表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/24

17・この世界の常識は少々厄介な気がする

 なぜ、彼が異端なのか。


 この世界ではクロスボウすら一応あるというだけで普及していない。


 それというのも、騎士を活躍させるためだ。


 弓隊というのは相手の持つ弓と撃ち合って拮抗、ないしは有意な情勢を造り出すのに必要な存在だが、こと騎馬、いや魔獣乗りに対してはクロスボウは役立たないし、仮に速射が可能であっては、槍隊と共に敵への打撃力が大きくなり、魔法活用の場を減らすことになる。


 歩兵が槍を敵と合わせる前に、魔獣が槍衾に至るまでに、大きな戦果をあげる。それこそが騎士の在り方というのがこの世界。


 彼はそれを否定し、隊列後方から部隊を指揮する事が戦場では最も効率よく勝利を得ると考えている。もちろん、魔法の実力は折り紙付きだが、それを用いるのは本営の危急の時であって、自ら毎度最前線へ出て敵を蹂躙するのは運用効率が悪いという考えで騎士団を改編しようとしていたそうだ。そりゃあ、早期に解任されるわ。


「ご領主も騎士には合わないとお考えか?」


 トルディはそう試す様に言う。


「いや、トルディの考えは効率的なんだろう。もし、敵がこのような武器を持てば、魔法を放とうと飛び出してきた騎士は簡単に餌食になるだろう。今でさえ、大きな危険を抱いて最前線へ飛び出していると聞く。それで指揮がおろそかになり、果ては倒されて瓦解したのでは目も当てられない」


 そういうと、トルディがニヤリと笑った。


「しかし、今のアレはあくまで鳥を撃つことが出来るに過ぎない。森の中の魔獣や弓より遠くから相手を倒せる武器という訳ではない。もうしばらくすれば、魔獣を倒し、弓の常用距離を超えて射撃できるモノが完成する。しばらく待ってくれ」


「ほう、ご領主は分かっておられる。しかし、なおの事、今の世には受け入れられないでしょうな」


 どこか自分に重ねたようにそう言って去って行った。


 さて、大口径空気銃は従来のモノより進歩したモノにしようと思う。現行型は一発ごとに弾込めを行っている。構造を簡略化して失敗せずに作ろうとしたからだ。しかし、造れることも分かり、なおかつ、より得意としている鍛冶師まで居る。ならば、問題ないだろうと判断した訳だ。


 ただし、オートマチックではない。あくまで弾倉を備えた手動タイプだ。 



大口径空気銃の量産は遅々として進んでいない。


 理由は冬を迎えて麦播きが終ったことで農具の修理や調整の仕事で忙しいからだ。使い始めて2年の脱穀機は今でもより効率が良いように調整が行われている。犂や鍬、馬鍬の修理も少なからず入っているらしい。


 そんな状況の為、年明けごろまでは僕だけが銃を作っている状態だった。何とか10丁ほど完成させ、トルディたちに渡している。


 さて、今期の収量はどうだったかの集計も終わり、徴税や売却の資料が揃うと、スケイルピジョンの被害はそこまで大きくなかったことが分かった。


「これは食害が少なかったというより、豊作だったからだと思われます」


 訂正する。スライム肥料によって豊作だったらしい。


 商業については、魔鋼や神銀は僕とフルチャしか作れないので、取引量自体に限界がある。しかも、銃や農具に多くが消費されているので、2か月に1台の馬車の製造程度が今のところは関の山となっている。それでも年間数台もあの馬車が売れるとなれば大きな収益ではあるが。


 そして、更には獲りすぎたイノシシと鳩の処理も考えないとイケなくなり、サラミや干し肉の生産が行われ、それらを周辺村落や街へと売りに行く行商も居着いている。


「ご領主、どうやら肉が足りないらしいので、ウィンドボアやサイカを狩りに行ってもよろしいか?」


 最近銃を与えて訓練をした猟師たちが僕に銃猟の許可を求めて来た。


「その銃なら可能だとは思うが、くれぐれも気を付けるように」


 そう言って許可を出した。


 冬になると途端にやることが無くなる。が、処理場は季節に関係なく稼働しているのでスライム肥料はどんどんたまり、春への備えとなって行く。


 が、こんな時でもお呼びでない来客はある物だ。


「最近、処理場周辺にカラスがよく来るんです」


 バルナが困り顔でそう言う。この寒いのにカラスは元気なものだなと思っていたが、そんな生易しい相手ではないらしい。


「隙を見ては解体された獣の廃物をかすめ取るんですよ。酷い時には運んでいる途中に襲われるんです」


 何とも厄介な奴だ。きっと食べ物を容易に入手する手段として目を付けたんだろうな。


「分かった。兵士たちに見回りさせよう」


 その次の日から兵士たちによって処理場周辺や運搬中の荷馬車などの見回りを始めた。


 それから一月ほど経っただろうか。


「大変です!カラスが街門にたむろしています!」


 ある日、そんな報告が僕の所へやってきた。いや、カラスだよね?ちょっと蹴散らせばいなくなるでしょ。

 そう思っていたのだが、続報はそれどころではない事を知らせて来た。


「ご領主、アートヴァローナの来襲です!」


 ん?芸術が何だって?


「強力な爪を持った知恵のあるカラスです」


 疑問を理解したらしいトルディが説明してくれた。


「イシュトヴァン様、アレは時折子供や小動物ををさらう獰猛な鳥です」


 マチカもそう言ってくる。


「そんな危ない魔物が襲ってきているのか。すぐに銃隊をかき集めて討伐だ」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ