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補助魔法使い、呼び出される

 「今日も平和でしたね」

 「そうだなー」

 「なー」


 ようやく訪れた平和に僕達は今日ものんびりとお仕事をして過ごしました。

 改めてこうやって三人で並んでポーションの販売をしたり、街の人の傷を癒したり、お話したりしているとそれが実感できます。

 しかし、それも束の間。

 いつだって問題というのは突如としてやってきます。

 

 「こんにちは」


 僕達が午前のお仕事を終え、昼食を食べようかなと思った時でした。

 チヨリさんのお店に珍しいお客さんがやってきました。


 「こんにちは。珍しいですね」

 「そうですね。こうしてユアンさんの元へと来るのは初めてかもしれませんね」

 

 多分初めてですね。

 僕から赴くことはあっても、逆に僕の元へとやってくるのは初めてかもしれません。

 あ、前に一度だけ僕達の家にお届け物があって訪ねてきた事があるので、それを抜かせばですけどね。


 「それで、どうしたのですか? ミノリさん」


 珍しいお客さんミノリさんは少しだけ、緊張感が漂っているように見えました。

 この様子ですと、僕に用事があるというよりも、僕を呼び出しに来たって感じがします。

 だって、ミノリさんはギルドの受付嬢ですからね。

 そんな方がわざわざ僕の元に訪れるくらいです。

 ギルド関係で何かがあったと思うのが妥当ですよね。


 「ギルドマスターがお呼びです」

 「ギルドマスター……ナノウさんが、ですか?」

 「はい。何やらユアンさんに大事なお話があるとの事です」


 まさかナノウさんから呼び出されるとは思いませんでした。

 どおりでミノリさんは緊張していたのですね。

 ギルドの受付嬢からすると、ギルドマスターは上司にあたりますし、その人には逆らえないと聞きます。

 まぁ、その身分を利用して悪い事をする人も居るので、一概には本当に偉くて凄い人という訳ではないみたいですけどね。

 ですが、ナノウさんは実力だけでその地位まで昇りつめた凄い人らしいので、ミノリさんが緊張するのは仕方ないかもしれません。

 という訳で、僕はまたチヨリさんに午後のお仕事を休む事を伝え、ミノリさんとギルドまで向かいました。


 「何があったのですか?」

 「申し訳ございません。内容までは聞いておりませんので、分かりかねます」

 「そうなのですか……」

 「はい、ただ最近……ギルドマスターが悩んでいる姿をよく見かけるので、あまり良くない内容かも」

 

 それを聞いただけで嫌な予感がしました。

 ナノウさんが悩むくらいです。

 きっと、僕達の知らない所で何かが起きているに違いありません。

 もしかしたら、魔物の氾濫の予兆があったり、凶悪な魔物が出現した可能性だってあります。

 何せ、ギルドマスターは他の場所にあるギルドと連絡がとれるくらいです。

 僕達よりも魔物の情報に詳しい筈ですから。

 そんな会話を交えつつ、僕は久しぶりにギルドにやってくると、そのまま二人で受付先にある階段を登り、ナノウさんが仕事をしている部屋の前までやってきました。


 「ギルドマスター、ユアンさんをお連れしました」

 「入ってくれ……」


 ミノリさんが執務室の扉をノックすると、覇気のない声が返ってきました。

 明らかに僕の知っているナノウさんとは違う反応です。


 「よく来てくれた。まぁ、座ってくれ」

 「はい、失礼します」


 そして、部屋の中を見て、また僕は驚きました。


 「では、私はこれで失礼します」

 「あぁ……」


 ミノリさんが部屋から退出し、執務室には僕とナノウさんだけとなりました。

 

 「えっと、この状況はどうしたのですか?」

 「どうもしない。これが最近のギルドの様子だからな」


 ナノウさんが肩を竦めました。

 

 「そうなのですか?」

 「あぁ、ハッキリ言って、仕事がなさすぎる」


 そうなのです。

 僕が驚いた理由はそこにありました。

 僕の知っているナノウさんはいつも埋もれそうな程の書類に囲まれている姿でした。

 ですが、そのナノウさんの机には書類の山どころか、一枚の紙すらなかったのです。


 「それで、僕を呼んだ理由ですが……」

 

 明らかに異様な状況に、僕は何が起きているのかを尋ねました。

 きっと、ただ事ではない事が起きているのだと思ったからです。

 

 「簡単だ。仕事がなさすぎる。どうにかしてくれないか?」

 「ふぇ?」


 僕は耳を疑いました。

 

 「えっと、仕事がないってどういう事ですか?」

 「そのままだ。この街やこの周辺は平和すぎる。それ故に、ギルドとしてやる事が何もない」

 

 ナノウさんからまさかの答えが返ってきました。

 もしかしたら、重大な事が起きているのかと思ったら、逆に何もなさ過ぎて困っていたみたいです。


 「でも、平和っていい事ですよね?」

 「もちろんだ。しかし、平和すぎても困る事がある」

 「困る事ですか?」

 「あぁ、これだけ仕事が少ないと、この街にギルドを設立しておく意味がないと本部から判断される可能性がある」


 確かにそう思われても仕方ないですよね。

 道具店や飲食店もそうですが、お客さんが来なければお金を稼ぐことが出来ず、お店を維持するのが難しいです。

 どうやらギルドの仕組みもそれに似ているようで、依頼がなければ冒険者に頼む事も出来ませんし、そのやりとりの中で生まれる報酬金の一部を本部へと送る事が出来ないと言います。

 

 「まぁ、金が全てではないけどな」

 「それ以外に何があるのですか?」

 「俺達を遊ばせておくのが勿体ないという理由だ」

 「確かにそうですね。有能な人材ならば仕事をしてもらいたいですよね」


 それが一番の理由になるみたいですね。

 受付嬢もギルドマスターも専門的な知識を持った人材です。

 魔物の特性や仕事の処理能力、お金の計算も出来て、人と上手に会話をする能力も身につけている人達です。

 そんな人を遊ばせておくのはギルドとして損失に繋がります。

 

 「えっと、かなりマズい状況ですか?」

 「そうだな。このままなら確実にこのギルドは潰れる事になるだろう」

 「このままという事は、まだ大丈夫という事ですか?」

 「まだな。だが、遅かれ早かれ、その事について聞かれる日はくるだろう」


 だからその前にどうにかして欲しいと僕に頼んできたのですね。

 ですが、どうして僕に頼んできたのでしょうか?


 「簡単だ。お前は探知魔法が使えるな?」

 「はい。使えますね」


 ナノウさんと初めてお会いしたのはシアさんと出会った村です。

 その時に探知魔法の事を説明したのを覚えていたみたいです。


 「それを使って、魔物の事を調べて貰えないかと思ってな」

 「魔物の事をですか?」

 「そうだ。この街の北側には森と山が続いている。しかし、その割には魔物の数が少なすぎる」

 「その原因を調べて欲しいという事ですね」

 「そうだ」


 んー……そう言われても困りますね。

 理由ならば幾つか思い浮かぶ理由があります。

 その中で一番の理由がラディくん達の率いる魔物軍団が住み着いているからです。

 かといって、その真実を伝えるのもどうかと思います。

 だって、魔物がいないのは魔物が駆除しているからだなんて言えませんよね?

 

 「ちなみにだが、お前たちの召喚獣が森に住んでいる事は知っているぞ」

 「え、そうなのですか?」

 「あぁ。リンシアから聞いている」

 「そうだったのですね」

 「間違って駆除してしまっては困るからな」


 なるほど。

 シアさんが先に手を打っていてくれたという事ですね。

 まぁ、それも考えれば当然ですね。

 この街の至る所に魔鼠さん達は居ますし、コボルトさん達だって警備をしたりしてくれています。

 当たり前のように街に存在していれば、気付かない筈がありません。


 「という事は、それを踏まえたうえで、魔物が居ない原因が他にないかを調べて欲しいという事ですか?」

 「そういう事だ」


 そういう事なら安心して調査をする事ができますね。

 もし、召喚獣の事を知らなかったら、それを伝えるか、別の原因があったと報告しなければいけませんでしたからね。

 

 「わかりました。明日から早速調査をしてみますね」

 「頼んだ。これはギルドからの依頼としておこう」

 「はい、よろしくお願いします」


 そうと決まれば、まずはみんなに相談ですね!

 ですが、問題はスノーさん達が一緒に行けるかですね。

 お仕事の様子を伺ってみない事にはわかりませんからね。

 という訳で、その夜、僕達はみんなが集まった時にナノウさんの話を伝える事にしました。

 久しぶりの冒険者としての依頼を弓月の刻として受けるか、それとも空いているメンバーでやるかを聞いたのです。

 そして、次の日。

 朝から僕達は森と山の調査に出かける事にしました。

 先頭をスノーさん、僕、サンドラちゃん、キアラちゃん、シアさんと隊列を組んで。

久しぶりの冒険者稼業が始まりました。

これから旅に出る為の肩慣らしですね。

果たして、北の森と山には何か秘密があるのでしょうか?

そして、ユアン達の結末は如何に!?(と意味もなく前振りっぽくしてますが、大して意味はないです



いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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