サージェント兄妹で魔物討伐をすることになりました
拝啓 お父さん、お母さん。
第一王子の報告からサージェント家に帰ってきました。あ、ジークベルト様のキスは何とか回避して今に至ります
「……フローラからキスして欲しかった」
「レヴィが居るからしない」
「2人きりになったらしてくれるのか?」
「………」
「無言は肯定って捉えるけど、良いのか?」
「2人きりなら、い」
「フローラ、お帰り!!」
「うっ…!ア、アシェルお兄様…ただいま帰りました」
馬車から降りてジークベルト様と話していると勢い良くアシェルお兄さんが抱きついてきた
「アシェル、フローラに抱きつくのは良いけど勢いを付けすぎだ」
「フローラを見つけると抱きしめたくなるんだ…フローラ、大丈夫か?」
「大丈夫ですわ。レーヴィお兄様、ただいま帰りました」
「お帰り、フローラ」
レーヴィお兄さんはそう言って私を抱きしめてくる。今更だけどなんで抱きしめてくるんだろうね?
「フローラ、早速だが明日から一緒に魔物の討伐に参加して欲しい」
「えっ」
「フローラとアシェルと俺の3人で行くことが決まったから」
「ちょっと待ってください、お兄様方。なぜ私が参加なのですか?」
「もちろん俺たちがフローラと一緒に行きたいからね」
レーヴィお兄さんがそう答える
「…私は、足を引っ張るだけでは」
「そんなことないさ。フローラは火属性の魔法が使えるんだ。いざとなれば俺たちが守るから」
「アシェルお兄様…」
「アシェル殿、レーヴィ殿お待ちください。フローラは私の婚約者です。危ないかもしれないのに、易々と参加させるわけにはいきません」
「ジークベルト殿、貴方が居なくても私たちで十分、妹のことは守れますのでご安心を。怪我などさせるわけないでしょう?」
アシェルお兄さんが十分ってところを強調したよ。火花散ってるなー…
「ジークベルト様、私は大丈夫です。…ジークベルト様もまた忙しくなるじゃないですか」
「フローラ、だが……」
「また埋め合わせしてください。ね?」
「……分かった、またこれで話そう。時間を作るから」
ジークベルト様はそう言って左手の薬指にはめてあるお揃いのペアリングにキスをした
「…はい!」
「フローラ…俺たちが居ることを忘れないでくれ」
「完全にジークベルト殿とフローラの2人きりの世界に入ってるな」
「これが両想いってやつか…?!」
「アシェル、邪魔をしてはいけないよ」
「分かってる、分かってるが!この甘い雰囲気は…」
──5分後
ジークベルト様はラゼボ王国に帰って行った
「……」
『主よ、若造と離れて寂しいか?』
寂しくないって言ったら嘘になるけど、大丈夫。ジークベルト様は一途に愛してくれてるから
『………そうか』
「フローラ、今日はゆっくり休むんだよ。明日から魔物の討伐に行くから」
「分かりましたわ、レーヴィお兄様」
私は自室に戻る
「お嬢、お帰りなさい」
「ただいま、みんな。明日から双子のお兄さんたちと一緒に魔物討伐行くことになったから、よろしくね」
「着いて行っていいのか?」
「もちろん。みんなのこと頼りにしてるから」
「姫君…」
「アストラル、主は若造と離れて寂しいようだ。もしかすると実力の半分が出せなくなるやもしれん」
「お嬢は実力の半分でも十分強いではないですか。しかし公爵のことがそれだけ好きだという証拠ですね」
従魔たちがあれこれ話しているのを聞き流していた。
ジークベルト様と別れたばっかりだけど、もう会いたくなってる。次、いつ会えるんだろう…
──翌日──
「アシェルお兄様、今回はどの魔物を討伐するのですか?」
アストラルの背中に乗って移動していて、後ろに乗っているアシェルお兄さんに聞く
「終焉の種子だ。その特徴は美しい花の姿をしているが、根から周囲の生命力を吸い取る植物型の魔物なんだ」
「終焉の種子…」
「なんでも、生命の木の近くに突然現れたらしくてね。騎士団の隊長である俺たちが国王陛下から直々に指名されたんだ」
国王陛下、いや…魔王は何を考えてるんだろ…
誰か終焉の種子って魔物知ってる?
『終焉の種子か…。おそらく邪神が完全に目覚める前触れだろうな。生命の木の力を吸い取り、邪神の目覚めを早めようとしているのだろう』
アストラルは見たことあるの?
『見たことは無い。が、その名だけ知っている』
『我なら見たことがあるぞ』
レヴィ、ほんと?!
『500年ほど前に一度だけ姿を現した。だが、熾天使により消滅したはずだ。…それなのに何故姿を現したのかは分からん』
『邪神の力かもしれませんね。それを討伐しろと命令を下した魔王の意図は読めませんが…』
目覚めてないのに邪神の力、侮れないな…
レヴィ、特性とか知ってる?
『幻惑の香だな。それを吸い込むと大切な人の幻影が見え、攻撃の手が止まってしまう厄介な特性よ』
魔法無効化とかは無いの?
『断言は出来ん。幻惑の香に注意する他あるまい』
そうだね…戦いの中で攻略法を考えなきゃいけないか
『お嬢、倒せるのですか?』
倒してみせるよ。アシェルお兄さんとレーヴィお兄さんの実力も見てみたいけど
『ならば今、鑑定すれば良いではないか』
それもそうだね!レヴィ、良いこと言う〜!
名前:アシェル=サージェント 23歳
属性:火属性
スキル:焔獄の審判
紅蓮の守護壁
焔獄の審判 の効果は剣に超高密度の炎を纏わせ、一振りで巨大な火柱を発生させる広範囲殲滅スキル。
紅蓮の守護壁の効果は
自身の周囲に、物理・魔法の両方を弾き飛ばす「爆発する炎の壁」を展開するスキル。
ひぇ…アシェルお兄さん、チートや。火属性と言っても強いスキルをお持ちですやん
次はレーヴィお兄さんを鑑定しよう
名前:レーヴィ=サージェント 23歳
属性:風属性
スキル:瞬刻・天駆
嵐王の千閃
瞬刻・天駆の効果は風を足元に爆発させ、一瞬で数百メートルを移動、あるいは空中を歩くように移動する超高速移動スキル。
嵐王の千閃の効果は無数の真空の刃を放ち、広範囲の敵を一瞬で細切れにするスキル。
この双子は流石、騎士団隊長を務めているなってくらい実力の持ち主だ。アシェルお兄さんもレーヴィお兄さんもチートスキルだ!!
そりゃあフローラも自分を責めてしまうよね…こんな出来た兄たちに囲まれたらね…
『今はお主の方が強いではないか』
レヴィ、しっ!!アシェルお兄さんたちに私のチートスキルがバレたらいけないんだからね!
『兄たちにまでも隠し通すのか?』
そりゃそうでしょ!私のチートを知ってるのはジークベルト様とレヴィたちだけでいいの!
『お嬢、終焉の種子を討伐するにはお嬢のチートスキルが必要不可欠ですよ。それでも隠し通すことは出来ますか?』
いざとなれば眠らせたらいいんだよ!それならバレないから
『お主の眠り魔法は我らにも効いてしまうのだぞ?』
アストラルには効かないから何とかなるって
『我と姫君で終焉の種子を討伐してみせよう』
『主、無理はするなよ』
分かってるって!邪神が目覚めたらまずいし、そうなる前に倒すよ
『姫君は頼もしいな』
「……フローラ、俺たちの話を聞いていたか?」
「えっ…?」
「聞いてなかったみたいだな。終焉の種子は文献に載っていない新たな魔物だ。油断しないようにするぞ」
「分かっていますわ、アシェルお兄様」
「……ならいいが(フローラは従魔たちと話していたのか?謎は深まるばかりだな)」
「…(アシェルもきっとフローラについて考えているんだろう。……俺たちの妹は何かを隠してる。本人から聞くまで聞かないけど)」
「見えてきたな。姫君よ、降りてくれ」
「「…狼が喋った」」
お兄さんたちの声が揃ったよ。アストラルが急に喋ったから驚いたんだね
アストラルから降りると装飾品のような、息を呑むほど綺麗な花が咲いているのが見えた
「あれが、終焉の種子」
次回!終焉の種子の討伐開始!サージェント兄妹の実力は如何に…?!
初めて見る魔物だなぁ…
『さすがのお主でも臆するか?』
いや。全く、むしろテンション上がってきてる
『………』
なに、そのレヴィの呆れ顔は!
『主らしいと思ったまでよ』
熾天使でも消滅しきれなかった魔物を倒せるなんて、テンション上がるでしょうが!!ひゃっほう!
『…終焉の種子が憐れに思えてきたわ』




