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弓月の刻、風の龍神と会う

 「この先ですね」


 風の龍神様と思われる反応がある場所へと僕たちはやってきました。

 もう本当に目の前です。

 

 「試練あるのかな……」

 「そればかりはわかりませんよ。僕としては、あの蜘蛛が試練であって欲しいと思いますけどね」


 それほどの出来事できたからね。

 今まで生きてきた人生の中で一番の出来事だったと言っても過言ではありません。

 死ぬかと思った経験は他にもありますが、絶望といった意味ではあれを上回る事はないと思います。


 「ついた?」

 「そうみたいですね」

 

 そして、隊列を組んだ僕たちはついに明るい場所へとたどり着きました。

 陽の光の明るさではなく、ヒカリゴケでしょうか?

 それが眩しいばかりに輝いてる場所へと辿り着いたのです。


 「だけど、誰もいないね」

 「そうですね。ですが、水の龍神様の時もそうでしたが、恐らくは何処かに……」


 反応は間違いなく目の前にあります。

 もしかしたら、もっと地下にいる可能性もありえますが、何となく雰囲気でわかります。

 それに、姿は見えませんが、見られているなという感覚もするのです。

 そして、それは間違いではなかったみたいです。


 「おーおー。水龍の匂いがすると思ったら、珍しいお客が見えたものだ」


 まるで洞窟のようになった空間に風が吹き荒れ、収まると同時に人の姿が現れました。 

 「エルフ族……では、ないですよね?」

 「違う違う。というか、君たちは誰に会いに来たんだい?」


 キアラちゃんと同じような髪の色をした長髪の男性だったので、エルフかと思いましたが、直ぐに否定をされました。

 まぁ、当然ですよね。

 エルフが此処に居てもおかしくはありませんが、エルフは魔物ではありません。

 仮にエルフだったら別の反応があるに決まったいます。


 「という事は、貴方が風の龍神様なのですか?」

 「神ではないけどね。まぁ、風を司る最古の龍を神というのであれば、間違いではないかもしれないな」


 水の龍神様と同じような返事が返ってきました。

 どうやら龍神様は自分の事を神だとは思っていない人? 龍が多いのかもしれませんね。

 

 「それで、こんな所まで何の用だい? 迷ったという訳ではないのだろ?」

 「あ、はい。ですが、その前に一ついいですか?」

 「何かな?」

 「えっと、僕たちに試練を与えたりしないのですか?」

 「何の為にだい?」

 「えっと、そう聞かれると困りますが、水の龍神様の時は試練があったので、そういうものがあるのかなと思いまして」


 一応ですが心構えはしてきましたからね。


 「別にそんなものは必要ないさ。去る者は追わず来る者は拒まずだよ」

 「そうなのですね」

 「納得いっていないのかい?」

 「いえ、そういう訳ではありませんよ。ただ、すんなりと話を聞いて頂けるようなので、驚いただけです」

 「水龍が用心深いだけさ。私は面倒ごとが嫌いでね。いつでも自由気ままさ」


 風の龍神様というだけあるかもしれませんね。

 

 「それで、改めて聞くけど、何の用だい?」

 「はい、僕たちが来た理由ですが……」


 今までの経緯を包み隠さず風の龍神様に話します。

 

 「なるほど、ねぇ。それで水龍の匂いが君たちからした訳だ」

 「はい。なので、出来る事なら僕たちに協力をしてくれませんか?」

 「別に構わないよ。私もまだまだ長生きはしたいからね」

 

 水の龍神様を引き合いに出したのが良かったみたいですね。

 意外な事にすんなりと風の龍神様は首を縦に振ってくれました。


 「それで、水龍はどうしたんだい?」

 「水の龍神様はみぞれさんとサンドラちゃんに加護をくれましたね」

 「なら、私もそれでいいかな。そこの精霊とちびっ子に加護を与えてあげよう。こっちにおいで」


 その言葉に従い、サンドラちゃんとルーくんは風の龍神様の前に出ました。


 「ちょっとびっくりするかもしれないけど、大丈夫だからね」


 そう言うと、風の龍神様は両手をそれぞれサンドラちゃんとルーくんに向けました。

 その瞬間、突風が吹き荒れます。

 しかも、ただの風ではありません。

 物凄く濃い魔力を伴った、暖かい風が僕たちの間を吹き抜けたのです。


 「大丈夫ですか?」

 「問題ない」

 「魔力酔いになる感じはしないかな」


 スノーさんからその言葉が聞けるという事は、スノーさんですら感じ取れる程の魔力だったという事がわかります。


 「よし、これでいいかな?」

 「ありがとうございますー」

 「これで僕もみぞれに引けを取らないよ!」


 二人とも子供みたいな見た目ですが、反応はハッキリとわかれましたね。

 サンドラちゃんは龍人族の巫女という立場もあってか、こういう時はしっかりしていて、口調こそ間延びしていますけど、恭しく頭を下げました。

 それに対しルーくんは自分の力が増幅した事がわかったのか、子供のようにはしゃいで飛び跳ねてます。


 「喜んでもらえたようで良かったよ」

 「はい。本当にありがとうございます」

 「いいや。水龍の頼みでもあるし、私としても危機感はあるからね。君たちにはその分頑張って貰わないと僕が面倒なだけさ」


 美味しい話には裏があると言いますが、完全に僕達任せにするつもりなのですかね?

 まぁ、加護を頂いたからにはしっかりとやることはやるつもりですけど……ね?


 「あれ?」

 「どうしたの?」

 「いえ、何だか周りの様子が……」

 「何かあるの? 私は全然わからないけど」


 スノーさんとシアさんがキョロキョロと辺りを見渡しますが、多分それじゃ気付かないと思います。


 「ユアンさん」

 「キアラちゃんは気づいたのですね」

 「はい。これって……」

 「魔力が、いえ、マナが増幅していますね」


 僕とキアラちゃんは気付けました。

 僕たちが居る場所いるからマナが溢れだすように僕たちを包み始めたのです。


 「あちゃー、やっちゃったかなー」


 そんな中、風の龍神様が申し訳そうな顔をしながら髪をポリポリと掻き始めました。


 「えっと、何が起きたのですか?」

 「んー、さっきあの子達に加護を与えたのはいいのだけど、ちょっとマナが活性化しちゃったみたいだね」

 「という事は、このヒカリゴケは……」

 「そういう事。ここのヒカリゴケはマナを生み出すんだよね」


 そういう事でしたか。


 「でも、問題はありませんよね?」

 「今はね」

 「今は、ですか?」

 「そうそう。昔は大変な事が起きたらしいけど、今は関係ないかな」

 

 それなら大丈夫なのですかね?

 ですが、何が起きたのかは気になりますね。

 なので、僕はその事について尋ねる事にしました。


 「前に一度目を覚ました事があったのだけど、その時に同じようにマナが活性化した事があったんだよね。その時に、エルフの国ではいざこざがあったと風の便りで聞いたくらいさ」

 「エルフの国でいざこざ……もしかして、ハーフエルフの人達が関係していますか?」

 「おーおー。よく知ってるね。その通りだよ」


 という事は、マナが活性化した原因もハーフエルフが追い出されるというか、この地にいられなくなった原因は元を辿れば風の龍神様だった訳ですね。

 ですが、そればかりは仕方ありませんね。

 龍神様が意図してやった訳ではありませんし、あくまで活性化した原因は龍神様にあるかもしれませんが、マナを生み出す植物が育っているのはこの環境ですからね。


 「ちなみにですが、この活性化はいつまで続くのですか?」

 「そんなに長くは続かないでしょ。わからないけど」


 そこは曖昧なのですね。

 

 「それはさておき、そろそろ行こうか」

 「ふぇ?」


 僕は耳を疑いました。

 いえ、用事も済んだので僕たちはそろそろ戻ろうと思っていたので、その提案は不思議ではないのですが、まさかその言葉が……。


 「龍神様も行くのですか?」

 「何か問題でも?」


 まさか、龍神様から提案されるとは思わなかったからです。


 「問題というか、この地を離れてもいいのですか?」

 「逆にこの地に留まる理由があるの?」

 「そう聞かれると困りますが、龍神様にとってこの地は大事な場所だったりしないのですか?」

 「全然? たまたまこの地で眠りについただけだからね」

 「そうなのですね」


 という事で、何故か龍神様がついて来る事になりました。

 流石にダメとは言えませんよね。

 ですが、気になる事が一つあります。


 「えっと、その姿で大丈夫なのですか?」

 「大丈夫だよ。こっちの方が君たちに迷惑はかからないでしょ?」

 「そうですね。その方が助かります」


 一緒に行動する事に対して迷惑という意識は少なからずあるのですかね?

 それなら大人しくして欲しかったですけど。

 ともあれ、こうして無事に龍神様から加護を頂くとが出来たのでひと先ずは目的は達成できましたね。

 ですが、まだまだ問題は解決出来ていません。

 

 「オルフェさんの方は大丈夫ですかね?」


 僕たちはそんな心配をしながら、クリスティアへと戻るのでした。

遅くなりました。

それに加え、風の龍神とのやりとりはあまり考えていなかったので、こうなってしまいました。

まぁ、最初から気まぐれな龍と考えていたのでついてくる予定でしたけどね。

そのせいで、これから面倒な事になるかもしれません。

それはその時に考えます。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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