チャンス
予告していた連続投稿を開始します。
投稿1日目です。
よろしくお願いします。
.
「昨日は厨房の火事に回復魔法を使ってくれてありがとうな。校長からめちゃくちゃ褒められたぞ。」
登校していると、ハンレーに声をかけられた。
「やれる事をやっただけですわ。」
「かっこいいな。後、今日の算数の授業で良かったんだよな?」
「ええ。3日経ちましたから、算数になったら、教科書の事を相談しますわね。」
「わかった。じゃあ、また教室でな。」
わざわざ確認しに来てくれたらしい。
有難い。
さあ、今日は、ガーベラにバレない様にハンナを助けるわ。
教室に着いたら、教科書の準備をしよう。
〜算数の授業〜
「これから算数の授業を始める。前回はこの図形をやったが……。」
「リッツ先生、すみません。教科書が破れていて……。」
「教科書が?見せてみろ。」
ハンレーは役者だ。
全く事前の打ち合わせをした様には見えない。
まるで初めて聞いたことの様に対応している。
「本当だな。乱丁本だろう。替えを後でやるから、今日は隣の席のエスタロッサに見せてもらえ。」
「わかりましたわ。」
「他の奴らも全部の教科書に破れや汚れがないか確認しとけ。あったら、替えてやるから。さて、さっきの図形だが……。」
ハンレー凄い。
これで、教科書が破られても、先生に相談しやすくなる。
ガーベラも指示しづらくなっただろうな。
「これで、算数の授業は終わりだ。後、魔法研究発表会について知らせておく事がある。夏休み前のテストで、ゲッティ皇国へ向けての手紙があっただろう。最優秀のエスタロッサの手紙は実際に送られて、大使が魔法研究発表会に参加する事になった。他国のお客様が見に来るんだ。皆、しっかりした発表ができる様に準備しろ。それから、エスタロッサはゲッティ皇国大使からの要請で、当日のアテンドにつく事になった。発表と同時進行にはなるが、当日の流れも伝えて置かなければならない。一緒に職員室に来い。」
「私が大使のアテンドに!嬉しいですわ。」
エスタが頬に両手を当てて驚いている。
「特別外交官のバッチがあってこそだ。当日は王宮からもアテンドが来るから心配するな。1人はエスタロッサの親父だ。」
「お父様も学園にいらっしゃるのですね。」
「ああ。続きは職員室で話すぞ。」
「かしこまりました。」
エスタは、ハンレーの後を慌ててついていった。
「エスタすごいね。」
「テストの手紙。良質な紙が使われているとは思ったけれど、そういう事だったんだなって、納得したよ。」
「エスタさん、嬉しそうでしたわね。」
「学園生としての参加だけれど、外交官の仕事をする様なものだから、エスタにとっては凄く嬉しいんだろうね。ゲッティ皇国の大使は前にもあって気に入られているからやりやすいだろうし、エスタのお父様がフォローに入るなら、尚更やりやすそうだ。」
小声でハンナが話し出す。
「……ガーベラ様が私を凄く見てますわ。」
私もこっそりガーベラの方を見る。
「いや、あれは睨んでいるわ。」
「本当だ。ハンナはちゃんと指示通りにやったのに、お気に召さなかったみたいだな。」
「まあ、いじめているはずの私がまったく困っていないからだろうね。」
「ハナさんを困らせるなんて、本当はやりたくないですのに……。」
「ハンナは、1人にならない様に注意して、指示を受けない様にしよう。もし、手紙とがで指示されたら、それを証拠にするからしっかり取っておいてね。」
「わかりましたわ。」
今できるのは、これ位だろう。
ガーベラからのいじめが、これで終わるとは思えない。
自分で仕掛けてくれるなら、いっそ楽なんだけれど。
「皆、聞いて欲しいの!」
興奮したエスタが教室に帰ってきた。
「おかえり。どうしたの?」
「王宮からのアテンド、お父様の他にランスロット様が来るのよ。」
「ランスロット様って、エスタの好きな人?」
「声が大きいわ。小声で話して。でも、確かにそうよ。去年の副会長で、今年の4月から王宮の外交官になった先輩よ。学園の事を良く知っているから選ばれたんですって。」
「エスタさん、良かったですわね。気になっていた方と急接近のチャンスですわ。」
ハンナが両手の拳をぎゅっと握る。
「ええ。このチャンスを頑張るわ。外交官としてのアテンドもしっかりやりつつ、ランスロット様とも近づいて見せる!!そのためには、魔法研究の発表原稿をしっかり作らないと。皆、協力してくれるわよね?」
「勿論だよ。」
「任せて。」
「頑張りますわ!」
そこからは早かった。
魔法研究の時間に、各々大きい模造紙に研究内容をまとめて、発表原稿を作る。
実際に模造紙を見せながら、発表原稿を読んで、時間以内に話せるか確認をする。
参考文献を探すのに時間がかかったりはしたけれど、とても良いものに仕上がったと思う。
職員室でハンレーに模造紙と原稿を見てもらった。
「4人とも良いな。結界魔法も回復魔法も有用な事は前から知られているし、円型の発動や実例があるのはわかりやすくていい。ハンナの鑑定が事件の証拠にも使える事は分かっていた。鑑定魔法の概念が変わったからな。今回の魔法研究発表会でさらに大きく認知されたら、賞賛されるだろう。ただ翻訳魔法が動物にも使えるのは知らなかったぞ。これも翻訳魔法の革命が起きるんじゃないか?」
「ぜひ、翻訳魔法の革命を起こして見せます。まあ私は、ハナのアドバイスに従っただけなんですけれども。動物と話してみようと思った事がなかったから、盲点でしたわ。実際の発表会には、鳥にお願いして一緒に参加してもらおうと思ってますの。」
「エスタロッサは、貪欲で良いな。よし、俺が許可するから、存分にやれ。」
「かしこまりましたわ。」
2人で固く握手している。
「ふふふ。大使の前で私が有能な所を存分に見せますわ。」
エスタのやる気が燃えていた。
「私達もエスタさんに負けずに頑張りましょうね。」
「ああ。毎回王族が1人は参加するのが通例だからね。今年は、フェーンが来るっていうし、私も負けないよ。」
「私も真の聖女と呼ばれるからには、回復魔法で気は抜けないわ。」
「学者や研究者の方にもアピールする良いチャンスですからね。グリーン子爵の為にも、鑑定魔法の素晴らしさをお見せしないとですわ。」
私達4人はうふふと笑いあった。
.
読んで頂きありがとうございます。
明日も投稿しますので、よろしくお願いします。
感想や評価をお待ちしています!




