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4・獣人ハーレムが出来たわけじゃないんだよ

 翌日、一応の政務をほぼ形だけ済ませると自由時間になる。


 厄介払いでこの街へやってきた窓際に仕事はないって事なんだろうな。


「マチカ、スライムを獲りに行きたいんだが」


「ダメですよ、イシュトヴァン様」


 即座に否定された。


「そうは言っても、スライムはきっと川の中の汚れを吸収していると思うんだ。なら、残飯や汚物だって吸収するとは思わないかい?もし、汚物処理に利用出来たらこの街はものすごく綺麗になると思うんだ」


 そう、物語の様にスライムトイレとかスライム下水処理場とかが作れたならば、時代を一気に飛び越えて清潔な街が出来上がる。


「ですから、スライムは瘴気を出すんです。そんなものを集めたらこの街は滅んでしまいますよ?」


「だから、瘴気をいつ出すのか調べてみないと分からないだろう?川のほとりにあって、スライムが沢山居るのに今、この街は滅んじゃいない」


 マチカにそう返すと困った顔をされた。僕としてはスライムが瘴気を出すとは考えていない。きっと疫病を魔物のせいにするための方便でしかないと今は思っている。実際の原因はこの不衛生さなんだから、これを解決すれば疫病だって改善可能なはずだ。

 といっても、僕が直接スライム研究をすることを彼女が許してくれそうにない。かと言って、来たばかりの僕がこの街の兵士や文官に頼むのもどうかと思う。


「誰か、検証してくれる者が居れば良いんだけど」


 困り顔のマチカがその独り言を聞いていた。


「でしたら、奴隷を買ってやらせては如何ですか?」


 まあ、リスクがある作業だから真っ当な意見ではあるが。


「其れには問題があるよ。読み書きが出来て、しっかり記録をつけられる者じゃないといけない。読み書きのできる奴隷なんか居るのかな?」


 この世界には当然ながら奴隷が居る。整った顔立ちの獣人は当然として、一部趣味者には去勢した少年も大人気だという。僕にはわからない価値観だけど。

 犬獣人の中には大柄な者が居て、労役に最適だというし、猫獣人はマチカの様に均整の取れた小柄な女性が多いので娼館でなくとも引く手あまただ。狐獣人はかなり知的な者も居るので奴隷というより高名な研究者が居たりもする。


「居ますよ。私もお屋敷へ上がるために買われた身ですから。奴隷と言っても労役ばかりではなく、特に貴族向けにはメイドや執事の助手も出来る者を扱う商人も居りますので」


 そうだったのか。


 ちなみに、下世話な話をすれば、貴族は獣人を囲ったとしても大きな問題とはならない。というのも、獣人との間に出来た子供は継承権が発生しないからだ。

 フニャディ領のように東や南の国境沿いにあって獣人が多く流れ込んでいる地域では差別も少ないのだが、西方に行けばやはりそこは人族の支配地域であり、獣人は低く見られている。特に我が国より西方にあるガイナという高山の向こうの国に至っては人語を話す獣といった扱いだと聞いたことがある。

 そう言う国とつながりを持つ王侯貴族にとって、獣人との混血はやはり禁忌だという訳だが、僕に付き従ったのがマチカ一人というのを見ればお察しだ。僕には辺境伯家の継承権はないし、僕の子供に与える気もないって事だろう。


「じゃあ、そう言った読み書きが出来る奴隷を扱う商人ってこの街にも居るのかな?」


 そう聞くと、調べてみると言って出ていった。


 マチカは辺境伯家でも特に差別されていた訳ではない。フニャディ家自体が獣人を差別していないとは思うが。かと言って、側付きメイドに獣人を選ぶってのはそう言う事だと言って良いと思うんだ。



 なんと、マチカが調べたところ、ちょうど今この街に読み書きできる奴隷を持った商人が居るという。


「明日には奴隷を連れて館を訪れるとの事でした」


 


「で、僕が求めているのはこういう事じゃないんだが?」


 翌日商人が連れてきた奴隷というのは、マチカに勝るとも劣らない可愛い猫獣人、なるほど、元の動物から考えてもそうだよねというほど綺麗な狐獣人、前世のアイドルみたいな犬獣人という者たちだった。


「へ?こちらのメイドの助手をお求めだと思ったのでこのように用意してまいりましたが・・・、代官様のご要望は因みに?」


 豆鉄砲を食らった鳩よろしく、ぶくぶく太った商人が呆気にとられた顔をしたあと、さすがは商人、頭を切り替えて僕の要望を聞いて来た。つか、昨日は一体どんな話をしたんだ?マチカさん。


「ちょっと危険な調査をやってもらいたい。彼女たちに出来ない事もないが、少し気が引けてな」


 そう、たかだかスライム一匹を捕まえて汚物の桶に放り込んで観察するだけだ。彼女たちから選んでも問題はない。


「でしたら、犬獣人の男がよろしいでしょうか」


 等と商人が言い出すが、今回はそこまで膂力を必要としている訳でもない。


「いや、いまのところ、そこまでの必要はない」


 そういうと、商人は明るく言い放つ。


「でしたらこちらの3人、お近づきのしるしに大特価、1万フリンでお譲りいたします!」


 1万?ちょっと高額な気もするが、いや、読み書きが出来る3人ともなると安いか?領都で普通の奴隷が2千フリン程度、読み書きが出来ると5千はしていたとマチカが囁いた。


「そうか、それはすまないな」


 次があるかどうかは分からないが、商人が言うのだから断る必要も無いだろう。  

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