弓月の刻、洞窟を進む
「本当にこんな所に洞窟があったのですね」
次の日の朝、僕たちは支度を整えた後、シアさんが見つけた洞窟へと向かいました。
「本当に目の前だとはね……」
昨夜泊った場所から歩くこと一分、僕たちはその場所まで行く事が出来ました。
「それでは行きましょうか」
「隊列は?」
「いつもと同じで行きましょう。スノーさんが先頭で、その後ろに僕です」
真ん中にサンドラちゃん、その後ろにキアラちゃん、最後尾にシアさんが続く、サンドラちゃんが加わってから組むようになった隊列で僕たちは洞窟を進む事にしました。
「意外と広いね」
防御魔法を展開しつつ、濡れないように泉を迂回しながら滝を潜ると、見えてきたのは妙に明るい洞窟にスノーさんが驚きの声をあげます。
「洞窟を作るのって大変なのですよね?」
「大変だと思うよ」
「そうですよね」
岩盤を削るのも大変なのに、下手に削っていくと洞窟が崩落する危険もありますからね。
「それにしても綺麗ですね」
「うん。明るくて歩きやすい」
洞窟の中は、人が歩きやすいように舗装されていました。
しかも、僕たち全員が横一列に並んで歩いても問題ないくらいに横幅もあり、高さも三メートル程あり、万が一戦う事になっても問題ない広さがありました。
「この灯りはなんだろうね」
「ヒカリゴケではないですよね?」
明るいのは入口付近だけかと思いましたが、奥に進んでも同じ明るさが続いていました。
外と同じ明るさとまではいきませんが、夜中に灯りの魔法道具を使ったくらいの明るさがあり、スノーさんがその事に疑問を持ったみたいです。
「壁自体が光っているようにも見える」
「龍人族の街と同じ技術かもなー」
そう言われると納得できる部分もあるかもしれませんね。
僕たちが行ったことある龍人族の街は洞窟の先に広がっていました。
そして、その場所はまるで外と同じように太陽が出ていたり、雪が降ったりします。
どういった技術が詰め込まれているのかまでは理解できないので、あの場所と同じ技術が使われているのかはわかりませんが、同じと言われると同じような気もします。
「ユアン、魔物の気配とかはある?」
「今の所はありませんね」
「ユアンが感じ取っていた赤い点は?」
「まだ遠くてわかりませんね」
そもそも、向かっている方向が違いますからね。
この洞窟がこのままずっと真っすぐに進むのであれば、向かっている方角はトレンティアの街の方です。
「外れ?」
「そんな事ないですよ」
「みたいだね。階段が見えてきたよ」
後ろを歩くシアさんからは見えていなかったみたいですが、先を歩く僕たちには階段が見えてきました。
「ここを降りていくの?」
「この先も探るのならそうなりますね」
「なんか不気味なんだけど」
その気持ちがわかります。
妙に明るいせいもあり、階段がずっと続いているのが見えてしまいました。
まぁ、暗いよりはいいですけどね。
「どうする?」
「探るのなら向かいましょう」
「他に選択肢はないと思うの」
「スノーが怖いなら私が先に行く」
「別に怖くないし、だけどシアの影狼で探ってくれるのなら安心かな」
「わかった……先行させる」
「なら、僕が後ろに回りますね」
シアさんが影狼を使って先行して危険がないかを探ってくれるという事なので、僕が最後尾に移動をしました。
理由は簡単です。
影狼を使うと、そちらにも注意を払う必要があるというので、万が一後ろから魔物など敵がやって来たときに、シアさんの反応が遅れてしまうかもしれないからです。
まぁ、その心配は薄いですけどね。
魔物は今の所は感知できませんし、シアさんの影狼は基本的に独立して動けるみたいですから。
それでも、シアさんがそちらに集中すれば、より細かい事まで気付ける可能性があがるので、念には念をということで僕が後ろに来たのです。
「これは……足にくるね」
「サンドラちゃんは大丈夫ですか?」
「まだ平気ー。山を登った時よりは楽だぞー」
「きつかったら言う。抱っこする」
「シア、私が頼んでもいい?」
「スノーは重いからやだ」
「重くないし」
このやり取りも鉄板になってきましたね。
スノーさんも重いと言われる事を気にしなくなったのか、自らシアさんに振っているくらいです。
まぁ、実際にスノーさんは太っていませんしね。
僕たちの中で一番体重が重いかもしれませんが、それは一番背が高くて、胸も一番大きいからだと思います。
一時期は運動不足のせいか体が重そうに見える時はありましたけどね。
「この先、曲がってる」
階段の途中で階段の方向が変わりました。
ここまで進み、初めて方向が変わったのです。
「この方向だと、湖に向かいそうですね」
「という事は、ユアンさんの探知魔法に反応があった場所に向かっているのかな?」
「十分にあり得ますね」
問題はどのくらいの深さがあるかですよね。
「それだけじゃない。この先は大変」
「何がですか?」
「水がいっぱい」
「水がですか?」
「うん。行けばわかる」
シアさんの言う通りでした。
暫く階段を進み続けると階段は終わり、代わりに広がっていたのは池のように広がった水場でした。
「なんか、タンザの地下水路を思い出すね」
「そうですね。水が集まっていた場所がこんな感じでしたね」
「あんまり思い出したくないの……」
あ、タンザの地下はキアラちゃんにとってトラウマでしたね。
ですが、どうしてもあの場所を思い出してしまいます。
「なら、また魔法機械で探ってみる?」
「そうですね。シアさん、お願いします」
「ユアンはやらないの?」
「うー……僕もあの時の事を思い出しそうで嫌です」
僕もあの時の事は一種のトラウマですからね。
魔法機械を動かし、水晶盤を眺めていたらいきなりデビルフィッシュが至近距離で映ったのです。
この池の中には魔物の反応がないとはいえ、もしかしたらいきなり魔物が映ったりしたら、今度こそびっくりして水晶盤を投げ出してしまいそうな気がします。
「なら私がやるー」
「私もやってみたいです!」
「なら、二人に任せましょうか」
そういえば、キアラちゃんも初めてでしたね。
キアラちゃんと出会ったのは、その後でしたからね。
「キアラとサンドラに任せて、私達は他に道がないか探ってみようか」
「そうですね。僕は認識魔法を使ってみます」
空間認識魔法……長いから認識魔法ですね。
僕はフロア全体に風を流し、違和感がないかを確かめます。
「……残念ながらないみたいです」
「ユアンが感じないという事は、ないという事かな?」
「うん。やっぱり水の中を進むしかない」
「そうなりそうですね」
となると、道がどうなっているかは、サンドラちゃんとキアラちゃん頼りになりそうです。
「こうだぞー」
「こんな感じですね?」
そして、その二人は水晶盤を交互に操りながら二人で体を左右に揺らしています。
キアラちゃんもサンドラちゃんと一緒で、操作する魔法機械に合わせて体が動いちゃうタイプみたいですね。
「では、二人が調査している間に僕たちはお昼の準備でもしちゃいましょうか」
「もう?」
「はい。少し早いかもしれませんが、休める時には休んでおいた方がいいと思いますので」
「それがいい。キアラとサンドラが休む時は私が操作する」
「私は?」
「スノーは下手だから大人しくしてる」
「魔力の扱いに慣れてきたから少しは出来ると思うけどなー……」
そうはいいますけど、スノーさんが扱えるのは精霊魔法ですからね。
少し感覚が違うと思います。
まぁ、適材適所ってやつです。
「ユアン、何か手伝う?」
「えっと……こっちも大丈夫ですよ?」
「そっかー……」
スノーさんが昼食の準備を手伝うと申し出てくれましたが、僕は申し訳ないと思いつつもお手伝いをお断りしました。
スノーさんは料理等も苦手ですからね。
まぁ、収納から料理を取り出すだけなので手伝う事がないというのも理由ですが、スノーさんが手を出すと何かが起きてしまいそうな気がしました。
例えば、お皿を料理ごと落としてしまったり……。
「では、順番に昼食をとりましょうか」
その後、僕たちは順番に食事をとりつつ魔法機械で水の中を探りました。
そして、わかった事はこの先に道が続いていて、その先にまた陸地があるという事でした。
方針は決まりましたね。
「それじゃ、進みます。絶対に防御魔法の外には出ないでくださいね?」
「大丈夫なのかな?」
「それしか方法がないから仕方ないと思うの」
「ユアンを信じる」
「水の中を歩くって新鮮だなー」
正確には、水を防御魔法で弾きつつ、その先を歩くですけどね。
ですが、これも問題があります。
まぁ、その問題はその時に考えればいいですかね?
「では行きますよ!」
みんなで手を繋ぎ、僕たちはせーので水の中に飛び込みました。
そして、僕たちはゆっくりと水の中に沈んでいくのでした
洞窟の探索が始まりました。
果たしてその先に待ち受けるのは……?
多くを語るとネタバレしそうなので、今回はこの辺で。
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字報告、ありがとうございます!
本当に助かっています。
今後とも楽しんで頂けたら幸いです。




