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8・厄介な人には夢中になるモンを渡しておくのがコツ

「な・・・、何でこんなものがここに」


 フルチャが大口を開けて固まった。


 まあ、仕方が無いだろう。鑑定でみたら僕も驚いたんだから。


 あれは夏ごろだっただろうか、妙に赤茶けた岩がゴロゴロしている場所に出くわした。


「あれは何だ?」


 溶岩とかレンガクズとか、そんなもんを予想したが違った。


「あれは焼き物の材料ですよ」


 兵士長がそんな事を言う。ちなみに兵士長の名前はバカって言うんだよ。前世日本語ではとんでもないが、こちらでは普通の事なんだ。地球にだって日本語ではトンデモナイ名前が普通にあるからね。オランダのスケベニンゲーだったかという街の名前やフィンランドのアホっていう森の開けた草地とか、エロマンガ島なんてのもあったね。


 おっと、それは良いとして、焼き物の材料?もしかして陶器を鑑定したアルミナの元があの石?


 そう思って僕は石をひとつ拾い上げて精製して見ることにした。


「それは?」


 マチカが興味深そうに精製により地面に落ちた砂を指す。バカは錬金を見るのは初めてなのだろう。大きな口を開けてみていた。


「どうやら金属みたいだよ。鉄、アルミニウム、ケイ素だって」


 そう言って更に魔法で三種類に分離していく。


 そこに現れたのは砂粒程度の塊が三つという少なさだったけど、まあ、石ころから採れるにしては多いと思う。


「兵士長、この石を一山僕が貰いたいのだが」

 

 そう言うと


「この石でしたら、向こうの山で取れますのでいくらでも手に入りますよ」


 そう言って山を指したがそこは赤くはなかった。


 それから少しして、本当に何を思ったのか、館の庭に山が出来るほど搬入されてきた。いや、本当に庭に小山を作れという意味じゃなかったんだが・・・・・・


 そして、その赤い石の山を一月かけて精製して石と鉄とアルミニウムとケイ素に分離していった。


 鉄はさっさと魔鋼にした。アルミニウムは何か合金になる元素が欲しかったがマグネシウムの入手先が分からないので魔鋼と同じ方法で魔力を浸み込ませてみたわけだ。

 ちなみにケイ素は窒素と化合させるイメージでやってみた。そう、ファインセラミックの窒化ケイ素ってやつ。


 で、魔鋼、窒化ケイ素は順当だった。で、アルミ何だが


「ん?ミスリル?魔法金属になったのは良い。魔アルミだもんな。で、魔アルミがあのミスリル?」


 この世界にもミスリル伝説はある。神銀だとか魔銀だとか、挙句は真の銀だとか。そう言われているが魔銀はミスリルではないし、神銀という素材は伝説にしか存在していない。真の銀ってもう意味すら不明だ。



 それをフルチャに見せたんだよ。


「それを知っているのか?」


 時が止まっていたフルチャが再始動した。


「知っているも何も、これこそ神銀じゃねぇか!」


 ほう、見ただけで分かるとか、どこかに魔アルミってあるんだろうか?


 そんな疑問が伝わったんだろう。


「ああ、そうか。まあ、良い」


 そんな独り言を一通り言って、咳払いして神妙な顔で僕を見るフルチャ。


「こればヴァイスの秘伝なんだが、神銀が伝わっている。だが、その製法は一切分かっていない。工房開闢の頃、もう200年前にはあったそうだが、だれもその原料となる鉱石を見付けることも出来ず、精製出来た奴はいないと聞いている」


 伝説は本当にあったんだね!


「こいつは焼き物に使う原料の石が原鉱石だ」


 そういうとさらに唖然としていた。


「おい、目にサラミかよ!」


 この世界で灯台下暗しの意味のある諺だ。


「そうだな。しかも、鉱石から一足飛びにコレは精製不可能だったぞ?」


 そういうと頭を抱えていた。


「赤い石からは鉄、そしてコレの原料、更にコレが精製可能だ。あ、これもそのまま精製したものではないいがな」


 そう言って魔鋼、窒化ケイ素も見せた。


「なってこった!!」


 フルチャが頭を抱えるのは何度目だろうか。


「ちなみに、ミスリルは鍛冶屋の炉に入れたらきっと灰になるぞ?」


 そう言うと驚いている。


「なぜそれを・・・・・・」


 どうやらヴァイス工房ではやっちゃったらしい。


「もとの金属が鉄ほど熱に強くないからだ」


 さて、ここからだな。


「フルチャは魔法でコレを成型できるか?」


 そう問いかけると自信に満ちた顔で僕を見た。


「もちろんだ」


 そう言って実際に粘土の様に延しだした。


「神銀剣だ」


 そう言って見ているうちに剣を作ってしまうあたりヴァイスの鍛冶師というのは本当なんだと感心させられた。

 ヴァイス工房では炉を使う鍛冶だけでなく、こうやって魔法で作り上げる技が非常に得意で細かい意匠なども行っているのだから。


「ふむ、剣にするには軽いか。盾や鎧に向いているかもしれんな」


 すでに自分の世界へ行ってるらしい。


「馬車というのもありかもしれない」


 僕がそう言うと


「適材適所だな。すべてを神銀とはいかんだろう。ちなみに、その金属は?」


 そう言って窒化ケイ素に興味を見せるので渡した。


「こ・・・これは、アダマンタイト・・ではないようだな」


 そう言って魔法で捏ねてみては硬さを見ているらしい。


「こいつを軸受けに、車体や車輪を神銀で、釣り鎖を魔鋼だろうか」


 この世界の馬車にスプリングは付いていない。居住スペースをロープや鎖で吊り下げている。


「材料は渡すから作ってみてくれ」


「い、良いのか?」


 まあ、悪くは無いだろう。それなりの腕があるようだし、こんなモノを渡せば脇目も振らなくなるだろうことは請け合いだ。

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