補助魔法使い、ローゼと対談する
「いらっしゃい。待っていたわ」
フルールさんに案内され、僕はローゼさんのお家へとやってきました。
そして、そのままローゼさんといつもお話をする応接室……ではなく、執務室ですかね?
本棚に囲まれたお部屋へと今日は案内されました。
「ごめんね。こんな場所で話をする事になって」
「大丈夫ですよ。むしろ、忙しそうなときにお邪魔してすみません」
「構わないわ。フルールにはユアンが訪れたら来て貰うようにお願いしてあったし、これは私の都合でもあるから」
フルールさんがにこりと笑いました。
しかし、目は笑っていませんね。
それに、こんな事は初めてです。
場所もそうですが、最初からおばあさんではなくて、ローラちゃんの母親であるロール様と同い年くらい……それこそ二十代と言われた信じてしまうくらい若い本来の姿で僕を待っていたのです。
これだけで僕はいつも優しく接してくれるローゼさんではないと理解しました。
「どうしたの? かけていいわよ」
「わかりました。失礼します」
ローゼさんに手で座るように促されソファーに座ると、ローゼさんも机から離れ、僕の向かいに座り、それに付き従うようにフルールさんが冷たい視線で僕を見るようにローゼさんの後ろに立ちました。
どうやらフルールさんもいつものフルールさんではないみたいですね。
僕を案内するまでは普通に見えましたが、もしかしたら演技だったのかもしれません。
「それで、話があるのよね?」
「はい。まずは、ここ最近の出来事から報告しますね」
僕は無事に風の龍神様に会う事が出来て、加護を頂けたことをローゼさん達に報告をしました。
まぁ、義務ではありませんけどね。
それでも、ローゼさん達は水の龍神様と知り合い? なので、その繋がりがあったので。龍神様の件で進展があったら一応報告することになっていたのです。
それを条件にローゼさんの方でも龍神様の情報などを集めてくれるという約束でしたからね。
「なるほど。それはおめでとう」
「ありがとうございます」
「だけど、報告はそれだけじゃないわよね? 大事な部分が抜けていると思うけど、どうかしら?」
やっぱり、その件が本題みたいですね。
僕は敢えてエルフの国の事を伝えずに風の龍神様の事をローゼさんに伝えました。
ちょっとだけ、いつもと様子の違うローゼさんに探りをいれたかったからです。
「そうですね。ですが、それを僕がわざわざいう必要はありますか?」
「ないわね。だけど、私の方も気になるから……それで、貴女はどっちにつくの?」
「どっちとは?」
「トレンティアとクリスティア。貴女はどっちの味方につくつもりと聞いているの?」
ローゼさんの声が低くなりました。
これだけで威圧感が凄いですね。
前までの僕だったら、これだけで取り乱してしまったかもしれません。
ですが、こうなる事は予想をしていました。
この話は避けては通れないと思っていましたからね。
「本当ならば、本人の口から聞いて貰いたかったですけど、仕方ないですね」
正直な所、この話題にならない限りは、僕からナイジェル様の話をローゼさんに伝えるつもりはありませんでした。
僕はあくまでもローゼさんが望むのであれば、二人を引き合わせる為に行動をするつもりでいたのです。
ですが、そうなる前に僕がエルフ国に行った事をローゼさんが知ってしまったみたいなので、それについて聞いてくるのであれば話さない訳にはいきませんね。
この様子ですと、僕の事を少なからず疑っているように見えますので、流石に誤解されたままでは嫌ですからね。
なので、僕はローゼさんとフルールさんにナイジェル様からされた話をそのまま伝えました。
ハーフエルフが追い出される事になった原因と同時に獅子王から侵略を受けていたので、ハーフエルフの援助を出来なかったという事をそのまま伝えたのです。
「なるほどね。だけど、そんな話を簡単には信じられないわよ」
「当然の事だと思います。なので、僕としてはローゼ様とナイジェル様が納得いくまで話合うのが最善かと思いますよ」
ナイジェル様だけ様をつけると、向こうに加担していると思われそうなので、敢えてローゼさんをローゼ様と呼ばせて頂きました。
「その余地はないわね」
ですが、ローゼさんは鼻を鳴らし、僕の提案を直ぐに断りました。
「そうですか。ローゼさんがそう判断するならそれでもいいと思いますよ」
そればかりは、ローゼさんの……ハーフエルフの代表者としての心なので、僕は何も言えません。
決めるのは僕ではなくて、ローゼさんですからね。
僕がどうこう言っても意味のない言葉にしかなりません。
なので、この話に関しては中立の立場でいよう思っています。
「そうね。だけど、貴女達は違うわよね?」
「どういう事ですか?」
「私は今でもエルフ国の人間を許す事は出来ない。同時に、そこと繋がっている国の事は信用は出来ないわ」
「それは、僕たちの事も信用できない、という事ですかね?」
「そうなるわね。また、エルフ国にそそのかされて私達を見捨てる可能性だってあるでしょう?」
「僕はそんなつもりはありませんよ?」
「そう? だけどね、仮に私が鼬王と繋がっていたら、貴女は私の事を信じられるかしら?」
「それは無理ですね」
「それと同じよ。ちなみに、そんな事はないから安心していいわよ」
「わかっていますよ」
鼬王の最後は目の前で見ましたからね。
例え話という事は直ぐにわかりました。
ですが、わかりやすい例えではありますね。
同じ理由で僕たちの事が信頼出来なくなっていると言われたら、僕が信じてくださいと言っても簡単には信じる事は出来ないと思います。
「となると、僕はトレンティアかクリスティア、どちらかを選べという事ですね?」
「そこまで言っていないわよ。ただし、貴女の返答次第では、いずれかはその時がくるかもしれないけどね」
クリスティアを選ぶようならば、僕たちの関係はそこまでと言われているようにしか聞こえないのは僕だけでしょうか?
ですが、そういう事ならこっちだって考えがありますよ?
「ですが、そうなるとローゼさん達も少しだけ困りませんか? ポーションの利益は結構あるのですよね?」
「少しだけね。だけど、ローラがポーションの技術を学んでいるし、時間はかかってもトレンティアでポーションの制作を出来る日は来る。そうなったら、ナナシキと交流を結ぶ理由はなくなるわよ」
しかし、僕の考えは簡単に一蹴されてしまいました。
ですが、悲しいですね。
ローゼさんにとって、ナナシキの価値はそれだけという事ですかね?
僕としては、利益だけではない、もっと親密な関係を築けていると思いましたけど、今の言い方ですと、ローゼさんはそう思っていないとも捉える事ができそうです。
「つまりは、これを見越して、ローラちゃんをナナシキに送り込んだという事ですね?」
「風の龍神様がエルフの国近くに居る事は知っていたからね。もしも、こうなった時の事を考えれば当然のことよ」
まぁ、ローゼさんの出身を考えれば知っていて当然ですね。
しかし、ここまで大きな話になるとは思いませんでしたね。
「それで、どうするつもり?」
考える暇はないみたいですし、その時間を与えるつもりもないみたいで、ローゼさんが急かすように指先でトントンと机を叩いています。
こうなってしまったものは仕方ありませんね。
僕はどちらかの国を選ぶ事を強いられているようですね。
ですが、その答えは最初から決まっています。
その答えを僕は正直にローゼさんにぶつける事にしました。
例え、これからの関係が変わってしまうとしても、伝えなければいけない僕の、僕たちの意志をハッキリとさせておかないといけないと思ったのです。
あまりにも長くなりそうなので分けさせて頂きました。
ちょっとだけ重い話になりそうですが、お許しください。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。




