弓月の刻、城を離れる
前日は短くて申し訳ありませんでした。
眠気に勝てずに、ダウンしました。
引き続き、よろしくお願いします。
「し、シアさん! その……おはようございます!」
「う、うん! おはよう……」
ベッドに僕たちは正座し、お互いの顔が見れないまま俯き、僕たちは挨拶を交わします。
うー……なんか、照れ臭いです!
一緒に寝て、起きただけなのにですよ?
こんな事いつもやっている筈なのに……。
「その……」
「よく眠れましたか?」
「よく眠れた?」
「「あ……」」
同じような言葉が重なり、僕たちは顔を見合わせます。
いつでもお互いに触れられる、近い距離に顔が熱くなるのがわかります。
シアさんも珍しく、頬を紅く染めていますし……。
それが恥ずかしく、また僕は顔を伏せます。
気まずい訳ではありませんが、緊張します。昨日の謁見よりもよっぽど緊張している気がします。
うー……なんでしょう、この気持ち。
ドキドキして息苦しくなります!
「ユアン……」
「は、はい!」
声を掛けられ、顔をあげるとシアさんの顔が直ぐ近くにありました!
シアさんの綺麗な金色の潤んだ瞳に吸い込まれるように見つめてしまいます。
「……っ!」
呼吸が止まりそうでした。
そして、シアさんは何故か目を瞑り……。
「おはよー…………もしかして、邪魔しちゃった?」
「わっ!」
驚きのあまり、僕はベッドの上で座ったまま飛び跳ねました!
「お、おはようございます!」
「おはよ。スノー恨むから」
「悪かったって、それより元気が出たようで良かったよ。ユアンに任せて正解だったみたいね」
シアさんはすっかり、かはわかりませんが、元気が出た事には間違いなさそうですね。
それにしても……さっきのは何だったのでしょうか、まるで恋人のような……。
「ユアン?」
「ふぁい!?」
「どうしたの、顔、真っ赤だけど」
「なんでもありません!」
スノーさんがにやにやとしながら僕の顔を伺ってきます。
何か言いたそうですけど……むー!
「それよりも、今日はどうするのですか? それにキアラちゃんは?」
「キアラはまだ部屋で寝ているよ。結構疲れていた……疲れさせちゃったみたいだからね」
「そうですか。キアラちゃんも疲れているようですし、今日はゆっくりですね」
「そうだね。それじゃ、何かあったら呼ぶよ。ふふっ、続きを楽しんでね?」
そう言って、スノーさんは部屋を退出していきました。
一体に何しに来たのでしょうか?
「という事ですが……」
「うん」
スノーさんの登場のお陰か、ドキドキした気持ちがすっかり落ち着きましたね。
「どうします?」
「続き?」
「えっと、何のでしょうか?」
そういえば、シアさんさっき何をしようとしてたんでしょう?……僕たちの雰囲気はまるで……恋人のような……。
い、いけません!
さっきの事を思い出すと、またドキドキしてしまいそうです!
「それよりも、まずはご飯です! それで、その後は、アリア様に僕たちは何をしていればいいのか尋ねましょう……ね?」
「うん。ユアンがそうしたいならそうする」
ちょっと、耳がシュンとなっています。
シアさんは違う事をしたかったのかもしれません。
そして、僕たちは、スノーさんとキアラちゃんを誘い、アリア様の元へ訪ねたのですが……。
「予定のない者を女王陛下に会わせる訳には行きませんので、どうかお引き取りを」
門前払いでした。
いえ、既にお城の中なので門前ではないのですが、アリア様にお会いする事は叶わないようです。
「うーん……どうしましょうか?」
「仕方ないかな。大人しく部屋で待とう」
「それしかないですね」
「うん。ユアン、部屋での監視は?」
「昨日の夜から外れていますよ」
どうやら謁見の前に僕たちの行動を見たかっただけなのか、探知魔法が使われている様子はありません。
「信頼された、って事かな?」
「そうだといいですね」
アリア様との謁見は手ごたえはありました。
まぁ、手ごたえというよりも、黒天狐様の娘と認識され、可愛がられたと言った感じですけどね。
だとしても、こうやってある程度であれば行動も許されたみたいです。
まぁ、お城の中枢部分から遠く離れた場所にある部屋なので、お城の情報、国の国家機密となるような情報は何一つ得られませんけど。
「もしかして、暇つぶしに釣りをしに行けたりできます?」
「そうだったら嬉しい」
そこはわかりません。
急な呼び出しを受ける可能性もありますし、それがなさそうなら良いですが、いつそうなるかは僕には予想できませんからね。
「お帰りなさいませ。皇子アンリ様より伝言を預かっております」
アリア様にお会いする事が出来なかったので、僕たちは宛がわれた部屋へと戻ってくると、僕たちの部屋の前でメイドさんが待っていました。
金髪の狐耳のメイドさんです。
とても似合っていて可愛いですね!
っと、そうではありません。アンリ様からの伝言があるみたいなので、聞かないといけませんね。
「これをお受け取り下さい」
伝言といいつつ、渡されたのは手紙でした。
「用件がございましたら、あちらの部屋で私どもが待機しておりますので、いつでもお申し付け下さい」
「わかりました、ありがとうございます」
食事の際にも利用させて貰いましたので大丈夫です。
「伝言って何でしょうね?」
部屋に戻り、僕たち4人が手紙を開きます。
「うそ……」
「行動が早いです」
手紙の内容は、今日の朝にはフォクシアを出て、中央の王都へ向かうので、戻るまで好きに過ごせという内容でした。
「普通ありえます?」
「ないわね。いくら何でも腰が軽すぎる」
「まるで最初から決まっていたみたいな動きです」
王様が簡単に国を離れる事なんて出来ない筈ですからね。
「ここから王都迄どれくらいの距離って行ってましたか?」
「えっと、2週間くらい?」
もちろん、移動は馬車になると思います。
「そう考えると、アルティカ共和国に所属している国と国は近いですね」
「そうだね。だけど、それ抑止力になっているんじゃない?」
「そうなのですか?」
「うん。距離が近いという事は攻めるまでに時間はかからない。だけど、逆に考えれば隣国の援護もすぐに来るってことだからね」
一国が謀反を起こしても、残り4カ国がすぐに駆け付ける事が出来る。
すぐに包囲網が完成してしまいますね。
「だから、こんなに国が近くても戦争は起きないのですね」
正確には起こせないでしょうけどね。
「それで、好きにしろと言われましたけど……」
「釣り」
「したいです」
最近、釣りをしてなかったせいで二人はどうしても釣りをしたいみたいです。
楽しいとは思いますけど……。
そこまで熱中するほどでしょうか? まぁ、趣味ってそういうものですし、仕方ないですね。
僕も趣味見つけようかな?
「それじゃ、たまにはシアとキアラ、私とユアンで行動してみる?」
「そうですね、シアさんと話したいこともありますし」
「うんうん。私もユアンに聞きたい事あるしね。二人はそれでいい?」
断る理由もありませんので、僕はスノーさんの提案に頷きます。
「わかった」
シアさんもそれでいいみたいですね。
「では、夕方には迎えに行きますので、トレンティアの家に戻ってくださいね?」
「わかった」
「わかりました」
シアさんとキアラちゃんを転移魔法陣でトレンティアの家に送る。
「そういえば、外出しても大丈夫なのですか?」
「大丈夫じゃない? 好きにしていいって言われてるわけだし」
「そうですよね?」
「髪の色も、大丈夫だし、いこうか」
「はい!」
お城の中とはいえ、アリア様との謁見が終わった後は金髪に戻しました。
黒髪の狐……それだけでかなり目立ちますし、それが王族の証という事も知っている人は知っているみたいですからね。
「僕たちは、街を見て回ろうと思いますが、よろしいですか?」
「畏まりました。門が閉まる時間までにはお戻り頂けるようお願い致します」
僕たちが急にいなくなったと騒ぎになると困るので、近くの部屋で待機するメイドさんに言伝し、僕たちは街へと向かいます。
もちろん、シアさん達の事は伏せてます。というよりも先に街に出た事にしました。
「すみませんが、止まってください」
「はい?」
そして、城を抜けようと橋に通りかかった時、僕とスノーさんは呼び止められました。
「お出かけですか?」
「はい、街を見て回ろうかと思いまして」
「わかりました。一応、城への出入りを確認する為、帳簿をとっておりますので、こちらに記入をお願いします」
「あ! ちょっと忘れ物しました、直ぐに来ます!」
城から出るのに確認が必要な事を知りませんでした!
僕たちは急いで部屋へと戻り、シアさんとキアラちゃんを呼びに戻ります。
幸いにも二人はまだトレンティアの家で釣りの支度をしている所でした。
「もぉ……ルードでも同じなら教えてくださいよ」
「いやーごめん。忘れてたよ」
何処の国も同じような事をしているみたいです。当たり前ですよね、誰でもお城に勝手に入れるのは危険ですから。
「では、改めていってらっしゃいです」
「大物釣る。期待しとくといい」
「シアさん、今日は川なので大物はいないですからね?」
「そうだった。けど、ユアンの為に頑張る」
「はい、美味しいお魚を楽しみにしています!」
これも本日2度目のやりとりになりましたが、街の路地で二人を見送ります。
帰りも人目を気にしてやらなければならないと考えると少し面倒ですが、仕方ないですね。
「うんうん。バレなきゃ大丈夫!」
「スノーさんの言い方ですと、なんだか悪い事をしている気がしてきます」
「気のせいだからね? 別に悪い事している訳じゃ……ないし?」
「そうですかね?」
転移魔法陣は使い方次第では脅威となりますからね。
「それよりも街だよ街! ここにしかない美味しいお菓子を探さなきゃね」
「本当にお菓子好きになりましたね」
スノーさんの趣味はお菓子を食べる事でしょうか?
節度を守れば悪い趣味ではなさそうです。
そう考えると僕も何かしら趣味を探した方がいいかもしれませんね。
そんな事を考えながら、僕たちはフォクシアの街を探索するのでした。
シアは一体何をユアンにしようとしたのでしょうかね?
未遂ですが、気になります。
アリア様が王都に向かうのは予め決まっていた事のようです。
それをユアン達の到着を待つために、少し遅らせたのかもしれませんね。
次回は日常回になります。たまにはのんびりしたいですね。
出来るかはまだわかりませんが。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。




