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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第7章 龍人族のダンジョン編
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弓月の刻、ダンジョンから戻る

 「嘘、ですよね……?」

 「こんな事って……」

 「私達は何の為に……」

 「ショック……」


 目の前の惨劇を目に、僕たちは思わず立ち尽くしました。

 たった数分前、僕たちはタートルクラブという魔物に遭遇し、お互い食うか食われるかの戦いとなったのです。

 タートルクラブはCランクの魔物で、堅い甲殻に身を包み、危なくなれば鋏だけを体の外に残し、肉質の柔らかい部分は固い甲殻に隠してしまう、面倒な魔物です。

 そして、重量も重く、獣人の男性でも簡単にはひっくり返せないほどの重量もあり、そこから繰り出される突進は軽く木々をなぎ倒すほどの威力があります。

 そして、何よりも厄介なのはその移動方法です。

 甲羅の隙間から水を噴出し、その水の勢いを利用し、移動しつつ、重量を活かした突進攻撃を繰り広げてくるのです。

 しかし、僕たちも負けてはいません。

 Bランク冒険者としての意地と誇りが多分あります。

 何よりも目の前に高級な食材がいるのです。絶対に負けられない戦いだとみんなが自覚をしていました。

 そして、僕たちはかつてない連携を見せたのです。

 水を噴出しながら高速で突進してきたクラブタートルをスノーさんが新たな防具、お鍋のフタでクラブタートル突進をいなしつつ、それと同時にクラブタートルを魔法道具マジックアイテムの効果を利用しつつ吹き飛ばし、クラブタートルを仰向けに転倒させました。

 クラブタートルが仰向けにひっくり返ったと同時に、シアさんとキアラちゃんも動きます。

 まずは、シアさんが仰向けになったクラブタートルの甲羅を右の剣で切り裂き、左の剣で切り裂かれた甲羅を剥すと、肉が露わになった場所にキアラちゃんの狙いすました弓が突き刺さります。

 クラブタートルが苦し気な悲鳴をあげ、突進の時に隠れていた顔を現しました。

 そこに、隙を狙っていたスノーさんが距離をつめ、すかさずクラブタートルの首を狙い……僕たちの戦いは終わりを告げました。

 僕も勿論働きましたよ?

 クラブタートルの突進が来るとわかった時、スノーさんの魔力を増幅させる妖精の風をかけ、シアさんには付与魔法エンチャウント【斬】、キアラちゃんには【貫】をあげ、単純な火力をあげましたよ。

 勝負はまさに一瞬、僕たちの圧勝で終わりました。

 ですが、事件はここから始まりました。

 それはクラブタートルの討伐を確認し、お待ちかねの素材の剥ぎ取りを行おうとした時の事……。

 突如、クラブタートルの身体が崩壊し始め、僕たちの食材が……魔石へと変わってしまったのです。


 「嘘、ですよね……?」

 「こんな事って……」

 「私達は何の為に……」

 「ショック……」


 全員が全員、その光景を悲壮な目で眺めていました。

 だって、高級食材であるカニと同じ味がするのですよ!

 凄く美味しいって聞きますし、一度でいいから食べてみたいじゃないですか!

 高級食材は高いので、中々手を出す事は出来ませんし、例えお金を持っていたとしても、優先的に王族に回されるらしいので、市場にも出回らないと聞きます。

 そんな食べ物を楽しみに僕たちは力を合わせたのに、その報酬が魔石……。

 流石に魔石は食べられません。


 「はぁ……完全に忘れていましたね」

 「うん。ゴブリンも魔石になった」

 「少し考えればわかりそうなものなのにね」

 「誰も気付かないって、知らないうちに疲れてたのかも」


 そうですね。

 休憩こそ挟みましたが、迷宮を抜けて僕たちはそのまま進んできました。

 肉体的な疲労こそ少ないものの、知らないうちに精神的な疲労が溜まり、思考能力が低下していたのかもしれませんね。


 「幸いにも、このフロアにはまだ入ったばかりです。ここは一度戻り、しっかりと休みましょうか」


 僕の言葉に反対する人はいませんでした。

 来た道を戻り、僕たちはセーフエリアに着き、話合いの末に一度街に戻る事に決めました。

 勢いだけではダンジョンは踏破出来ない事をこの時、僕たちは実感したのです。

 

 「課題は見つかりましたし、最初にしては上出来でしたね」

 「そうだね。シノさんの話だと次回はセーフエリアからいけるみたいだし」

 「それは便利ですけど、どういう仕組みなんだろうね? 他のダンジョンだと色んな人が挑んでいるんだよね」

 「そう言われるとそうですね」


 ダンジョンに挑む人はセーフエリアを目指す事になり、自然と休憩する人でいっぱいになりそうなものです。

 そんな場所にいきなり転移魔法で移動してくる人がいたら、きっと騒ぎになりますよね。

 僕たちの挑むダンジョンは人が居ませんので大丈夫ですけど、有名なダンジョンですとどうなっているのでしょうか?

 シノさんにその辺も詳しく聞いてみる必要がありますね。他のダンジョンにいつか挑む事もあるかもしれませんからね。


 「なんだか、久しぶりの我が家ですね」

 「といってもたった数日だけどね」

 

 そう思うのは、何だかんだダンジョンの攻略が充実していたからかもしれませんね。

 地下室から二階に上がり、僕たちは本館へと戻りました。


 「おかえりなさいませ、主様」

 「うん。ただいま、いつもありがとうね」


 二階に上がり、僕たちの部屋がある通路でキティさんが出迎えてくれました。

 玄関ではなく、ここで出迎えられるのは変な感じがしますが、キティさんは執事としての役割を全うしようとしてくれているだけですので、慣れないとですね。


 「私達が居ない間、何か問題はなかった?」

 「はい、大きな問題は特にはございません」

 「大きな問題は、ですか?」


 その言い方ですと、小さな問題はあったという事でしょうか?

 

 「シノ様より、お荷物を預かっております」

 「荷物ですか?」


 シノさんにはダンジョンニ挑む事を伝えてあるので、僕たちが居ない事は知っている筈です。

 それなのに荷物をわざわざ預けるとはどういう事でしょうか?


 「詳しくはリコさんとジーアさんが管理しておりますので、そちらでお聞きください」

 「うん、わかった。キティありがとう」

 

 荷物はどうやらリコさん達が預かってくれいるみたいなので、早速ですが別館に居るリコさん達の元に向かう事になりました。


 「お、ユアンちゃん達戻ったんだねぇ」

 「おかえりなさい」

 「はい、ただいまです」


 リコさんとジーアちゃんは仕事も一段落したのか部屋で休んでいました。

 僕たちがいないので、僕たちの食事の準備もする必要がないので、時刻も夕刻という事もあり、ゆっくりしていたみたいですね。


 「それじゃ、ユアンちゃん達が戻った事だし、仕事するね~」

 「直ぐにご夕食の準備をしますね」

 「休んでいる所をすみません」

 「いいよいいよ~。私達は住まわせて貰ってる立場だからね」


 そうは言ってくれますが、実質ただ働きで僕たちの為に色々してくれてますので、頭があがらないですよね。


 「あ、そういえば、シノさんから荷物を預かってるよ」

 「はい、キティさんに聞きました」

 「そうでしたか。中身は私達も知りませんので一緒に見に行きますか?」

 「そうですね。先に確認しといた方がいいと思います」


 お礼を言うにも、中身を見ない事には始まりませんので、僕たちはリコさん達と共に受け取った荷物がある場所に向かいました。


 「うー……寒いです」

 「冷凍庫だからねぇ」


 そして、案内された場所は何故か冷凍庫でした。


 「けど、どうして冷凍庫なのですか?」

 「なんか、新鮮で腐りやすいものみたいだからここに置いといてって言われてさ」


 新鮮で腐りやすいもの?

 どうやらシノさんが置いていったのは食べ物みたいですね。


 「これです」

 「思ったよりも小さいですね」


 シノさんの事ですので、大量の荷物を置いていったかと思いましたが、僕でも持てるくらいの量の包みが置いてありました。

 それでも、食材と考えれば、結構な量ですけどね。


 「では、開けてみますね」

 「なんだろうね」

 「新鮮なものってお魚かな?」

 「美味しいのだと嬉しい」


 みんな届いた荷物に興味津々で、僕の後ろから覗いています。


 「えっと……これって!」

 「カニ!」

 「カニだ!」

 「カニだね!」

 

 真っ赤な甲羅を身に纏い、長い手足と特徴的な鋏を持った生物が、ゆっくりと動いていました。


 「なるほど……生きているから荷物として置いていってくれたのですね」

 

 収納魔法は生きている生物は収納できませんからね。


 「へぇ……これカニって言うんだねぇ。何か、蜘蛛みたい」

 「なんか、不気味ですね」


 二人はカニを見るのは初めてみたいで、あまりいい印象は持っていないみたいですね。


 「高級食材で、王族でも滅多に手に入らない食材なんですよ」

 「へぇ……どれくらい高いのかな?」

 「どれくらいでしょう……」


 高いとは聞きますが、どれだけ高いのかは想像がつきません。

 けど、寒い時期に荒れる海に船を出し、命懸けで漁をしないと獲る事が出来ないと聞きましたし、かなりの値段がしてもおかしくはありませんよね。

 何せ、カニ漁で命を落とす人は毎年少なくないみたいですし。


 「で、これはどうやって調理すればいいのかな?」

 「えっと、茹でればいいって聞きましたよ?」

 「だけど、失敗したら台無しだよね」

 「折角の高級食材を無駄にはしたくないかな」

 

 そうですね……。

 これは大切に大切に……。

 あ、でもまだ生きていますし、新鮮なうちに食べないと勿体ない気がしてきました!

 でも、その時は僕の収納にしまっておけば鮮度は落ちませんし……だけど、収納にしまうと食べる機会を失ってしまいそうですし……。


 「ユアン、涎垂れそうな顔してる」

 「ふぇ? そんな事ないですよ!」

 「まぁ、美味しいって聞いたら仕方ないよね」

 「うん……正直、食べてみたいかも」


 ほら、みんな僕と同じようにカニを凝視しているじゃないですか!

 

 「では、私がルリちゃんに食べ方を聞いてみましょうか?」

 「いいのですか?」

 「はい。折角ですので、美味しく食べないと勿体ないですから」

 「なら、私はお風呂を沸かしてくるよ。夕食が出来るまで、ゆっくりしててね~」

 

 ジーアさんはルリちゃんの元に、リコさんがお風呂を沸かしに向かってくれました。

 ご近所付き合いという事もあり、ルリちゃんとリコさん達の仲も深まっているみたいで、何よりですね。

 

 「楽しみですね」

 「うん。食べれなかったものが食べれるのは嬉しい」

 「しかも、カニみたいな味、じゃなくて本物だしね」

 「どんな味がするんだろうね」


 わくわくしますよね!

 美味しいかどうかは人それぞれかもしれませんが、滅多に……場合によっては一生に一度しか食べれないようなものを食べれるというのは貴重な体験です!

 その後、お風呂を沸かして貰い、ルリちゃんから調理方法を教わったジーアさんが調理をしている間に僕たちはお風呂に浸からせて頂きました。

 その間も話題はカニの話題ばかりで、本当にみんな楽しみみたいですね。

 これはシノさんにお礼をしっかりと伝えなければいけませんね。

 シノさんは時々意地悪ですけど、基本的にはすごく良くしてくれます。

 僕たちはいつも貰ってばかりなので、お返しをしなければいけませんね。

 何か喜んで頂けることがあればいいのですが……シノさんが喜ぶことって何でしょうか?

 それは後で考えるとして……今は、カニです!

 僕たちは体を温め、茹で上がる前にお風呂を出ました。

 いつもならみんなもっとゆっくり浸かるのに、今日はいつもよりも早く上がりました。

 それだけみんな楽しみにしているみたいですね!

カニの話で盛り上がるつもりはなかったのですが、何故かこんな事に……。

最近、動画でベーリング海のカニ漁の動画ばかりみていた影響が出てしまったみたいです。

意外とサバイバルとかそういう動画って面白いですよね。

ちなみにですが、自分はカニが苦手です。カニ風味でも苦手です。

昔は食べれたんだけどなぁ……。


一旦、話はダンジョンから外れます。それには理由が……?


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ちょいちょい思うけどシノって限りなくただのいいお兄ちゃんなんだよなぁ。
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