表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
508/690

補助魔法使い、ローゼと対談する2

 「それで、どうするつもり?」


 ローゼさんとフルールさんが僕の事をジッと見ています。

 きっと、この答え次第では、ローゼさんとの関係は変わってしまうでしょう。

 ですが、僕は迷わずにローゼさん達に僕の意志を伝えました。


 「ローゼさん。僕はどちらの国も選べません。いえ、選ぶことはしません」


 ローゼさんの目を真っすぐに見つめ、僕はそう返します。

 すると、一瞬ですが、ローゼさんが顔をしかめました。

 この答えは予想していなかったのかもしれませんね。


 「それが貴女の答え? どっちつかずはお互いにいい結果を生まないわよ?」

 「わかっています。だからこそ、僕は選ばないのです。ローゼさんの気持ちを汲み取る事は出来ますが、その気持ちになる事は出来ませんからね」


 僕は忌み子として育ち、それなりに嫌な思いや経験をしてきました。

 その中で、慰めや同情といった言葉を掛けてくれる人もいました。

 ですが、正直それは辛かったです。

 僕の辛い気持ちが他の人にわかるとは思いませんからね。

 みんなと仲良く過ごす事が出来て、いつもみんなと笑っていられるような人が、本当の僕の気持ちをわかる筈がないのです。

 それと同じです。

 僕はローゼさんが辛い体験をしてきた事は知っていますが、どれほどの苦悩や痛みを抱えているのかはわかりません。

 ローゼさんの痛みはローゼさんだけのものですから。

 

 「なので、僕はローゼさんに同情するような形では選べないのです。それこそ、ローゼさんに失礼だと僕は思いますから」

 「ユアンの気持ちは嬉しいわ。だけど、それは貴女の意志。街や国の意志とは違う。貴女がそう決めるのは構わないけど、それで痛みを背負うのは貴女だけではなく、貴女の元に集まった人々なのよ?」

 「そうかもしれませんね。だけど、僕だって譲れない事があります」

 「譲れない事?」

 「はい。僕たちの街は、みんな仲良く、差別のない街を目指しています。ここで、僕がどちらかを選んでしまう事こそが、その意志に反すると思うのです」

 「綺麗ごとね」

 「そうですよ。だけど、それを信じてみんなナナシキへと集まってくれました。僕はそれを裏切る事は出来ません。例え、ここでローゼさんとの関係が終わりを迎えたとしてもです」


 ナナシキが出来てからまだ一年も経っていません。

 他の街や国に比べたら、歴史はないに等しいです。

 ですが、僕たちが、みんなが一つの目標に向かっている事実は消えません。

 綺麗ごとと言われようが、みんなが頑張っているのに、僕がそれを無駄にする事はできないのです。


 「それが、ユアンの答えでいいのね?」

 「はい。これだけは曲げられません」

 「これで、私達の関係が終わるとしても?」

 「はい。僕だって色んなものを背負っていますし、その覚悟はあるつもりです」

 「意外と頑固なのね」

 「みんなからは負けず嫌いとかは言われたりはしますね」

 「知ってる。フルールと模擬戦をして、負けるのが嫌で頑張ったって聞いたからね」

 「当然ですよ。ですが、あれはフルールさんが悪いのですよ。いきなり模擬戦に混ざり始めたですからね」

 「ふふっ、ユアンが負けず嫌いって言われる理由がよくわかるわね」

 「…………そうじゃのぉ。ま、お主からいい答えが聞けてよかったわい」


 フルールさんに視線を一瞬逸らした間に、気づくとローゼさんがいつものおばあさんの姿に戻っていました。

 

 「んー……もしかして、僕の事を試しました?」

 「察しがいいのぉ。その通りじゃよ」

 「やっぱりでしたか……」

 「気付いていたのか?」

 「いえ、全然気づきませんでした」


 ちょっとだけ感情的かなとは思いましたが、ローゼさんからしてみれば、当然の言い分でもありましたからね。


 「でも、どうしてこんな事をしたのですか?」

 「暇つぶし……では、納得いかぬよな?」

 「当然ですよ。流石に度が過ぎてますからね」


 笑える冗談と笑えない冗談の境目ってありますよね。

 僕にとって今回は流石に笑って終われるような話ではありませんでした。

 

 「それはすまんかった。どうしても、確かめておきたい事があってな」

 「確かめておきたい事?」

 「うむ。ユアンが王になる為の素質があるのか、確かめておきたかったのじゃ」

 「何の為にです?」

 「当然ながら、王というのは特別な存在じゃ。誰にでもなれる訳ではない。その事は戦争を経験したお主ならよくわかるじゃろ?」

 「少しだけわかるかもしれません」


 この一年で、王様と接する機会が何回もありました。

 なので、王様というのは本当に偉大な方で凄い方というのは少しだけわかっているつもりです。

 ですが、その中でも残念だなと思う王様もいたのは確かです。

 代表であげるのなら、鼬王がそうですね。


 「じゃから、お主が本当に王となっても大丈夫なのかを知っておきたかったのじゃよ。今の関係は良くとも、今後どうなるかはわからぬからな」


 もし、鼬王のような王様に僕がなった時の事を考えていたみたいですね。

 僕だって、鼬王みたいな人が纏める国とは出来る事ならば深い関りは持ちたくないですしね。

 なので、ローゼさんのやった事は理解できました。


 「そういう意図があったのですね…………それで、ローゼさんから見て、どう思いましたか?」

 「儂からは何も言う事はあるまい。お主は自らの意志を通した。それが答えじゃろう」

 「そんな事でいいのですか?」

 「そんな事と言うが、自分の意志を貫き通すのには覚悟がいる。ハッキリ言って、儂らとの関係が崩れる可能性も十分にあった。しかし、お主はその上で自らの意志を通した。誰にでも出来る事ではないぞ」

 「ローゼの言う通りね。弱い心を持てば、私達にすり寄り、傲慢な心があれば、私達に反発をする。それが人の心。だけど、ユアンはそうはしなかった。正直驚いたわよ」

 

 良かったです。

 どうやら、本当に僕はローゼさん達に認められたみたいです。


 「でも、正直かなり驚きましたよ」

 「うむ。半分は本心じゃったからな」

 「やっぱりそうですか?」

 「当然じゃよ。ユアンから聞いた話が真実だとしても、失った者達は返って来ぬからな」

 

 遥か昔だとはいえ、実際に起きた事には変わりはありませんからね。

 

 「それじゃ、やっぱりこれからもエルフの国の事は恨むのですか?」

 「いや。お主の言葉で気が変わった。今はエルフの王に会ってもいいかなと思っておる」

 「本当ですか?」

 「うむ。いつまでも恨みをもって生きていても先には進めぬからな。じゃから、ユアン。礼を言わせてくれ……儂らにそれを教え、きっかけを与えてくれた事に感謝する」


 ローゼさんとフルールさんが二人そろって僕に頭を下げました。

 僕はそれを見て、慌てて二人に頭をあげるようにお願いしようとしましたが、それをグッと堪え二人に声をかけます。


 「構いませんよ。大事な人達が前に進めることは僕にとっても良い事だと思います。その経験を積ませて頂きまして、こちらこそありがとうございます」

 

 今度は僕が頭を下げました。

 そして、僕は更にこう続けます。


 「それで、これからも僕たちと仲良くしてくれるって事でいいのですよね?」


 ローゼさんが珍しく驚いています。

 しかし、それも一瞬。

 ローゼさんとフルールさんが顔を合わせると、二人ともフッと笑みを浮かべました。


 「当然じゃ。こちらこそ、これからも仲良くしとくれ」

 「これからも貴女達の成長を私達に見せてちょうだい」

 「はい! これからもよろしくお願いします」


 ローゼさんが右手を差し出したので、僕はその手を迷わずに握りました。

 きっと、また一つローゼさん達といい関係が築けた、そんな気がします。

 いえ、それでは駄目です。

 気がするではなくて、そうしなければいけないのです。


 「じゃが、一つだけ言っておく」


 おばあさんとは思えない力でローゼさんが僕の手を握る力を強めました。


 「何ですか?」

 「これからは、お主と儂は対等じゃ。じゃから、お主がもし儂が王と相応しくないと思うのなら、遠慮はするな。儂らと縁を切る事を考えろ。それだけは忠告しておく」

 「大丈夫ですよ。もし、ローゼさん達が間違った道に進もうとするならば、僕は手を差し伸べますし、逆に僕がローゼさん達の事を試させて貰いますからね」

 「甘い奴じゃのぉ」

 「そうですかね?」

 「甘い。そんな事ではいつか誰かに利用されるぞ?」

 「そうかもしれませんね。ですが、大丈夫ですよ。僕は一人じゃありませんから」

 「そうじゃったな。お主らには強い繋がりがあるのじゃったな」

 「はい! もちろんその中にはローゼさん達も含まれていますからね? なので、僕が困らないようにしっかりとお願いしますね!」

 「お主にそんな事を言われる日がくるとはなぁ」

 「若い子の成長には勝てないって事よ」

 「逆におばあちゃんの知恵袋にも勝てませんけどね」


 幾ら成長できたとしても、知識や経験は積み重ねですからね。

 ですが、それは流石に失言だったみたいです。


 「聞き捨てならぬ言葉が聞こえたのぉ? もしかして、私の事を老婆って言ってるのかしら?」


 パリパリと音を立て、おばあさんの姿が崩れていきます。

 

 「あっ、それは言葉の綾ですよ!」

 「あら、そうかしら?」

 「ちょ、ちょっと力が強いですよ!」

 「大丈夫。貴女には防御魔法があるからね」


 確かに防御魔法が張ってあるので痛くはありませんが、その代わりに恐怖があります!

 何か、今にも防御魔法を破って手を握り潰されそうな気がするのです!


 「まぁ、これもいい機会ね。今からみっちりと王とは何かを教えてあげる」

 「い、いえ! それは大丈夫です!」

 「あら、もしかして私じゃ役不足って言いたいのかしら?」

 「そんな事はありませんよ!」

 「ならいいじゃない。ふふっ、大丈夫。夕飯迄には返してあげるから……フルール」

 「うん。とりあえず、ローゼの仕事でも手伝って貰えばいいわね」

 

 そう言って、フルールさんが机の上に置いてあった紙の束を僕とローゼさんの間にどさりとおきました。


 「それじゃ、ユアンが口だけではないって証明を始めるわね?」


 どうしてこうなったのでしょうか?

 この後、僕はローゼさんとフルールさんに捕まり、みっちりと色んなことを叩きこまれました。

 正直、言ってる事がチンプンカンプンで半分も理解できませんでした。

 しかし、一つだけわかった事があります。

 

 「王様になるって、こんなに大変な事なのですね……」

 「当り前よ。毎日が勉強なんだから。それじゃ、次にいくわよ」

 「はい…………」


 その夜、僕は眠れませんでした。

 眠ろうとしても、頭の中で色んな言葉が浮かび上がってきてしまったのです。

 これを毎日スノーさんとキアラちゃんはやっているのですよね……本当に凄いですし、感謝してしないとですね。

 そして、シアさんには凄く心配されましたが、大丈夫と伝えました。

 これが、きっと成長するという事なのですからね。

ユアンとローゼの関係は継続です。

少なくとも、どちらかが悪い方へと向かわない限りはきっと大丈夫だと思います。

本当はもう少し、細かいやりとりで緊迫した状況にしたかったのですが、繋ぐのが難しくて、これが現段階での限界でした。すみません。


そして、次回はまたちょっとした修羅場(?)になる予定でいます。

こればかりは、会話させてみない事にはわからないので、自分も楽しみだったりします。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ