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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第5部 終わりの始まり

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第62話 翻弄

第25周回 4月 帝国領北東部 勇者と呼ばれる男


なん…だと…?

帝国軍要塞エルグレアが陥落しただと…!?


ざわざわと辺りは騒然としている。無理もない。過去には…百年以上遡れば帝国軍要塞エルグレアが落ちたことはあるのだが、逆にいえば百年は落ちたことがない、長年にわたり魔王国からの侵攻を防いできた要塞中の要塞だ。



この場に重騎士隊の隊長であるログミンもいて、その俺を見る視線が非常に厳しいと言わざるを得ない。勇者オレが無理をいって重騎士隊を要塞から出陣させた訳で、わざわざ北東くんだりまで来てみれば倒せと言われた敵の姿はそこになく、挙句の果てに帝国軍要塞エルグレアは陥落。普段通りに重騎士隊が要塞エルグレアに駐留していれば、エルグレアは落ちなかったかもしれないのに…という事だろう。


くそっ。

地面を殴りつけたい気分だが、全軍の指揮官としてみっともない姿を見せるわけにもいかない。


「しかし、不味いな。エルグレアが落ちたとなると、魔王国を攻撃する拠点が無いという事だ。これでは最終決戦に挑めないぞ。」


思わず独り言が漏れていたようだ。

しかしそれを聞き咎めたのが、重騎士隊隊長のログミンだった。


「何を言っておられるのか!エルグレアが落ちたという事は、帝都までの道が魔王軍に出来たという事ですぞ!帝都までも多少の城砦があるので一直線という訳にはいかないでしょうが、敵の目標が帝都でなくても少なくない数の都市があるのです!帝都や帝国民の心配をなされよ!最終決戦など二の次です!」


俺はその瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。

そうだ、俺は何という考え方をしていたのだ。…確かに巻き戻れば全てが無かった事になるとはいえ、魔王軍が帝国民を蹂躙しながら進軍すれば、そこには兵士ですらない非戦闘員の悲哀が、そこにいる人の数だけ発生するのは想像に難くない。


「タスクに使者を出して合流を急がせろ。そして兵をまとめて魔王軍を捕捉して、追撃・撃破するぞ。奴らを帝国内で野放しにする訳にはいかない。」


―――はっ!


命令を受け何人かが天幕から出ていく。


「魔王軍の現在位置及び進軍予定経路を調べろ。我が軍がどこでどのような形で魔王軍と対峙するかは目下最重要問題だ。そのためにも詳細な情報が必要だ。数多く偵察を出せ。軽騎兵隊を全部使っても構わん!」


―――はっ!


更に数人が天幕から出ていった。

勇者オレは、帝国領の地図を持ってこさせて、軍議用の大テーブルに広げさせた。タスクが合流するまでに進軍ルートを決めねばなるまい。


帝国の領土は大まかにいうと正方形の形だ。そして帝都は正方形のほぼ中央に位置する。我々が現在いる場所は北東部で正方形でいけば右上隅にあたる。魔王軍は正方形でいえば上の辺の中央あたりにある要塞エルグレアを陥落させた。

そのままで済むはずも無く、魔王軍は恐らくそのまま帝国中央部…帝都方向へ進軍してくるだろう。こちらは帝都に戻るには右上から斜めに戻る事になるので、魔王軍の方が帝都には近い事になる。しかもエルグレアが落ちたのは1週間も前だ。我らが奴らに追いつけるかどうかは、帝都までの途中の都市や城砦がどこまで足止めしてくれるかにかかっている。とはいえ、それは要塞エルグレアや帝都より遥かに防備の薄い都市等が犠牲になるという事だ。帝都を除けば、各都市には警備兵を中心とした少数の兵しかおらず、攻められればひとたまりもないだろう。そして帝国軍で動ける兵のほぼ全てはここに集結している。魔王軍の進軍を阻む者はいないに等しい。


帝都が攻撃されるような事があれば、帝都はそう簡単には落ちないだろうが、個人的な事を言えば勇者の信用はその時点で失墜するだろう。そして帝都が万が一陥落するような事があれば…ゲームオーバーという事もあるのか…?


だが今はそれを考えても仕方がない。とりあえず今後の方針だ。

しかしルート選択が難しいな。大きく分けて3つある。


A.真っ直ぐに帝都を目指して、魔王軍が帝都を攻撃する前にその手前に滑り込んで帝都前で防衛線を張る。


B.帝都と要塞エルグレアの中間にある大都市ゴブランを目指す。


C.要塞エルグレアを奪還し南下する。



A.まずこれが浮かぶ。人によってはこれ以外無いと思う人もいるだろう。

帝都は敵の方が近いから既に帝都を攻撃されている可能性もあるが、帝都の城壁は高く守備兵もかき集めれば一万はいるだろう。すぐには落ちないはずだ。帝都が攻撃されていたとしても、帝都とわが軍で挟撃に近い形をとれる可能性は十分ある。


B.割とギャンブルであるが、ある意味堅実策でもある。

大都市ゴブランならばそれなりに防壁があるし、二十万人クラスの大都市であるがゆえに補給も容易だ。もしかしたら魔王軍が大都市であるゴブランを攻撃し、まだ攻撃中である可能性もある。魔王軍にとってみれば、帝都よりも大都市ゴブランの方が容易く落とせる事を考えると帝都よりこちらを攻撃する方がコスパがいいとも言える。

それにもし魔王軍がゴブランを無視して帝都に直行していた場合、Aの作戦のように強行軍でわが軍が帝都まで戻っても、疲労等ですぐには満足に戦えない可能性がある。ゴブランで補給後、魔王軍の後を追えば帝都とわが軍で魔王軍を確実に挟み撃ちに出来るだろう。ただ、Aの作戦案に比べると帝都にいる皇帝以下首脳陣からの印象が悪くなるのは否めないな。


C.まずこの作戦のメリットは、ここから要塞エルグレアまでの距離が、帝都よりも大都市ゴブランよりも近いという事。そして要塞エルグレアは魔王軍との国境であり、まずここを落としておかないと帝国内に入った魔王軍の補給や増援を断てないという事でもある。

更にここを落としておけば、今後魔王軍が帝国内からの撤退を決めた場合、要塞エルグレアを帝国軍・魔王軍のどちらが保持しているかで、魔王軍にとってその撤退の難易度は段違いになるだろう。

要塞エルグレアを落としてじっくりと帝国内の魔王軍を撃破する。ある意味一番堅実かもしれない。帝都がそれまで落ちないという保証があれば…だが。


そして、ここには挙げなかったが


D.魔王都を狙ってまだ幼い魔王を殺す


というのもあるが、これは制約が多過ぎて断念せざるを得なかった。

まず帝国領であれば補給を受けるのは容易であるが、魔王国内では満足に補給が得られないこと。まだ帝国内に攻め込んできた魔王軍の総数が分からず、魔王国内に守備兵が多くいれば、その時点で勝ち目は薄い事。やはり、この2点が難点として大き過ぎて断念せざるを得なかった。

それに魔王都と魔王城。まだ攻めた経験がないからよくわかっていないのと、どちらも堅い事で有名だから、帝都陥落と速度を争っても勝てそうにない。

アドラブルが帝国侵攻軍の中にいるのか魔王都に残っているのかまだ判明していないが、もし侵攻軍の中にいるのならばあの強敵アドラブルを倒さずにクリアできるルートかもしれないというのは十分魅力的ではあるのだが。

だけど、何度考えてみてもやっぱり補給が無理過ぎるな。要塞エルグレアを落としてそこから北上したとしても要塞エルグレアに長期遠征できる補給物資はまだそれほど無い筈だし、現時点で保持していた分は陥落時に魔王軍に奪われているだろう。


どうするか、勇者オレが選んだ選択は…

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― 新着の感想 ―
周回する者が外部協力者と全体のトップと言う立場の差が如実に大きくなってきたな。 相手にも周回者が居ることを確信出来たのに、いままでと同じ相手が差してきた一手に対する一手しか打ててないあたり、意識改革は…
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