平穏の危機。第二王子から告げられる『隣国からの陰謀』
こんばんは!23話からこの物語の真相に少しずつ迫っていきます。
平穏を望むフローラの元に、いきなり最大の危機が訪れます。
今回は、第二王子ルーカス殿下からの「緊急密告」。その内容は、隣国のわがまま姫と、この国の馬鹿王子が手を組んだという、最悪の共謀の知らせでした。
この陰謀は、単なる婚約者争いでは済みません。
物語は、いよいよ「世界の法則」と「運命」という名の壮大な舞台へと足を踏み入れます。
フローラとジークベルト様は、迫りくる「毒牙」から愛と平穏を守り抜けるのか。
ぜひ、第23話、お楽しみください!
拝啓 お父さん、お母さん。
優月です。サコヴィナ王国第二王子、ルーカス殿下から呼び出されて城の中庭でお茶を飲んでます。呼び出しから第二王子には2日待ってもらいました。昨日の勝負からジークベルト様も一緒です
……お茶の味なんてなかったんだ。
緊張で紅茶の味なんて感じない。
『お主でも緊張するのだな』
心外なんですけど!私だって緊張する時はするんだから!
『魔物には緊張しないではないか』
だって魔物はテンションが上がるから緊張なんてしないよ
『それがおかしいだろう…』
私は緊張のあまりレヴィと念話していた
第二王子が沈黙を破る
「急にお呼びだして申し訳ございません、アーチャー公爵にサージェント嬢」
「お気になさらず、ルーカス王子殿下。私たちに伝えたいこととはなんでしょうか?」
ジークベルト様、平然としてる!助かる!
「…ここで聞いたことは他言無用でお願いします。実は兄上であるセドリック第一王子が隣国のラゼボ王国第一王女、エステル様と密会をしているそうなのです」
「…密会?」
え、密会?!王子も王女も何してんの?!
「はい。兄上はサージェント嬢のことを気に入ってますし、エステル様はアーチャー公爵に好意を寄せてるでしょう?お互いにそれぞれ自分の物にするために手を組んだとか」
「……そう、ですか」
勘弁してよ。混ぜるな危険な二人が邂逅しちゃったんかい。……平穏が遠くなるな
『主よ、警戒しなければいけないかもしれんな』
え、なんで?
『お主はともかく、問題は若造だ。あのわがまま姫が前回のように簡単にはいくまい』
何か姑息な手を使ってくる、或いは禁忌の魔法で操るみたいな?
『おそらくな。…仮に禁忌の魔法で若造が操られ自我を失っても主なら何とかしてみせるだろうがな』
私のことを信頼してくれるようになったんだね、レヴィ…うっ、成長したね…
『ふんっ。お主の実力を身近に経験した結果だ。主として認めざるおえん』
レヴィ…!!
私は右側に飛んでいるレヴィを抱きしめる
『待たんか、主っ…!』
「サージェント嬢は従魔と仲が良いんですね、アーチャー公爵」
「えぇ。…(レヴィ殿が羨ましいなんて、重症だな…)フローラ嬢は魔物に好かれやすい体質ですから」
「サージェント嬢の左肩に乗ってる小さな狼の方は?」
「あれも彼女の従魔ですよ。フェンリルだそうです」
「フェンリル…?!」
「仮に第一王子がフローラ嬢に手を出そうとしても返り討ちにされるでしょう」
「そうですね…。ですが、アーチャー公爵は?」
「私も大丈夫ですよ。婚約者以外興味ありませんので」
「それなら良いのですが…」
第二王子とのお茶会の帰りの馬車の中で、私はジークベルト様に告げる
「ジーク様、ジーク様にアストラルを護衛として付けます。何かあっては遅いので」
「フローラ、それは…俺が頼りないからか?」
「違います。万が一に備えてです。ジーク様の身に何かあった時、アストラルにはいち早く私に伝えるようお願いをしてます。仮にジーク様がエステル王女殿下に禁忌の魔法で操られ自我を失った場合、事前に防ぐことは出来なくともアストラルならその魔法を軽く出来るかもしれないので」
「なるほどな…分かった。アストラル殿、よろしくお願いいたします」
「任された。姫君の望みだ。必ず公爵を守ってみせよう」
「……」
「ジーク様?」
「あ、いや。フローラが言っていた禁忌の魔法があるのかと思って…」
「禁忌の魔法は大体は闇属性だ。魔物である我々なら簡単に扱えても、扱ってしまえばその代償に自身の命を差し出すことになる。…あの王女が使うとも思えんが」
「レヴィ殿やアストラル殿でも禁忌の魔法は使ったことは無いのですか?」
「「ない」」
おぉ、即答だ。そりゃそうだよね、使えば命を差し出さなきゃいけないんだし…
「……でも、その禁忌の魔法をわがまま姫じゃなくて他の人が使ったらジーク様が操られるのか」
「…そうだな。あの王女ならやりかねん」
「エステル様ならやりそうだな…」
私は隣に座ってるジークベルト様を抱きしめ、真っ直ぐ彼の目を見る。
「もしジーク様が操られても……絶対、助けますから。大切な人を奪われるのは嫌なので」
「心強いな…。ありがとう、フローラ」
ジークベルト様は微笑んで抱きしめ返してくれた
『二人きりの世界に入るな、主』
入ってない!!
それから月日は流れて、第二王子のお茶会から1ヶ月経った今は平和そのものだった。馬と鹿王子とわがまま姫の企みの警戒は杞憂だったのかな…
『油断するなよ、主。そう言うときに限って足元を掬われるぞ』
そうですよね~…
あ、今はアストラルはジークベルト様の所にいます。そして今日はジークベルト様に会う日です!1ヶ月ぶりのジークベルト様だ!
『お主ら、毎日そのぺありんぐとやらの通信魔道具で話しておったではないか』
「声は聞けるけど、顔は見られないんだよ?ジーク様がSランク冒険者として忙しくなっちゃったから...会えないの辛かったんだから」
『若造はエレメンタル・コアを倒した功績が認められ、ますます冒険者として忙しくなったからな。……しかし主が新たに従魔にしたアストラルのことは誰も評価せんのだ』
「んー…多分だけど、アストラルは古の番人でフラグメントでしょ?レヴィくらいの長命種くらいしか知らないんじゃ評価出来ないんだよ。フェンリルの見た目してるけど、フェンリルとは違うし」
『……納得いかんな。我はもっと主が…』
「あ!ジーク様だ!!」
『我の言葉を遮るな!』
自室の窓からジークベルト様が馬車から降りてくるのが見えたから、部屋から出て迎えにいく
「ジークベルト殿、ようこそ。娘のフローラも待ちわび…」
「ジークベルト様!お久しぶりです!」
「っと、…これは嬉しいお迎えだな」
勢いよくジークベルト様に抱きつくと、彼はよろけることなく、しっかり受け止めてくれる
『この状況でなぜ主は若造に好きと伝えてないのだ…』
『公爵は公爵でこの状態を楽しんでおるのだろう…』
『アストラル、久しいな』
『レヴィ、姫君の身の回りに怪しい動きは無かったか?』
『今のところは無い。……アストラルよ、主にこの世界のことを話してはどうだ?』
『…少しずつ話していくつもりだ』
なーに、二人で話してるのかな?私にも聞こえてるってことを忘れちゃあいけないですよ?
『分かっている。姫君、公爵と二人きりになってくれ』
オッケー!任して!
「ジークベルト様、私の部屋でお話しませんか?」
どうだ!必殺、上目遣い!
「っ…もちろん、……カイト伯爵、フローラ嬢と話してきます」
「……ジークベルト殿はフローラに会いに来たのでしょう?私の許可を得る必要はない」
「じゃあ行きましょう、ジークベルト様!」
ジークベルト様は私をお姫様抱っこをして私の部屋まで運んでくれた。
部屋に入ると私をお姫様抱っこしたまま、ソファに座ったジークベルト様が口を開く
「………フローラ、あまり可愛いことをしないでくれ。顔が緩みそうになったから」
「え?」
「伯爵の前では俺も公爵としての威厳を保ちたいから」
「……早くジーク様と二人きりになりたかったもん(頬を膨らませる)」
「かっ...!(可愛い…!反則級の可愛さだ…)」
『若造、悶えておるな』
『姫君には敵わないみたいだな』
「…アストラル、この世界のこと教えてくれるんでしょ?」
「…フローラっ?切り替え早くないか?」
「そうだな。何処まで話したか...」
「この世界は数億年前に神々によって創造されて、大崩壊の際に神々が古の番人を生み出したところまでだよ」
「公爵も聞くが良い。今より遥か昔の話だ。この世界は数億年前、神々が創造し造られた世界だ。そして今から1万年前、神々と敵対する邪神との戦いにより世界は大崩壊の時代となる。戦いによって満身創痍した神々が眠りにつく前に、五体の古の番人を生み出し眠りについた」
「………大崩壊」
ちゃんと聞いたら聞いたで、なんか壮大な話だよね。この異世界って令嬢ものの可能性低くなってきてない?令嬢ものって言ったら、学園に通ってとか、婚約破棄からの復讐とか、どれも当てはまらないんだよなぁ…フローラは悪役令嬢ってポジションじゃないし...
次回!アストラルが語る、古の番人の話でテンション上がります!!
邪神って中々聞かないなぁ…RPGくらい
『流石のお主でも臆するか?』
いや。むしろ倒したくなるね!
『なぜそうなるのだ…』
RPGの醍醐味だから!!
第23話をお読みいただきありがとうございます!
急にルーカス殿下が怖い情報を運んできて、フローラちゃんも気が気じゃなかったでしょうね…。馬鹿王子とわがまま姫が手を組むなんて、本当に「混ぜるな危険」な組み合わせで、平穏が遠のく一方です。
そして、ついにアストラルから語られた「大崩壊」と「邪神」という、世界を揺るがす裏設定!
フローラちゃんの「これ、令嬢ものじゃなくなってる?」というツッコミは、読者の方々の気持ちを代弁しているかと思います(笑)
チートな力を持つ彼女は「悪役令嬢」でも「ざまぁ」する立場でもなく、「平穏を求めながらも、愛する人を守るために邪神討伐を目指すRPG主人公」へと、運命に巻き込まれていきます。
次回は、アストラルから「古の番人」の五体全てについて、より詳細な話を聞くことになります。彼らが何を司り、なぜ今、目覚め始めているのか。次章のバトルへの重要なヒントが開示されますので、ぜひお見逃しなく!




