第60話 ああ…無惨(第24周回)
第24周回 1月1日 帝都近郊召喚の祠 勇者と呼ばれる男
くそっ。
―――ドンッ!
分かってはいたがダメだった。メルウェル抜きではアドラブルを倒す事は出来なかった。むしろ、割とアドラブルとの対決以前の問題だった。メルウェルがいないと火力不足で最終決戦までのレベル上げやアイテム集めが捗らなかったために、最終決戦におけるメルウェルの不在自体よりもそれまでの準備不足がたたって、アドラブルに対して完敗する羽目になってしまった。
それにしても北東攻防戦でメルウェルはなぜ死んだのだろうか。いかにメルウェルが、当時はまだレベルもそこそこで紙装甲の魔法使いとはいえ、ただのゴブリンごときに後れをとる筈はないのだから。
第24周回 4月 帝国領北東部 勇者と呼ばれる男
今のところ前回同様順調だ。まぁここまで特に山場らしきものも無いのだから当然といえば当然だが。
そしてこれから満を持して臨むのが北東攻防戦だ。前周回では、前々回より素晴らしい戦果をあげる事ができていた。ただ、メルウェルがいつのまにか行方不明になっており、よもやの殺されていたという一点において結果的に大失敗となってしまった。
なお、どのようにして殺されたのかが未だ不明だ。もちろん時が巻き戻って今は生存状態のメルウェルが、前回のそれを覚えている訳も無く真相は闇の中のままだ。
散歩に出て昼寝中に野良の魔物に殺されたのか、たまたま魔王軍に出くわして殺されたのか、それとも…それとも、魔王軍がメルウェルを狙って殺したというのもあるのだろうか?ただ今回は監督役の聖女マミアに前回のこの事件を伝えて、メルウェルから目を離すなと口を酸っぱくして言っておいた。なので今回は大丈夫なはずだ。
メルウェルにも一応…というか何度も『知らない人についていってはいけないよ?』と伝えているが、正直そっちは期待していない。
『もうっ!私は子供じゃないの!』と憤慨していたが、そうか…?
そして北東攻防戦が始まる。
もちろん勇者は本隊を率いて参戦だ。しかし、今回は今まで以上に魔王軍に手応えが無く、偽装撤退するまでもなく敵魔王軍を散々に打ち破った。むしろ敵が偽装撤退をする気なのではないかと疑ってしまうほどだった。
しかし相手の弱兵っぷりは別に擬態では無かったようで、普通に打ち破ったら四散していった。しかもかなりの敵兵を討ち取ったので、合戦終了後のレベル上昇量も上々だ。こんな楽な周回もあるのか?と思いつつも、まぁ前回は運が悪かったし、今までも前回より楽になった周回も普通にあったのでそこまで気にする事ではないなとその時点では思っていた。
そして、偽装撤退するまでもなく大勝を収めたので、後方で兵を伏せていた聖女マミアとマキタ指揮官に戦争終了の報告と合流するように使者を出そうとしたところで、ボロボロの左軍を率いてマキタ指揮官が本陣に到着した。
悪い予感しかしないが、そこで報告されたのは右軍伏兵部隊が魔王軍の精鋭部隊と思しき敵から奇襲を受けた事。完全に不意を付かれた右軍は大混乱に陥ったようだ。その敵襲に気付いたマキタ指揮官は左軍を率いて右軍を救うべく急行したものの、敵は一撃で右軍を壊滅させたようで、マキタ指揮官が戦場についた時は既に右軍は指揮系統が無い状態だったようだ。それでもマキタ指揮官は右軍を少しでも救おうとその魔王軍に戦いを挑んだが、右軍を壊滅させた敵はそれで満足したのか、左軍と少し交戦した後に森の奥に退いていったとの事。兵自体がそこまで強かった訳ではないらしいが、その引き際が見事だったのでマキタ指揮官は魔王軍の精鋭部隊なのではないかと感じたようだ。
そして壊滅した右軍の生き残りを回収しながら事態の把握に努めていると、聖女マミアと魔法使いメルウェルの死体が右軍本陣で見つかり、両者が殺されていたのが判明したとの事だった。
伏兵部隊、それは奇襲をかける側として隠れているのであって、逆に奇襲をくらうと思っておらず警戒を全くしていなかった。そして聖女に並の統率力はあるが、それは指揮能力というよりは聖女自身のカリスマに因るところが大きく、奇襲に対しての対処能力はほとんどなかった事。この2つが大きく奇襲攻撃を食らったことに対して大きなデメリットとして作用してしまった。奇襲を受けたのが左軍であれば、マキタ指揮官は指揮能力があるゆえにまだ少しはマシだったはずだ。
だから右軍が奇襲されたのならば、この結果はむしろ当然なのかもしれない。しかし聖女マミアと魔法使いメルウェルが殺されたのは、たまたまなのだろうか。魔王軍は右軍に聖女マミアとメルウェルがいる事が分かっていて狙ってやったのではないだろうか。その前の周回で森の中でメルウェルが何者かによって殺されたのが思い出される…。あれはメルウェルがピンポイントで狙われたのではないだろうか。
もしかして本当に…魔王軍にもいるのか?
はぁ。しかしこうなってしまうと、メルウェルが早々に欠けたために完敗だった前の周回よりも酷い状況だ。聖女マミアまで失ってしまっている。はっきりいってこの周回は勝負にならないだろう。そんなこの周回を最後まで走り切る必要があるのだろうかと思いつつも、少しでも次の周回の足しにしようと、帝国内の反乱を少しでも効率よく平定する方法を模索したり、北西の魔王侵攻軍に対して攻撃を仕掛けてみたりと勇者は今出来る事をやっていく。
そしてやはりというか当然というか、最終決戦において勇者とタスクはアドラブルに挑んだものの完敗となった。
そしてまた時が戻り運命の第25周回を迎える。




