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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第5部 終わりの始まり

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第59話 誤算(第23周回)

第23周回 1月1日 帝都近郊召喚の祠 勇者と呼ばれる男


くそっ。


勇者と呼ばれる男は紫の不可思議な模様――魔法陣が描かれた土の地面を模様を避けて殴りつけた。


また失敗した。

いや、また…ではないな。今までは失敗ミスして負けたのではなく、まだ何かが足りていなくて、まだ魔王軍アドラブルの方が総合力で上回っていたから負けた、という感じだった。

ただし今回ははっきりと自分がミスした事による敗北だ。初めてミスをしたなどと言うつもりは毛頭ないが、己のミスが明確に敗北に直結した周回だった。

悔しい。本当に悔しい。そんなつもりはなかったのだが、やはりどこかで焦っていたのだろうか。


しかし、この周回で得られた大きな経験もある。

それは今までは勇者一行の個人戦闘能力のアップをメインで一年を過ごしてきた。しかし、帝国軍を率いて反乱軍を鎮圧する事は今までもやっていたが、前回は侵略してくる魔王軍を倒す事による自軍の戦力アップを狙うという試みをした。その結果、想定通りに帝国軍が強くなるだけでなく、勇者一行の個人戦闘能力までアップしたのだ。それは今までも反乱軍相手に敵兵を倒してきたが、それはいくら倒しても個人戦闘分以外の経験値がもらえなかった。しかし帝国軍が倒した魔王軍兵士は、全て勇者一行の個人経験値として反映される事が判明した。しかも帝国軍全体で数万の魔王軍兵士を倒せば、序盤である4月の時点では破格の経験値をもらえるということで、序盤の進め方としては今までのどの育成よりも群を抜いて強くなれるという事が分かった。

この手順はこれからの周回以降でも生かしていくべきだろう。むしろ前回は手探りな部分もあった中であれだけの成果を出せたのだから、今周回ではもっと洗練された手順でより優れた結果を出せるだろう。そしてその成果をもって最終決戦を勝ち抜くのだ。同じ失敗はもうしない。

それに今回も前回同様にいい状態で最終決戦に臨めれば、そのいい状態が普通になってあのように強さに浮かれて自滅する事も無いはずだ。


そして他の反省点としては、タスクや聖女マミアとの連携というか認識の共有も不十分だったと言えるだろう。最終的には自分のミスだが、アドラブル周りの戦力も護衛隊員だけでなくその他の…例えば以前1回だけしか遭遇していないが煮え湯を飲まされたあの犬耳のメイドも含めて、毎回細部まで共有しておくべきだった。そうすれば、護衛隊員以外の力がある側近がアドラブルの傍にいたという時点で、その状況が今までと違うという事が気付けただろう。…勇者オレ自身は暴走気味で無理だったが、少なくともタスクやマミアは今までに無い状況だという事に気付いただろう。


ん?メルウェル?あれは連携は無理だ。ただ今にして思えば、メルウェルが極光魔法を――あれは確かに見事な魔法だったが――先走って使って魔力切れで離脱した。そしてアドラブルの元に一人欠けた状態で戦いを挑んだことからして、まず誤っていたのだろう。だからメルウェルの事はちゃんと手綱を握っておかねばならない。…もしかしたら一番の難問かもしれないけどな。

勇者と呼ばれる男は遠い目をしながらそう思った。


どうしようもなかったが、今にして思えばメルウェルが欠けた事もそれほどまずいとも思わず、アドラブルに戦いを挑んだように思える。やはり浮かれていたのかもしれないな。


そして最後に忘れてならないのが、飛竜ワイバーン部隊だろう。あれで重騎士突撃が止められて、そのために決死隊が早めに動く羽目になっていた。それだけでは足りないからメルウェルに魔力を使わせて援護させた訳で、最終的にはそれ(余計な極光魔法がほとんどの原因ではあるが)が魔力切れに繋がった。

ようするに最終決戦においてメルウェルが欠けたのは、あの飛竜ワイバーン部隊が一番の原因だ。なのであれは今回退けたからといって無視する事が出来ない敵部隊だ。しかももっと上手く運用されたら、魔法という遠距離攻撃手段があるメルウェル以外手出しが難しい存在になる可能性すら秘めている。

なので、対飛竜ワイバーン部隊用に移動式もしくは簡易組立式の固定弓(バリスタ)を作らせる事にしよう。すぐに実戦投入は出来ない――飛竜ワイバーン部隊の姿がちらつく北東攻防戦には間に合わないだろうが、年末の最終決戦には間に合わさせよう。それがあれば飛竜ワイバーン部隊が脅威である事に変わりはないが、あのような結果的に致命傷となった活躍をされる事も無いだろう。


時が巻き戻り最初の勇者召喚の儀式に再臨した勇者と呼ばれる男は、召喚魔法の光に包まれながらこのように今周回への想いを馳せていた。




第23周回 4月 帝国領北東部 勇者と呼ばれる男


今のところ順調だ。前回のチャートに多少の修正を加えた程度で大差は無いので問題も起きていない。むしろ帝国領の反乱を今までより兵の損耗を抑える形で、順調に鎮圧していっている。とはいえ前回も別に悪くないチャートを組んでいたので、ここまでと前回では結果的にはそんなに変わらないのだが。しかしこれから臨む北東攻防戦では前回と比べて改善する余地が大いにあると思っている。

事前の作戦会議の話の進め方から始まり、陣立てや防衛陣の構築、撤退行の内容などなど。前回は連絡を取れなかったが、追撃時に姿を見せていた伯爵軍と連絡をとるのもありだろう。こちらの思惑通りには動いてくれないかもしれないが、利益をちらつかせることでその行動を誘導する事は出来るだろう。伏兵部隊に関しても、奇襲自体は割と綺麗に決まって特に改善点など無さそうに見えたが、伏兵部隊の指揮官である聖女マミアやサカイ指揮官からの報告書では、攻撃の方向性や待機期間中などで改善の余地があったようだ。それを今回の彼らに伝える事で彼らも改善してくれるだろう。


そして、最後に追撃の厳禁だ。前回はあれで貴重な軽騎兵をほぼ失ってしまった。戦力的には大したことが無いのだがあれはあれで使い勝手がよく、他には無い機動力の高さがあるので、騎兵隊がいるとその後の作戦立案の幅が広がるのだ。


これら一つ一つの影響力は小さいかもしれないが、それぞれ改善していけば大きな改善となるだろう。結局前回の北東攻防戦にて、倒した敵兵の数の方が遥かに多かったが、味方も少なくない被害…確か二千人以上の死傷者を出している。それが減るのであれば、その後の反乱平定が多少なりとも楽になるのは間違いない。



そして北東攻防戦は勇者の望むように前回同様に帝国軍の大勝利で終わった。ただ一つの誤算を除いて。

それは伏兵部隊に同行しているはずの魔法使いメルウェルだった。この合戦の途中のあるタイミングから行方知れずとなっていたものの、またどこかで昼寝でもしているんだろうと聖女マミアは思っていたそうだ。もちろんその場でマミアは捜索指示は出したもののあまり気にはしていなかったのだが、合戦が終わっても出てこなかったので本格的に捜索したところ、森の中で惨死している姿が発見されたのだった。


もちろんこの時点で火力担当であるメルウェルが離脱してしまった勇者一行は、最終決戦中に魔力切れで離脱した前回よりも状況悪化する事となった。もちろんこれでは最終決戦でアドラブルに勝てるわけも無く、またもや魔王軍の勝利で終わり第23周回を終えて、時が巻き戻る事となった。

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― 新着の感想 ―
メルウェルの評価が勇者側と魔王側で完全に逆方向に振りきれたなw
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