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補助魔法使い、イルミナさんを案内する

 「商業ギルドね……」

 「何か問題でもあるのですか?」


 シアさんとタンザの街を堪能し、夜は僕たちの家で休む事にしました。

 イルミナさんの提案でイルミナさんの経営する宿屋に泊まっても良かったのですが、報告は早い方がいいという事で帰宅した感じですね。

 そして、夕食の時に時間の取れたスノーさん達と一緒にお食事をし、今日の報告をしています。

 ちなみにですが、転移魔法陣はイルミナさんのお店の奥にある倉庫に設置させて頂きました。

 明日は朝から、イルミナさんを迎えに行く予定です。

 そして、商業ギルドの件を報告すると、スノーさんは何故か渋い顔をしました。

 

 「んー……。商業ギルドはあまりいい噂を聞かない事もあるからね」

 「そうなのですか?」

 「うん、その街によってかもしれないけど、有権者に取り入って、街の税を引き上げさせたりして利益を得たりしているみたいだからね」

 「えっと、そんな事許されるのですか?」

 「許されるかどうかはわからないけど、領主が税を引き上げると決めれば、それで決まるからね。まぁ、私はそんな事をするつもりはないけど、そうやってすり寄られたら面倒だなって」


 確かにそうですね。

 ただでさえスノーさんは忙しい身です。

 そんな中で別の問題が起きたら、そっちにまで手をつけなきゃいけなくなりますね。


 「という事は保留ですか?」

 「いや、どちらにしても街を発展させたいのなら必要だと思う」

 「だけど、私達だけでは決めれないし、商業ギルドの人を呼ぶことは出来ないから、アカネさんに相談だね」

 

 一応前向きには検討をしているみたいですね。

 けど、そんな噂を聞くと不安になりますね。

 もちろん、全ての商業ギルドの人がそういう事をする訳ではないみたいですので、その辺りは運頼みになりそうです。


 「冒険者ギルドはどうする?」

 「あぁ、そっちは大丈夫かな。今度、職員の人が見に来るみたいだし」

 「早いですね」

 「まぁね。冒険者がいれば、何かあった時に助かるからね。トレンティアの時みたく」


 トレンティアで襲撃があった時、冒険者の一団が迎撃に参加してくれました。

 僕たちが騎士団と一緒に戦っている間、冒険者が反対側を守ってくれていましたね。

 そのお陰もあって、魔物の撃退は無事に成功しましたし、冒険者が居てくれるのはありがたいですね。


 「治安はどうする? 確実に悪くなる」

 「その辺りはアリア様に相談したら、都の兵士を一時的に貸してくれることになったよ」

 「期限付きですけど、もしこっちの街が気にいって移住を希望したら引き受けれるなら引き受けてもいいみたいだね」


 兵士は無償で貸し出しをしてくれるみたいですね。

 その代わりに住む場所と食べ物はこちらで用意する事になるみたいですけどね。


 「僕たちが知らない所で、街が街らしくなっていきますね」

 「まぁね。だけど、本格的に動き出すのは早くても冬が終わってからだけどね」


 現段階で移住者が来ても、仕事はあまりありませんし、お金を使って物を購入したりとかも出来ません。

 そう考えると、物々交換が主なので、移住者は大変そうですね。


 「そういえば、街の名前は決まったのですか?」

 「まだだよ? 案は幾つか出ているのだけどね」

 「どんな名前ですか?」

 「それは秘密だよ。近々、街の人も含めてアンケートをとるつもりでいるからね」

 「みんなが気に入った名前なら、納得もいくだろうしね。もしかしたら、ユアンの名前が入るかもしれないし、案を出すのなら今のうちだからね?」

 「う……考えておきますね」


 街の名前ですかー……。先日も同じ話がありましたけど、正直全然思い浮かびません。

 だけど、変な名前……それこそ僕に関係するような名前になったら嫌ですからね。

 僕も何か考えた方が良さそうです。


 「とりあえず、明日はイルミナさんの事をよろしくね」

 「はい。転移魔法陣を使うので家の中を通る事になりますが、承知しておいてくださいね」


 といっても、見られて困る事はありませんし、イルミナさんが来る頃にはスノーさん達はお仕事に行っている筈ですので問題はないと思いますけどね。

 



 そして、次の日。

 予定通り、イルミナさんをお迎えに行き、シアさんと一緒に街の中を案内しています。

 街の案内と言っても、農業区域の方ではない方の区域です。

 あ、ちなみに僕たちのお家の事はイルミナさんは触れてきませんでした。

 全然驚いていないのですよね。逆にその事にびっくりしました!

 僕だったら、あんな家に案内されたら委縮しちゃいますけどね。

 きっと、商売の関係上で高級な魔法道具を貴族の方に販売したりしてたりもするみたいなので、慣れているのかもしれませんね。


 「いい街ね」

 「そうですか?」

 「えぇ。タンザほど大きな街ではないけど、闇がない。これはとても大事な事ね」

 「闇ですか?」

 「わかりにくかったからしら? 要は、悪人が根城にするような場所が見当たらないって事よ。あの街は広いのはいいけど、場所によっては治安が悪い場所もあったからね」


 そういえば、あの太った領主と繋がっていた組織や協力していた情報屋などが居ると言っていましたね。


 「まぁ、今は人がいないからそう思えるだけかもしれないから、今後の領主様の手腕次第ね」

 「スノーさんには頑張って貰わないとですね」


 もちろん治安を守るために僕たちもやれることはやります。

 スノーさん一人に押し付けるつもりはありませんからね。


 「オーナ~。ここなんてどうですか~?」

 「場所は悪くないわね。ユアンちゃん、この建物の中を見ていいかしら?」

 「はい! スノーさんに許可を頂いていますので、自由に見てくださいね」


 領主の館から北にはメイン通りと呼べるような大きな道があります。

 スノーさん達はこの通りが商業区として展開される予想を立てている場所ですね。

 そして、今はそのメイン通りにある全ての建物は空いています。

 自分の好きなお店を選びたい放題という訳です。

 

 「ララ、この建物の部屋を全て数えておいて。それと部屋の大きさ、商品を置いて置ける場所があるかどうかも」

 「わかりました~」

 「私は他の店舗を確認してくるわね」


 最初の候補となった建物をララさんに任せ、僕たちは他の建物に向かう事になりました。

 

 「ユアンちゃん、次はこっちを見たいけどいいからしら?」

 「はい……だけど、この建物は大きいですよ?」

 「えぇ、展開するとしたら魔法道具マジックアイテム店だけじゃなくて宿屋もやりたいからね」


 しかも、宿屋を経営するのも一店舗だけでなく、最低でも三店舗展開するつもりでいるようですね。

 

 「そんなに必要ですか?」

 「当たり前じゃない。たった一店舗だけだと、客層に対応できないじゃない。ライバルがいないのならお客を独占できる……これは大きな収入に繋がるわよ」


 他の宿屋が参入しにくい状況を作り上げるつもりみたいですね。

 この街の宿屋といえばイルミナさんの宿屋。

 一番最初からあり、訪れた人が使っていた実績をいまのうちに作っておくつもりのようです。

 

 「けど、僕達が話を持ち掛けておいて言うのも変なのですが……資金は大丈夫なのですか?」

 「えぇ、問題ないわ。いずれは他の街にも店舗を構えるつもりでいたし、その為の準備は出来ているからね」


 スノーさんから伝えておいて欲しいと言われた事の一つに、建物の値段があります。

 といっても、この建物が幾らで、とかそういう話ではなくて、賃貸として貸出する方法と、建物の販売する方法があるという事です。

 その辺りは難しいので、僕にはわかりませんがそれぞれ利点があるみたいですね。


 「ちなみにですが、イルミナさんはどうするのですか?」

 「勿論ここで経営をするのならば買うわよ? もし、宿屋として使えなくても改装すれば別の使い道があるからね」

 「す、すごいですね……」


 最低でも四店舗ですよ!

 しかも、宿屋の大きさともなれば普通のお家を買うよりも遥かにお金がかかります!

 最低でも僕たちの財産であるパーティー資金の数十倍は掛かってもおかしくはありません。

 

 「イル姉はお金を稼ぐのは上手い」

 「あら? お金を稼ぐのはあくまでオマケのつもりだけど?」

 「オマケ……ですか……」

 「えぇ、私は私を慕ってくれる可愛い娘たちと仲良く暮らせれば十分なのよね」


 えっと、ララさんが言うには手籠めにした人達の事ですよね?


 「けど、従業員は足りるのですか?」

 「平気よ。そろそろ私が経営をしている孤児院の子達が仕事を求めている頃だからね」


 へぇ……イルミナさんは孤児院までやっていたのですね。


 「もちろん他に仕事の宛があるのであればそちらを優先して貰うけどね」


 それでも常に従業員を確保できる手段を用いているのは凄いですね。


 「でも、孤児院ですか……」

 「どうしたの?」

 「いえ、ずっと院長先生や子供達に会っていないなと思いまして」

 「淋しいの?」

 「淋しくは……ないとは言えませんが、もっと何かしてあげれないかなと思いまして」


 まぁ、シノさんが裏から支援してくださったので、孤児院の中では食べ物にも恵まれ裕福とまではいきませんが、安定しているので心配はありませんけどね。


 「なら、ユアンも経営していずれ呼べばいい」

 「僕がですか?」


 僕が院長先生に……全く想像はできませんね。

 だけど。


 「困っている子たちが居るのであれば、してあげたいと思います」

 「うん。幸いにもスノーが領主。融通はしてくれる」

 「その場合は私も投資させて貰うから安心してね」

 「その機会があれば、ですけどね」


 そうなると、僕は孤児院から離れられなくなっちゃいますからね。

 子供達の面倒を見てあげるのは凄く大変です。僕も院長先生の手伝いをしていましたが、凄く大変でしたので手を離せなくなるのはよくわかります。

 そうなると、冒険者家業はとてもじゃないですがやっていけないと思います。

 あ、でもイルミナさんは孤児院をやっているのに、普段は違う仕事をしていますね。

 その方法なら僕にも出来るかもしれません。

 まぁ、それもお金をちゃんと稼ぐ方法があって、孤児院を支援できる能力があってこそかもしれませんけどね。


 「流石に、今日一日で決めるのは無理ね」

 「色々見ましたが、お店の候補となりそうな場所はありますからね」


 住居となる場所も含めれば建物の数は軽く百軒を越えていますからね。

 しかも領主の館から伸びた大通りだけでです。それ以外を含めればもっと……。

 

 「ユアンちゃん、暫くの間だけどこの街に通わせて貰ってもいいかしら?」

 「はい! 折角なのでいい場所を見つけて貰えた方がいいですからね」

 「助かるわ。それとだけど、領主様にお会いしたいのだけど、そっちもお願いできる?」

 「大丈夫だと思いますよ」

 「ふふっ、頼りにしてるわね」


 えへへっ、イルミナさんがこの街にお店を構えてくれたのなら、僕もこの街に少しは貢献できたことになりますよね!

 きっと、これからこの街も少しずつ賑やかになっていくかもしれません!

 そうすれば、他の街に行かなくても買い物が出来るようになったりできますよね?

 

 「それじゃ、午後からは大事な仕事があるから失礼するわね」

 「はい! また明日、同じ時間くらいにお迎えに行きますね」

 「よろしく頼むわね」


 イルミナさんを転移魔法陣でお見送り、お店の案内は無事に終わりました。

 明日はシアさんが警邏と共にイルミナさん達を案内してくれるそうなので、僕は明日からはまた仕事に戻れそうですね。


 「では、シアさん僕は午後からお仕事をしてきますね」

 「うん。私はスノーに報告しておく」

 「はい! 夜には詳しい話を踏まえてしたいので帰ってこれる様に伝えておいてくださいね」

 「任せる」


 名残惜しいですが、お仕事があるのでシアさんにぎゅっとして貰ってから僕はチヨリさんの所に向かいました。

 お仕事に街が発展する為のお手伝い。

 少し忙しいですが、それでも凄く充実している気がします。

 そこに時々でいいので冒険者としての仕事が混ざってきたらと思ったりもしますが、北の森に時々魔物が出没するくらいなので平和なので仕方ありませんよね。

 




 それから暫くして、僕たちのこの生活が一変するとはこの時は全く思いもしていませんでしたけどね。

中途半端ですが、そろそろこの章も終わりになります。

開拓編と言いながらほとんど開拓できずに申し訳ありません。

発展していく所はそれほど面白くないかもしれないので、割愛しようか悩んでいます。


そして、次章からは再び冒険者としての活動も増えると思います。

例のダンジョンに潜る事になりますからね! 

それと別の事件も重なり半々となる予定です。

予定は未定で丸々一章にならないように気をつけますけどね。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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