転生少女と卒業試験5
計画通り!
コヨ君とヒノキの棒・双剣がいい仕事をしてくれました。おかげでリムノさんに一撃お見舞いすることができました。
思えば私、キナ戦から敵に攻撃当てたシーンありませんでしたし。
「やったな、リリィ!」
「勝ったかえ?」
「イデシメさん、その発言はダメです!」
「え?」
「あいたたた……」
「!」
やっぱりですか。まだ終わってません。
「しぶといですねリムノさん」
「ええ。伊達にAランクやってないから」
少しふらつきながらも立ち上がったリムノさん。相変わらず笑っています。化け物ですか。
「でも、素手で戦うつもりですか?さっきの一撃であなたの矢は軒並み折れたはずですけど」
「ええその通りよ。もう1本たりとも残ってないわ。この弓はダメね」
「だったら……」
「この弓はね」
「⁉︎」
何でしょう、嫌な予感がします。
「試験ごときでこれを使うつもりは無かったんだけど。」
弓を捨てました。
「あなたたちだから特別に見せてあげるわ、私の全力をね!」
そう言うとリムノさんは左手を前に突き出しました。手の甲が輝いています。
「展開せよ!霊弓ティンダロス!」
彼女の左手の甲に魔法陣が浮かび上がりました。それは光の粒子となって溢れ出しを姿を形成していきました。
そこにあったのは洗練された見た目の白い巨大な弓でした。
「そ、それは……!」
「エルフに伝わる秘宝、霊弓ティンダロス。色々伝説のある代物らしいけど、何故か私が使い手に選ばれちゃったのよね」
「何故かって」
「つべこべ言ってないで構えなさい!気を抜いたら死ぬわよ!」
試験で言うセリフじゃありません!
「ティンダロス 装填
スキル発動 〈立体座標〉」
スキルによって赤と青のオッドアイとなったリムノさんがティンダロスを構えます。まるで矢があるかのように。
「リリィ、あれ!」
「なっ!」
光の粒子が再び集まり、彼女の手からティンダロスに伸びて行きました。まるで矢の形を作るかのように。
「光の……矢?」
「そう。この弓に矢はいらない。私の魔力そのもので矢を作り射る。そういう武器よ」
かっこいいですか!
「それじゃあリリィちゃん、死なないでね」
そして放たれる光の矢。
ヒノキの棒・長剣で防げるか分からない。また逃げの一手ですね。
「〈超音速〉!」
「光魔法 牆璧」
取り敢えず私は逃げ、カール君たちは彼の魔法で防いでもらいます。
これが誤算でした。
「甘いわ」
「何⁉︎」
光の矢が進路を変えて私を追いかけてきたのです。
「くそっ!」
咄嗟に体を捻って回避。辛うじて矢は当たらず、地面に当たると軽く衝撃波を発して消えました。
「追尾って……その弓のスキルですか」
「だいせいかーい!」
私は取り敢えず弓を〈鑑定〉しました。そして現れた情報はこうです。
霊弓ティンダロス
エルフの里に伝わる秘宝。エルフの間で伝承される英雄が使ったと言われている。
使い手の魔力を矢として打ち出す。
魔力を矢として維持できる限り射程は無限。
スキル 巡回商人
持ち主が設定したルートまたは対象までの最適なルートを矢が飛翔する。
後者の方法を使用する場合、対象の正確な位置情報が必要。
やはりチートでした。条件付きでも射程無限とかありえないでしょ!
それにあのスキル。リムノさん自身のスキルと組み合わせたら命中率100 %じゃないですか!未来予知と飛ぶ斬撃並の名コンビですよ!
「さてみんな、必中の攻撃だけど何とかして凌いでね!」
仕方ありません。
「カール君、私が迎撃します!サポートを!イデシメさんとコヨ君、待機!」
「分かった!」
「ええ……」
「クゥン……」
だから仕方ないんですよ。こればっかりは彼にはどうすることもできませんし。
「いくわよ!」
リムノさんのその言葉とともに矢が放たれます。矢は途中で5本に分かれ、3本は私に、残り2本はカール君たちに飛んで行きました。そんなこともできるんですか。
「風魔法 暴風壁」
カール君の魔法が矢の進路に立ち塞がります。ならばこっちも
「雷魔法 磁場生成!」
磁石の持つ力を大気そのものに纏わせる魔法。我が校の創設者である初代学長が発明した魔法だとか。
魔法の発明に学長にギルドマスター、件の人物は何者なんでしょう?
何はともあれこれで矢の退路を塞ぎます。
目論見はやや成功ですね。少し動きが鈍くなりました。でも、
「その程度では……」
止まらない⁉︎くそ、逃げろ!
「ぐああああ!」
「カール君!みんな!」
「安心なさい。多少の怪我なら回復術士が手配されてるから。あの子たちはリタイアね」
多少って……全員手足射抜かれてるんですけど。
そして今、私は3本の矢に狙われてるんですけど?矢が3本揃ったら無敵なんですけど?
「さあさあ、どこまで逃げられるかしら?」
〈超音速〉で逃げてもジリ貧。魔力で作られてるから簡単に壊せない。一体どうすれば……ん、魔力?
私は走るのをやめ、飛んでくる矢と向き合いました。
「あら、降参?」
「どうでしょう?」
〈無限格納〉に手を伸ばしました。あれなら……勝てる!
矢がまさに私を射抜こうとしたそのとき、私はヒノキの棒を構えました。




