばらく利き手を痺れさせた白い魔法があったとの事だ。あれがなければもう少し戦えたのに…と、とても悔しそうなバルダッシュ。だがそれは特筆すべき重要な情報だ。


「そのバルダッシュが痺れさせられた白く光り輝く魔法とやらは、恐らく神聖魔法…使ったのは十中八九聖女であろう。なるほど、後方の伏兵部隊に聖女がいたのか。勇者は帝国軍本隊を率いていたよな?重戦士らしき者も本隊にいたと聞いている。聖女は一旦分かれて行動しているのか。ふむ…これは使えるか?」


「そうですな。バルダッシュ殿、他に気付いた事はありますか?」


「白イ光デ痺レサセラレタ時、同時ニ火球ノ魔法ガ同ジ場所カラ発セラレタガ、明後日ノ方向ニ飛ンデ行ッタカラ被害ハ無カッタ。ダガ、威力ハ中々ダッタ。」


「ふむ…勇者一行の魔法使いも一緒にいると見た方がいいか。確かに聖女も魔法使いも偽装撤退に参加させるより後方で待機させた方がよいか。道理だな。」


そこでエルデネトが挙手をする。


「閣下、次の周回では予め伏兵が敷かれるあたりに、数か月前から諜報部隊を配置しておきたいと思います。何か仕掛けるという意味ではなく、まず伏兵部隊に関する情報を集めましょう。いつ頃から布陣を始めるのか、そしてその配置や陣立てなど全てを。その情報を更にその次回以降に生かしましょう。」


そうだな。頷き了承した旨を伝える。


「そして戦争が始まりましたら、聖女か魔法使いどちらかの暗殺を狙います。こちらは本来上手くいったらいいな程度なのですが、相手が兵を伏せる場所が分かっているのです。しかも場所は森。予め隠れる場所の準備は出来ましょう。なかなかの成功率が見込めると思います。」


「そうだな。それとバルダッシュが痺れるだけだったように、やつらはまだ最終決戦時の強さは無い。エルデネトの手の者…暗殺者のナイフも十分に通るだろう。」


おお…というどよめきが起こる。


「そうなると、諜報隊の動きを悟らせぬように、我らが魔王軍――北東軍は普通に負けさせた方がいいかもしれませぬな。」


「不審を抱かせぬようにとなると、それなりの数だろう?痛手ではないか?」


「仕方ありません。こちらが前回と変わっていないと思わせるのであれば、前回と同じく5万の兵を準備しましょう。そしてたとえその5万の兵が全滅したとしても、勇者一行の聖女か魔法使いのどちらかをここで倒しておけば、最終決戦での有利は揺るぎません。」


うむむ…5万の兵をむざむざと殺させるのにはやはり抵抗があるが…


「閣下、ご決断を。大義の前に犠牲はつきものです。」


「はぁ、分かった。必要な犠牲だな。その代わり最終的な勝利は絶対に手に入れねばならないな。」


―――おおーっ!


この北東攻防戦は結果的に魔王軍の敗北に終わったのだが、未来に向けた新しい展望が拓けた気になった皆の士気は否応なく上がった。次の戦いは自分が活躍して見せると。


そしてこの会議も終わりを迎えた。

横をちらっと見ると、これらの会議の内容を書記が書き留めている。

次の周回で生かすために、年末…最終決戦前にこれをちゃんと記憶しないといけないのが面倒なんだよな。これだけならまだいいんだけど、勝つためとはいえ山のようにある他の報告書や研究結果も諸々覚えないといけないのが憂鬱過ぎる…はぁ。




~後日談~

最終決戦前の12月、各部署から続々と挙がってきた次の周回へ引き継ぐ用の報告書や研究結果を片っ端から読み、暗記をしていた時だった。


「ジンベ!」


ん…?ん!?


「こらー!ジンベ、それ大事な報告書だから食べちゃだめー!」


「くぴ?」


と、小首を傾げるジンベ。くぅ、かわい過ぎる。


「まぁ、そこら辺のは読み終えてだいぶ記憶したからいいけど、もう一回くらいは読んでおきたかったような。というか、紙は食べ物じゃないからね?」


「ジンベ!」


分かったと頷くジンベ。ふぅ。

っていうか、精霊って何か食べるもの?というか食べてどうするの?というか食べた物ってどうなったの…?


―――ぱくぱく…もぐもぐ…ごっくん。


ん!?


「こらー!ジンベ、だからそれ大事な報告書だから食べちゃだめだってばー!」


「ジンベ!?」


見つかっちゃった!?って顔もかわいいとか反則過ぎる。

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