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20・スタンピードって奴が起きやがった

 早馬が来たという。


 早馬を出すような用事とは何だろう?ちょっと思い浮かばない。


「ご領主、早馬の伝令が参りました!」


 早馬の到着の知らせから程なく、執務室へとやって来るというので、庭での精製を中断して向かう。


「ご苦労。して、何の用だろうか?」


 思い当たる節もなく、また父の嫌味か何かかと身構えた。


「ハッ、東方砦よりの伝令です!」


 それは予想外の場所だった。


 東方砦と言えば、馬でも二日は距離がある。一体そんなところから何の用があるのか。さらに良く分からない。


「フライングヒートの群が山を越え、マーレタティ近辺へ至る恐れがある事を観測いたしました」


 フライングヒート?僕は良く分からずに首を傾げる。


「火の魔法を扱う鳥ですな。してその群の大きさというのは?」


 トルディが代わりに答える。


「ハッ、群は極小規模。『トルディ閣下たちであれば対処は可能であろう』と伝言を言付かっております」


 なんだ、トルディが対処できるなら問題ない。僕はそう胸をなでおろした。


「それで、観測したのはいつか?」


 トルディはさらに尋ねる。


「ハッ、3日前であります」


 3日前に東砦で観測したと。


「おい、それはおかしいだろう。なぜお前が先に付いている?地形に関係ない鳥の方が先に来るのではないか?」


 トルディの質問はもっともだ。地形の影響を受けない鳥は一直線に飛んできているハズ。何故来ていないのか?


「それは・・・・・・」


 彼の語った内容はとんでもなかった。


「何を考えているんだ!!」


 トルディが怒鳴るのも仕方がない。制御できるかどうかも分からないフライングヒートの群をけしかけて東方民族を襲わせるという正気を疑う作戦を実行したらしい。確かに開いた口が塞がらん暴挙だ。


「しかし、こちらの意図したように多くの群は東方へと・・・・・・」


 伝令はそう釈明しているが、その結果が西進する群が出たという結果なのだから、釈明になっていない。


「トルディ、そしてバカ、すぐに警戒だ」


 伝令には休憩して帰る様に言い、僕はトルディと兵士長に指示を出す。


「イシュトヴァン様」


 兵士長が兵士たちに指示を出すため飛び出していく一方、トルディは厳しい顔で僕を見る。


「どうした?」


「最悪を想定した方がよろしいかと」


 最悪?


「フライングヒートがこちらへ向かったのは確かでしょう。しかし、マーレタティには現れていない。つまり、あの森の向こうに下りた可能性があります」


 そう指さすのは東の山脈。正確には標高の高い山脈の西側になだらかな小山脈がある。イノシシや鳩の生息地だ。


「もしかして、フライングヒートがイノシシや鳩の生息地を荒らしていると?」


 そう聞くと頷く。


「僅かなフライングヒートであれば私とズリーニィの火魔法で対処も可能でしょう。そして、あの銃という武器もあります。しかし、ひと山向こうを荒らしているならば、ウィンドボアやスケイルピジョンのスタンピードという可能性も・・・・・・」


 それは想定外と言って良いだろう。そんな事が起きてしまえばこの街の周辺にある畑はせっかく育った農産物をすべて失う。それだけで済めば良いが・・・・・・


「そうか、そうなると銃隊すべてを招集が必要だな。トルディ、指揮は頼めるか?」


「お任せを」


 さて、何が起こるか分かったもんじゃないな。


「マチカ、処理場にも伝えてくれ。当然、銃隊は全てトルディの指揮下に入る様に」


「はい!」


 猫の俊敏さでマチカも飛び出していく。僕はフルチャの下へと向かう。


「フルチャ、スタンピードの可能性があるそうだ」


 そういうと驚いていた。が、すぐにニヤリとする。


「アレの出番ですかい?」


「可能性の段階だが、用意だけは頼む」


「まあせてくだせぃ」


 そう胸を叩くフルチャの頼もしさに少し落ち着く事が出来た。


 そして、僕も最近仕上げた最新型の銃をもってトルディの下へと向かった。


「ご領主、指揮所にソレは不要では?」


 そう言うので首を振る。


「指揮はトルディに任せる。全体を差配してくれ。だが、誰かが前線に居る必要があると思わないか?」


 そう言うと驚いていた。


「しかし、だからと言ってイシュトヴァン様が行く必要はありませんぞ」


 そう、彼の言う事は合理的だが、この世界ではそうでもない。


「トルディの言う事が僕も正しいと思う。だが、領主が隠れていたとなっては士気に関わるのも確かではないか?」


 そういうと言い返せなかったらしい。


「報告!東方山麗よりウィンドボア多数!!」


「ここで言い争う暇はないようだな」


 そう言って僕は外へ出る。


「誰か!フルチャへ壁上へアレを持って来るよう伝えよ」


 そう言うと兵士の一人が返事をして走り出す。


 僕も街壁へと登る。


「スケイルピジョンの群だ!」


 そう言う声が聞こえて空を見上げると、あの鳥の群がどんどん西へ向かって行く。


「鳩を狙う暇はなさそうだな」


 すでにウィンドボアだろう群が立てる地鳴りのような音が響いている。


「イシュトヴァン様!」


 マチカの声がした。振り向くと処理場の人員で編成された銃隊を従えている。


「他のモノたちは?」


「街壁内への避難を完了しています」


 その報告に頷く。


「ご領主!」


 駆けてくるフルチャと弟子たちの姿も見える。手押し車に乗せたブツも。


「フルチャたちはそれを壁上へ!」


 銃班がバカの指揮で壁上へと配置に着く。フルチャたちがその要所へとブツを据える。


「よぉ~し、祭りの始まりだ!景気よく行くぞ!!」


 僕がそう発破をかけると掛け声が上がる。館の屋上で全体指揮を執るトルディの姿も見えている。


   

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中世ファンタジーの世界で銃による掃討戦は燃えますな。 [一言] 主人公の魔法応用範囲良すぎて、タングステン製鉄条網やらブービートラップやら作れそうなものが多くて夢が広がりますね
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