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弓月の刻、ダンジョンマスターと出会う

 「ここが、ダンジョンマスターの部屋ですかね?」


 みんなで手を繋いでゲートをくぐり抜けた先は、何処かお城を彷彿させる場所でした。

 僕たちの足元には深紅のカーペットが敷かれ、その先に玉座があったからです。

 

 「お待ちしておりました」


 玉座には人影がありました。

 その人物は立ち上がると、壇上から降り、ゆっくりと僕たちへと歩み寄ってきます。


 「貴方がダンジョンマスターですか?」

 「その通り、私がダンジョンマスターのターディスです」


 僕の質問にターディスさんは笑顔で答えました。

 それにしても、何処かで見た事がある人ですね。

 

 「どうかなさいましたか?」

 「あ、いえ……何処かでお会いしましたか?」

 「初対面かと。ですが、見覚えがあるとしたら……私の兄ではありませんか?」

 「ターディスさんのお兄さん……あっ!」


 その言葉でわかりました!

 ターディスさんの事を何処かで見た事があると思いましたが、兄と言われてピンと来ました!


 「もしかして、ターディス様のお兄さんってノット様だったりしますか?」

 「正解です」


 やっぱりでしたか。

 咄嗟にターディスさんからターディス様に代えて正解でしたね。

 体型や身長は全然違いますが、顔つきがノット様の面影があったのですよね。

 ノット様の顔を凄く優しくした感じといえばいいですかね?

 よく見れば、ノット様に似ているように思えます。

 

 「という事は、僕たちに会いたがった理由というのは……」

 「ご察しの通り、娘のミレディの事についてです」


 ガーゴイルさんがダンジョンマスターは外で起きている事を知っていると言っていましたが、本当みたいですね。

 恐らくですが、僕達がノット様からお願いされた内容も知っているのかもしれません。

 ミレディさんを僕たちの街に移住させてあげて欲しいという内容ですね。


 「ターディス様はどうお考えなのですか?」

 「皆さまがよろしければですが、お願いしたいと考えております」

 「その理由を伺ってもよろしいですか? それと、ミレディさんがあの場所で一人で居る理由も出来る事なら知りたいです」


 ミレディさんを受け入れる事は僕たちにとっても色々と利益があります。

 ですが、利益だけでは決められない事も沢山あるのです。

 ミレディさんの気持ちもそうですし、ミレディさんはこの国にとっての宝といっても過言ではないくらいに才能が溢れています。

 それなのに、そんな人を他国に送り出そうとしているのは気になりますよね。

 もしかしたらミレディさんをガンディアに置いておけない大きな理由があるかもしれませんから。


 「それを説明するのには役者が足りませんね。少しお待ちいただけますか?」

 「はい。僕たちは問題ありませんよ」

 「ありがとうございます……ガー坊」

 「はっ!」


 ガー坊と呼ばれたのは、僕たちを案内してくれたガーゴイルさんでした。

 ガー坊さんはターディス様に頭を下げると、部屋を退出していきます。

 僕たちが入ってきたゲートではなく、玉座の後ろにある扉へと入って行きました。

 

 「では、皆さまはどうぞそちらにおかけください」

 「わかりました……あれっ?」


 ターディス様が掌で示した先にはテーブルと椅子がありました。

 ゲートを潜った時に、部屋を見渡しまたが、その時にはなかったテーブルと椅子がいつのまにか現れていたのです。


 「もしかして、ダンジョンマスターの能力だったりしますか?」

 「その通りです。不思議な力ですよね?」

 「はい。本当に不思議で凄い力だと思います」

 「ですが、安心してください。皆さまには害をなすつもりはありませんから」

 「わかっています。僕たちに何かをするつもりならとっくに何かしていると思いますからね」


 ターディス様の戦闘能力がどれほどかはわかりませんが、僕が感じられないほど自然にテーブルと椅子を用意したくらいですからね。

 それと同じように攻撃する事も可能だと思います。

 まぁ、その時は危険察知が働くと思いますけどね。


 「待たせたのぉ!」


 ターディス様が用意してくれた席に座り、ターディス様と暫く談笑していると、ガー坊さんが入っていた扉が勢いよく開かれました。


 「エン……お客様の前ですよ」

 「ぬ? すまんすまん」


 扉から入ってきたのは女性でした。

 しかし、ただの女性ではないのは一目見てわかりました。

 身長はスノーさんくらいですかね?

 いかにもヤンチャしていましたって感じで、真っ赤な長い髪を垂らしながら僕たちへと近づいてきます。


 「失礼するぞ」

 「エン……」

 「細かい事は気にするな。お主たちもそう思うだろ?」

 「はい。僕たちは気にしないので大丈夫です」

 「だってよ。ター坊が気に過ぎなんだよ」


 というか、そんな事を気にする余裕が一瞬で消えたというのが本音ですね。

 だって、恐らくこの人は……。


 「えっと、エン様はもしかして龍神様ですか?」

 「ん? あぁ、そんな風に呼ばれる事もあるな」


 やっぱりでしたか。

 入ってきた瞬間、部屋の空気が変わったように感じましたが、気のせいではなかったようです。

 水の龍神様と風の龍神様にお会いしましたが、龍神様特有の独特の魔力が一気に広がったのがわかったのです。

 

 「では、改めて紹介します。私に隣に座るガサツな女性はエンと言いまして、皆さまが気づかれた通り、世間では龍神と呼ばれているようです」

 「エンだ。まぁ、世間がどう言っているのかわからないが、そんな大層な存在ではないから気は使うな」

 

 それは無理ですと言いたい所ですが、それをグッと堪え、僕たちも自己紹介をします。


 「僕はユアンです。隣に居るのが……」


 いつもの通り、まずは僕が名乗り、僕が順番にシアさん、スノーさん、キアラちゃん、最後にサンドラちゃんと順番に紹介していきます。

 紹介の順番は一応パーティーに加入した順番にしていますが、特に深い意味はなかったりします。


 「お? お前はあれだな」

 「なー……」


 最後にサンドラちゃんを紹介した時でした。

 エン様が面白いものを見つけたようにジッとサンドラちゃんを見つめました。

 すると、サンドラちゃんは珍しく怯えたように僕へと椅子を寄せ、僕のローブをぎゅっと握りました。


 「そんなに怯えるなって。別に取って食ったりしねぇよ」

 「本当かー?」

 「本当だ。私はそんな小さなことを気にしないからな!」

 「なー……」


 サンドラちゃんが安心したように息を吐きだし、少しだけローブを掴む手が緩みました。


 「もしかして、エン様はわかるのですか?」

 「そりゃな。面識はないが、配下の匂いがプンプンするぜ」


 そこまでわかるのですか。

 サンドラちゃんは僕が持っていた炎龍レッド・ドラゴンの心臓を使い生まれ変わりました。

 エン様はその匂いを感じ取ったみたいです。


 「怒ったりはしないのですか?」

 「別に? あいつが何をしていたのか知らないが、やられたのは自己責任。私はそこまで面倒は見ねぇよ」


 良かったです。

 これが原因でエン様と敵対するような事があったらどうしようかと思いましたが、その心配はないようです。

 もちろん、そうなった場合は全力でサンドラちゃんを守りますけどね。

 まさか、僕とユージンさん達が倒した炎龍レッド・ドラゴンがエン様の配下だとは思いもしませんでしたけどね。

 

 「では、役者も揃ったようですし本題に移らせて頂いてもよろしいですか?」

 「はい。ですが、ミレディさんはいいのですか?」


 本題という事は先ほど話題にもあがったミレディさんの事ですよね?

 でも、肝心の当事者がこの場にはいません。


 「構いません。まずはその辺りから説明しようと思います」


 こうしてダンジョンマスターと炎龍神様という凄い二人との対談が始まりました。

 そして、その二人から語られる内容は驚きの連続でした。

 まさか二人からあのような真実が語られるとは思ってもいなかったのです。

長くなりそうなので分けさせて頂きました。

もう少しでこの章も終わりになりそうですね。

そろそろ次の閑話も考えていかないとですが、よければ誰のエピソードが見たいとか希望があったらお気軽に言ってください。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。


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