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碁石になった少女  作者: 死那紋


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貳 尾崎由香里という人

放課後、私は岩永さんと図書館にいた。

今日、日本史の授業で古事記のレポートが宿題に出されたのだ。

「それにしてもAI対策をしないとは、津田先生甘いね」

「岩永さんだめだよ、先生は人の善性を信じているんだから」

「わかってるよ。でも、AIを使えば30秒で終わることを時間をかけてする意味ってなんだろうって思って」

「AIを使えば、情報を探してまとめる能力が身につかないからじゃないかな」

「その都度、AIを使えばいいだけのように思えるけど、あ、ごめん。レポートを書かないとね」


岩永さんは資料を探してくるといって図書館の奥に消えていった。

私は空いている机を見つけて、レポートを書く準備をした。カバンからパソコンを取り出しながら、先ほどの会話を思い出していた。

公民の授業でコンピュータは20世紀最大の発明だと習った。コンピュータは人の暮らしを劇的に変えた。しかし、規制が追いつかなかった。

21世紀、各国はこぞってIT化を推し進めた。自国のデジタル優位性を保つために地球環境を悪化させることも厭わなかった。生まれてからずっと機械製品に囲まれていた人は自然の温かみを知らなかったのだ。また、AIは人から働く気概を奪い、自分の存在価値を見出せない若者が続出した。

21世紀の終わり、デジタル条約が結ばれなかったら地球はとっくに人の住めない土地になっていただろう。

現在は規制の下、AIやコンピュータを使うことができる。


私にはそれが良いことか悪いことかはわからない。しかし、常に発展し続けることが必ずしも人の幸せに繋がるわけではないと思う。

私はこの時代に生まれたことを後悔したことはない。今まで嫌なことも多少あったけれど、後から思い出すと楽しかった気がする。今は岩永さんと一緒にいるだけで楽しい。


こうして思案していると図書館の奥から岩永さんが帰ってきた。

「本、持ってきたよ」

「ありがとうございます。すみません、手伝わなくて」

「いいよいいよ、大変なのは本を探したあとだから」

私も頑張らないと。

こうして私たちはレポート作成に取り掛かった。二人で協力したのでレポートを一時間で書き終えることができた。下校時刻まであと一時間ほどある。

岩永さんはさっきトイレに行くと言って図書館を出ていった。私は彼女が帰ってくるのを待ちながら、家に帰った後のことを考えていた。

10分経った。岩永さんはまだ帰ってこなかった。

15分経った。私は岩永さんが心配になり、図書館に一番近いトイレに入った。

「岩永さん、大丈夫?」

そう声を出しながら、岩永さんを探したがどの個室にもいなかった。

もしかしたら、岩永さんはここのトイレはみんな使われていて、どこか他のトイレに行ったのかもしれないと思った。

私は学校中のトイレを探したが、岩永さんはどこにもいなかった。

何か急な用事があったのかもしれない。

そう考えようとしたが、彼女は荷物を取りに来ていない。どう考えてもおかしい。

私はとりあえず、行き違いになったのかもしれないし図書館に戻ることにした。

岩永さんの荷物は椅子に置かれたままだった。

下校時刻まであと十分だった。私はそれまで待つことにした。

不安、焦燥感、さまざまな感情が渦巻いていた。私は俯き、体が震えて唇が歪んだ。

私には岩永さんがいない世界を想像することができない。

どうしても最悪のシナリオを思い浮かべてしまう。

言葉のわからない外国の街に一人いる気分だった。

もうすぐ下校時刻ですよ、と見回りをしている司書さんの声が遠くから聞こえた。

「尾崎さん、尾崎さん」

声が聞こえた。そして、体の震えが止まった。聞き覚えのある声がはっきりと聞こえた。

「ごめんね、待っていてくれてありがとう」

私は振り向いた。そこには岩永さんがいた。涙が出てきた。

「私、岩永さんが心配で心配で、岩永さんに何かあったらどうしようって」

岩永さんがハンカチで私の涙を拭った。

「本当に心配かけてごめんね。でも、本当に何ともないから、尾崎さんも泣かないで」

「どうして、すぐに帰ってこなかったの?」

だんだん動悸がおさまってきた。

「ちょっと不思議なことがあってね」

「不思議なことって?」

「今はなんだから、帰り道に話すよ」

岩永さんが時計を見て言った。時計を見ると下校時刻1分前だった。

「必ず話してね」

私は念を押した。

司書さんがこちらを見ている。下校時刻を過ぎたら怒られるかもしれない。

私たちは急いで荷物をまとめ、図書館から出て学校を後にした。

岩永さんとは家の方面が同じなので、こうして一緒に帰ることが多い。しかし、岩永さんはいつも遅刻しそうな時間帯に学校にくるので通学中に会うことは滅多にない。

「それじゃあ話すね」

岩永さんは語った。

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