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何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い  作者: 崖淵
第4部 第22周回

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第52話 最終決戦前夜

第22周回 12月末 エルデネサントの野への途 勇者と呼ばれる男


最終決戦に臨む勇者一行と帝国軍を主戦力とする人類軍は、帝国軍要塞エルグレアを出発し最終決戦地であるエルデネサントの野を目指して北上していた。その人類軍の兵力は今までの周回で最大となる十二万以上にも及んだ。これは北東攻防戦で大量のゴブリン兵を倒した事により、その北東攻防戦で右軍指揮官を務めこの最終決戦では勇者の代わりに総指揮をとるモブ指揮官改めマキタ指揮官――勇者曰く『そろそろ名前を覚えてやるか、統率力も育ってA級の指揮官にもなった事だし』という事らしい――が非常に成長した事と麾下の兵士も一気にレベルが上がった事が大きい。その戦力増を利用したことにより、その後の帝国内の反乱平定が今までより非常にスムーズに進み、今まで手を付ける余裕が無く放置してきた反乱をも平定する余裕ができたからだった。

それと北東部自体からの補給状況はそれ程今までと変わりが無かったが、北東部の周辺地域からの兵や物資の調達が上手くいった。

この二点から今回の人族側の動員兵数が飛躍的に伸びた。それに対して魔王軍の動員兵数は、北東攻防戦の大敗が響いたのか、二十万を割っているようだとの偵察結果の報告を受けている。今までの周回の中で最も兵力差の小さい戦いになりそうだ。


そしてその北東攻防戦において、勇者一行自体も三万匹のゴブリンを倒した扱いとなったのか、レベルの低い序盤では非常に効果的で一気にレベルが跳ね上がった。北東攻防戦及びそれまでの準備に時間をかけたせいで、その時期にしてはレベルが低い勇者一行だったが、それを補って余りある戦果となった。

それに伴い今までは賞罰という名の周回特典で、その場に行けば手に入るレア装備(聖剣、聖杖、聖騎士の盾)という触れ込みだったとはいえ、その地に行くには基本的にレベルが足りず(その地に出現する雑魚モンスターに殺される)、中盤〜後半にかけて手に入れていたが、そのレベル上昇の恩恵で中盤において前述のレア装備三点を全て揃える事ができた。そうすると後半のレベル上げも捗る事になり、最終決戦に臨む勇者一行のレベルはそれまでの最高がレベル55であったのに対して、今回のレベルは一気に65まで上がる事となった。


人族側の精兵十二万以上、勇者一行のレベルは65という今までの周回に比べると圧倒的な戦力を揃えて、最終決戦に臨む事になった勇者一行であった。


「流石にこれはもらっただろう。いやぁ、兵の指揮をとるのをメインに進める事でこんなに強化できるルートがあったとはなぁ、盲点だった。とはいえまぁ、レア装備三点の前提クエストが済んでいるからこそで、今までが無駄だった訳では無いんだが。しかし、こうも今までと違って圧倒的にパワーアップしてしまうと今までのルート選択がミスだったとしか思えなくなってしまうな。ハッハッハ。」


優勢を確信している勇者は饒舌だった。

それはそうだろう。ここ数回の周回は僅差の勝負が多かった。あと少しの差で…という周回は何度もあり、それがここにきて以前と比べて大幅な強化――僅かに足りなかったであろう少しの差を凌駕して余りある強化量――を手にできているのだ。

そしてこれが都合22周回目ともなれば、一周回が約一年のこのゲーム(と半ば勇者は思っている)では、体感でおよそ二十二年経っている計算になる。非常に楽しんでおりその終わりが惜しいと思う気持ちと同時に、そろそろ終わってもいいのではないかという気分にもなってきているのだった。

優勢を確信するうちに今までの周回が走馬灯のように思い出され、感慨深いモードにもなってきている勇者だった。


だがここで勇者は一つの決断を迫られていた。

総兵数は魔王軍の方がまだ多い訳だが、一兵あたりの強さは人族の一般的な兵士の方が魔王軍の一般兵であるゴブリン兵よりだいぶ強いので、もうその差はあって無きが如しだろう。そして今回は物資に余裕もある。

そうなると今までのような強引な短期決戦を挑まずに、じっくり合戦モードから優位を築きにいって、そこからの最終決戦に挑んでも良いのだが、それでもまだ相手の方が総兵数が多い事もまた確かだった。それに敵の総大将がアドラブル(ラスボス)であるため、その指揮能力は非常に高そうだというメタい推測もできたので、結局勇者は短期決戦型の布陣を敷く事にした。


そして12月31日、両軍はエルデネサントの野で激突した。

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