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13・この世界のヤツラは厄介すぎる

 トルディはそれから怪しい動きをしているようには見えなかった。そもそも、僕には彼を探る手段も無いのだけど。


 だが、何の問題も無かった訳ではない。


「イシュトヴァン様、どういう事でしょうか?」


 トルディが退出したのち、マチカがプンプン怒っていた。


「何か問題があったか?僕にとっては願ってもない話だったんだが」


「ご自身が何をしようとなさっているか理解しておられないようですね」


 そう言っている。


「分かっているさ。貴族家の者が獣人を正婦人にする。そんなところに縁談は持ち込まれてこないだろうな。良いじゃないか。僕にはマチカがいれば十分だから」


 そう微笑んでみたが、全く受けなかった。


「そうですか。私もうれしいですが。しかし、悲しくもあります」


 一体何を悲しむ気なんだ?父が言い出した事。他の貴族や騎士と関わらせないと宣言して来たのに、それに抗してなにかメリットがあるとも思えないんだが。


「辺境伯様は私を正婦人にとは仰っていません。それを、正婦人と誤解されているんです!」


 自分が正婦人になれるというのに何が不満なのかよくわからん。


「イシュトヴァン様、分かっておられますか?ヘルタイ様が仰ったように、その錬金は武でなくとも、辺境伯家に大いなる富を生むんです。そして、魔鋼は槍や剣、鎧にも使えます。フルチャも言ってましたよ。イシュトヴァン様にその気があるならば、辺境伯家の槍や剣を造っても良いと」


 確かに、魔鋼であれば槍も剣も鎧も強靭なものが出来るだろうな。


 といっても、魔鋼なら僕に限らずヴァイス工房の様な王国の名だたる工房なら造り出せる。現に父親も持ってる。フルチャはあまり評価していないらしいが。


「だが、父上が求めたのは神銀だ。それに、神銀にも大いなる可能性があるぞ?軽く扱い易いにも拘らず、鋼並みの素材だ。武器には向かないが、多くの物を神銀に置き換えることが可能なはずだ」


 そう、アルミだもの。アルミ合金が如何に使われているかを考えれば分かる話だ。 


「で、あれば、私を妾程度にとどめおいて商人から娶れば良いのです。今以上に神銀を広めることもかないましょう」


「僕が夫では嫌か?」


「そんなはずありません!私はイシュトヴァン様以外に考えられません!」


 そう言って最後には泣き出してしまった。どうして良いのかわからなかったが、とりあえず抱き寄せて頭を撫でてやった。



 それから、マチカは時折「私で良いのでしょうか」と聞いてくるが、僕は常に「マチカが良い」と応えると不満そうな顔をする。

 ただ、僕付きのメイドとしてはしっかり働いてくれている。特に何も変わったところはない。 


 そんな騒動をやっていると、すでに秋が来ていた。秋の麦が収穫間近だ。


 その日、兵士長を連れてスライム肥料を使った畑の視察を行っていた。


 トルディ?


 ああ、騎士たちには魔物狩りを頼んでいる。ここでの最強戦力と言えば騎士だから。で、少ない肉類を彼らが供給してくれる。ウィンドボアの討伐なんて兵士たちでは危なくてなかなかできないからね。


「イノシシ共が畑を荒らす事が減って良かったな」


 騎士が来たことで兵士たちはイノシシの相手をしなくて良くなり、かなり負担が減っているはずだ。


「そうですね。ただ、それを喜んで良いやら悪いやら。我々もウィンドボア討伐をやった方が良い気がするんですが」


 そう困り顔だった。


「あの4人が相手にするイノシシを兵士なら10人がかりだろう?それでも危ないというのでは話にならない」


 そう、やはり、主に治安維持が目的で配置されている兵士たちでは魔物の相手は厳しい。コレが兄たちが居る東方砦の兵士ならまた違うのだろうが、ここには槍兵しかおらず、それすら常時使う訳でもない。形だけ対魔人戦に備えているにすぎず、集団で戦うのはウィンドボアが精々。東方砦の兵士ならば弓隊と槍隊で連携もとれるんだろうが、それすらないからな。


 じゃあ、騎士はというと、そもそも、全身鎧と並外れた体躯によって、鎧すら両断する大槍を使う。ウィンドボアの風魔法だってモノともしない攻撃力があるんだ。


「あれはなんだ?」


 そこには収穫間近の麦と変わらぬ大きさのデッカイ鳥がいる。鳥?多分鳥。


「ああ!スケイルピジョン!なんという・・・・・・」


 兵士長のバカも驚きを隠せない様子だった。


「なんだかとんでもなく硬そうだが無能そうな名前の鳥だな」


 そう、羽根ではなくうろこに覆われた鳩色をしたデッカイソレ。


「確かに奴は無能です。ただし、幾ら追い立ててもすぐに戻って来る厄介な魔物なんですよ!」


 だろうな。鳩だけに。


「なら、弓で仕留めるしかない」


「ご領主、マーレタティには猟師数名しか弓を扱える者はおりませんよ?さすがに彼らをアレ討伐に駆り出すのは無理がございます」


 たった数人しか弓を扱える者がいないのか。しかし、連中の多さを考えると数人でどうにかなるとは思えない。


「それに、彼らを駆り出したとしても、鱗の隙間を狙わなければ倒すのも難しいかと」


 なんちゅう厄介な害獣だよ。糞害どころじゃないな、この世界の鳩は。  



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