24・とりあえずは丸く収まった気がする
「マーリア様、お待ちください」
「マーリア。私とマチカは同格なの。様なんて付けなくて良いし、子供を産んだばかりなんだから休んでなさい」
目の前では嫁2人がいつものように言い合いをしている。
僕はあれから叙爵のために王都へと向かい、そしてマーリアを迎え入れた。その時には随分王家の女性らしくお淑やかで気品があったはずなんだが、今ではこうなっている。
前世記憶の知識で言えばマーリアはツンデレという奴になるんだろうか?
「ねえ、イシュトヴァン。マルギトお母さまも綺麗だったけど、マチカって同じぐらい綺麗ね。ホント、獣人の美貌に憧れる」
タシュ大公の婦人に獣人が居るのだが、その狐獣人マルギトという人は本当に目を奪われる美貌だった。九尾狐とか言われても信じてしまう様な神々しい美貌。マチカとはかなり毛色が違うと思うんだが、マーリアにとってはどちらも甲乙つけがたいらしい。
「マーリアも負けてはいないんじゃないか?」
僕から見ればマーリアも美人だと思う。猫獣人のマチカとは毛色が違う可愛さというのがあると思うんだ。
「そう言いながら、マチカが上と思ってるんでしょ?」
そんな事を言われる事が多い。
「しかも、ここは獣人が多いから美男美女ばかりで私程度じゃ敵わないし」
悪戯っぽくそう言う。
マチカがそれを聞いてオドオドしているのがまた可愛らしい。そのことが分かっているマーリアもその姿に微笑んでいる。
「ほら、アレは反則ね」
そう言って館の事をメイド達に任せて僕たちは工房へと向かう。
この国では貴族女性に魔法を教えたりはしないのだが、お転婆、ヤンチャ、男勝り。そんな言葉が似あうマーリアは半ば独学で魔法を習い、大公にせがんで適性診断をやったらしい。結果は錬金だった。
その為、マーレタティに来た彼女のナント生き生きした姿か。とは言え、はじめの頃はまだ大人しかったんだ。
しかし、マチカが出産して少しすると以前の様に射撃訓練を始めた途端、自分の錬金を生かせることは無いかと言い出した。その結果、フルチャも認める魔力の多さを生かして、今では僕と並んで精製を行えるほどのウデを即座に身に着けてしまった。アダマンタイトこそ造り出せないが、それ以外はそん色ないほどに。
スタンピードで春も秋も収穫が全くなかったマーレタティだが、鍛冶をはじめとした利益があったおかげで何とか困窮せずに乗り切る事が出来、今では畑も汚物処理場も復旧できている。小屋に関しては神銀の利用は結局未だできていないが、マーレタティ地方の領主となって、近隣の村を従えることになったので、今後は余裕が出たら作ってみたいと思っている。
「ご領主、ミクラ村の銃班の人選が終りました」
そう、周りの村も従える事で今は仕事が増えて忙しい。
大半は任せる事が出来てはいるが、各種報告が僕へと回って来る。それがまた悩ましい問題を運んできてしまう事になる。
「誰を出す?シュケットかコパスか?」
百姓銃班の優秀な者の名前を出す。
「いえ、指揮という面ではウレグではないかと」
「いや、ウレグは種まきの時期を見極める人材と聞いたが?」
そう、ミスマッチがよく起こる。しかも、たいていの場合、他の村へ替えることのできる人材はすでに出ていたりするんだ。
「そうでしたね。ソボシュをミカ村へ出したんでした」
そう言って頭を悩ませる兵士長。
僕の領となった村々にはスライム式汚物処理場が作られ、その管理にスーケ達3人衆が育てた人材も出している。
やることが増え、人が足りない。それでも体制作りは続けなければならない。
色々大変な事はあるが、そう言えばマーレタティへ来てすぐも、気楽に遊べると思っていたらあれこれやることがあったんだと振り返っている。
「ご領主、最近ウィンドボアの数が戻りつつあるようです」
騎士からの報告も悩みの種を持ち込んでくれる。
「イノシシは多産だと言うが、早すぎないか?」
「それが、あれだけのスタンピードにも拘らず、他から群が入ってきたことでかなり個体数が戻っているようなのです」
それがイノシシというモノなんだろうと半ばあきらめ、そして資源と考える事にしようと思う。
「そうなると、サラミの素材と考えて討伐していくしかないのだろうな」
その答えには騎士も苦笑している。
「ご領主、アートヴァローナです!」
駆けこんできた兵士がそんな事を言う。なんであのカラスがこの忙しい時に来るんだろうか。
そう思って街門へと向かうと、以前と違って少数のカラスしか居なかった。
『出迎えご苦労。小さいの』
いちいち上から目線だよな、コイツらって。
「何の用だ?スタンピードの片付けなどをやっていたからウィンドボアの討伐にまで手が回っていない」
僕に関する話は端折ってそう答える。
『例の暴走時には我らも随分得をした。南ではかなり数を減らしている』
うん、よくわからん。
「こちらではすでに数が戻り始めているらしいが」
『我らに利を献上する気は無いか?』
何を言ってるんだろう?このカラス。
「利とは?」
『炎鳥は美味であった。が、数が少ない。山を差し出せばお前たちにも恩恵を授けるが?』
イマイチ分からないが、イノシシが減っているからこの周辺の山でも狩りがしたいのかもしれない。
「僕らの食い扶持もある。更に木や鉱石も必要だ。鉱山周辺や裾野で僕たちと争わないなら構わない」
『我らは空から狙う。場所は気にしていない。裾野辺りを残して差し出すというならば、多少は追い立ててお前たちにも分け与えてやる』
「分かった。僕らの邪魔にならないときにならば構わない」
『小さいの、良い心がけだ』
そういうと強風を残して飛び立っていく。本当に、アレが魔人じゃないんだよな?
僕らはなんとかやっていけそうだし、隣人?はアレだ。色んなことがこれからもあるだろうが、適当に乗り越えて行けるだろう。




