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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第4部 第22周回

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第55話 重騎士の天敵

第22周回 12月31日昼過ぎ エルデネサントの野 重騎士隊隊長ログミン


このままいけば必ずや敵本陣までの道を作れる!

…と味方の誰もが思った時だった。


―――ギャアオオオオオオ!!!


魔王軍敵本陣のやや後方あたりから二十程の黒い影が地上から宙に舞い上がると、《《それ》》は一斉に咆哮を上げた。そこから一直線に今まさに突撃している重騎士隊の方に空中を滑るように襲い掛かってきた。


飛竜ワイバーンだ!

重騎士隊隊長であるログミンはその姿形からそれが何であるかすぐに理解した。

だがまだ少し距離があると感じられた飛竜ワイバーン達だったが、重騎士隊の近くまで高速で滑空して一瞬で辿り着くと、一斉に火球を吐き出し重騎士隊に次々と浴びせかけた。重騎士達は既に勢いにのっているので急には止まれないし、飛竜の数より重騎士の数の方が遥かに多いので、大多数の重騎士は飛竜ワイバーンを無視する形でその勢いのままに馬上槍ランスを構えたまま、敵本陣方向であるゴブリン兵の真っ只中に突撃し、蹴散らし更なる距離を稼ぐ。むしろ飛竜の相手など騎兵には出来ないので、前に進んでくれたのは良い判断と言えよう。

だがもちろん不幸にも標的となった重騎士も少なからずいた。いきなりの火球を巧みな手綱捌きで避けようと試みたり、少しでも被害を軽減しようと咄嗟に手甲をクロスしてガードを試みたり、馬の背に身を隠してみたり…その結果は散々なもので乗騎もろとも火球に包まれて炎上、黒焦げとなる重騎士が続出した。

しかも運よく火球を避けれたとしても、鋭利な鉤爪で引き裂かれたり強大な尻尾で打ち据えられて、一瞬で肉塊に変えられる重騎士が続出した。


混戦状態で飛竜ワイバーンから逃げようとする乗騎の勢いを利用して魔王軍に突っ込み距離を稼ぐ重騎士もいたが、ほとんどの重騎士はその場で棒立ちになるなどの大混乱に陥った。


だが、魔王軍のワイバーンも無傷ではいられない。重騎士は帝国軍の中でも選りすぐりの兵で構成されている。乗騎がいう事を聞かなくなってもその選ばれた(エリート)兵達は勇敢にも飛竜ワイバーンに立ち向かった。届く位置であれば馬上槍を振りかざし、届かない位置であれば手持ちの短槍を飛竜ワイバーンに投擲した。短弓では飛竜ワイバーンの鱗に傷をつけるのは難しいかもしれないが、槍であれば話は別だ。飛竜ワイバーンたちは翼からも胴体から血を流し、一体また一体と墜落していく。


それを見て飛竜の上に乗る魔王軍の兵たちは慌てて上昇を指示をしたようだ。

しかし、それをみすみす逃がすわけにはいかない。飛竜ワイバーンに空高く逃げられてしまえば、地を歩く人族側からは全く手出しが出来ないところに行かれてしまう。この機を逃すまいと懸命に撃墜を狙う。何体か逃がしてしまったが、気付いた時には半分以上の飛竜ワイバーンが地に伏していた。


しかし、一つ言える事は重騎士の勢いは止まったということだ。まだ勢いがついたままでそのまま魔王軍本体に突っ込んで行っている重騎士もいたが、大多数の騎馬にそれは出来なかった。いかに軍馬で訓練されているとはいえ、馬は本能で飛竜ワイバーンを恐れる。前方にいる飛竜ワイバーンを無視して、更にその向こう側に突撃できる騎馬などいないのだ。


とりあえず敵の飛竜ワイバーン部隊は一旦退ける事に成功したものの、重騎士隊隊長であるログミンは、現在位置から魔王軍本陣までの距離を見て愕然とした。予定距離の半分も行っていない。ここから再編成して再度騎馬突撃するのは正直難しい。再編成する時間は与えられないだろうし、何より麾下の騎馬達は既に怯えてしまっている。ここからジリジリと押していって敵本陣まで辿り着けるだろうか。

いや、やらねばなるまい。


「総員、馬を降りて槍を持て。行くぞ!」


―――オオオオオッ!


という喊声が上がり魔王軍に突撃していく。重装備ゆえに重く動きは鈍いが、重騎士隊の構成員は皆手練ればかり。ゴブリンなどハナから敵ではないのだ。それほど速度は上がらないが確実に戦線を押し上げていく。


しかし、ここでガツンと壁にぶつかったように前に進めなくなった。いつのまにか先程まで戦っていた弱っちい緑色の矮小なゴブリン兵は周囲にあまりおらず、意思がはっきりある目をしたゴブリン兵どもだ。相手も魔王軍の精鋭とやらか。

敵も精鋭とはいえ、こちらは帝国軍の精鋭中の精鋭だ。普通に戦えば負けないのだが、前に進まねばならないという焦りと今まであまり見られなかった敵の組織だった部隊の動きに翻弄されて上手く行かない。


すると半ば膠着状態の私達の戦う横を赤い旗を掲げた一段が通り過ぎる時に私に声をかけながら敵兵に斬り込んでいった。


「ここは俺達に任せろ!」


決死隊だ。

いや、早い。決死隊が突撃するにはまだ早い。

だが、そうするしかないのか。確かに決死隊の強度であれば、確かにこの状況を打開し切り開けるできるかもしれない。だが、重騎兵は一千いるのに対して、決死隊は百程度だ。一人一人が一騎当千の強者といえど、ここから敵本陣までの距離は流石に持て余すだろう。


「いいから任せるが良い。その代わりそなたの危惧通り本陣まで届かぬかもしれぬ。だから騎兵として…重騎士として戦えるものどもを集め再編成し、再度突撃出来るようにせよ。」


「はっ。」


既に斬り込んでいった決死隊の面々に続いて、自らも決死隊の構成員であり隊長でもある第一皇女ルクレリナがちょっと場違いとも思えるような装いでそこにいた。見事な意匠が彫られた黄金色の持ち手の細剣レイピアを持ち、生地こそ上質なものの純白の短衣と短いスカートの上に女性らしさを見せつけるかのような形状の輝く白銀の胸部装甲鎧ブレストプレートを身に着け、その上から薄い水色の半透明な上衣をまとっただけの胸部を強調し生足を大きく晒したその姿は、周囲の男たちの視線を多く集めていた。尤もその水色の半透明の衣が大層な魔道具のはずで防御力だけを見るならば総板金鎧フルプレートアーマーの兵士と遜色は無いのだが…。

そんなルクレリナから、私の逡巡とした表情を読み取ったのかそのように指示を下されれば、否やのあろうはずもなく再編成をするべく後方に戻る。


確かに後方ではなんとか馬を御する事が出来ている騎士が数十程度いた。飛竜もいなくなったし、この後も少しずつは増えるだろう。この面々を再編成すれば確かに重騎士隊としてそれなりに効果のある攻撃が出来るとは思う。


そこで戦場を振り返る。


しかし、乱戦になってしまったこの状況では馬上突撃チャージアタックする余地はあまり無さそうであった。

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