コンプレックス
本日連続投稿最終日です。
5日連続で投稿することが出来てほっとしてます。
皆さんのおかげです。
仕事と両立させて投稿これからも頑張ります。
6月下旬の連続投稿も考えていますので、宜しくお願いします!
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「ラメラ先生、事務さんが腰を痛めたらしくて、診てもらえますか?」
保健室に飛び込んできたのは、男性を横抱きに抱えたルーンだった。
「あら、大変。そちらのベッドにうつ伏せに寝かせて貰えるかしら。」
「わかりました。」
ルーンはベッドに男性を寝かせる。
後頭部がきらりと光る。
男性は軽いうめき声をあげた。
「どうして腰を痛めたのかしら?」
「書類の入った箱を持ち上げようとしたら、腰がぐきっといいまして、今も痛んでいます。」
「ああ、魔女の一撃ね。それは、痛みを和らぎながら、我慢するしかないわね。」
「この痛みは治らないのですか……。」
男性は苦痛の表情を浮かべる。
「普段ならね。ただ今日は特別に保健室の助手で聖女ちゃんがいます。さあ、早速出番よ。」
コーヒーを飲む暇もなく、回復魔法を使う時がきた。
魔女の一撃は良くわからないけど、腰がぐきっといって痛みを感じているなら、ぎっくり腰かな?
男性の腰の上に手をかざす。
「回復魔法を使いますね。」
「お願いします。」
腰の辺りがじわじわと白くひかる。
ついでに全身も光っていた。
「おお!!素晴らしいです。腰の痛みが綺麗さっぱり無くなりました。普段から腰痛と肩こりがあったのですが、それもありません。」
ベッドにうつ伏せになっていた男性は立ち上がる。
「本当にありがとうございました!」
男性は何度も頭を下げる。
「いえ、全然良いのですわ。ただ、魔法研究に今回の事を発表しても大丈夫でしょうか?」
「ええ。勿論です。運んできてくれた君もどうもありがとう。」
「いや、大した事はしていないです。」
「ナイス筋肉だったよ。」
男性は、ルーンの肩をバシバシと叩くと、自分の足で保健室を後にした。
「流石、聖女ちゃん。素晴らしい活躍ぶりだわ。この調子でお願いね。」
「わかりましたわ。」
「先輩は聖女だったんですね。」
ルーンの尊敬の眼差しがすごい。
「一応そうに呼ばれていますわ。怪我したら治すからいつでも言って下さいね。」
ルーン、普通の男性を横抱きにできる位、筋肉がついたのね。
毎日筋トレを頑張っている成果がでたんだわ。
「ありがとうございます。怪我した時はぜひ、お願いします。それでは、僕は失礼します。」
ルーンは、ラメラ先生に頭を下げると出ていった。
「ハナは流石ね。」
「あっという間だった。」
「3日間、誰も患者が来ない事も考えていたから、来てくれて良かったわ。さあ、コーヒーを飲みましょう。」
「失礼致します。」
「あら、また怪我人?」
入ってきたのはハンナだった。
「この子は、私の友達ですわ。」
「あら、そうなの。じゃあ、一緒にコーヒーを飲みましょう。」
ラメラ先生は、ハンナの分もコーヒーを淹れてくれた。
「無事に終わりましたわ。」
「良かったね。」
ラメラ先生がハンナの前にコーヒーを置く。
「さあ、ラメラ先生の特別コーヒーよ。召し上がれ。」
ラメラ先生の入れてくれたコーヒーは、凄く美味しい。
この世界に来てから飲むものといえば、紅茶だったから、コーヒーは凄く久しぶりだ。
「苦い。ラメラ先生、これって本当に飲み物ですか?」
「コーヒーは苦いものなのよ。ミルクや砂糖があるから自分で調節してね。」
「本当ですわ。ミルクや砂糖を入れると美味しいです。」
「そうなのよ。美味しいし、眠気を飛ばして、しゃっきりさせてくれるから私のお気に入りの飲み物なの。」
ラメラ先生はうふふと笑う。
その後は保健室に怪我人が来る事はなく、お喋りして時間が過ぎた。
「明日もよろしくね。」
「任せて下さい。」
笑顔のラメラ先生に見送られながら、保健室を後にした。
「コーヒー飲みながら、お話出来るなんて、保健室は良いところだね。」
「ラメラ先生も優しいですものね。」
「私達3人にも優しいし、明日からも行きやすくて良かったわ。」
「後2日付き合ってもらえるかな?」
「勿論ですわ。」
教室に帰って算数の教科書をこっそり確認すると、ページの隅の方に切れ目がはいっていた。
これは破るじゃなくて、破れそうな状態ね。
教科書の破れを伸ばせばこのままでも読めるわ。
ハンナ、虐めるのが全く向いていないわね。
私は静かに笑うと教科書を元に戻した。
〜2日目〜
「ラメラ先生、今日もよろしくお願いします。」
「待ってたわ。よろしくね。」
ラメラ先生は、今日もコーヒーを入れてくれた。
「また、怪我人がくるまでお話してましょう。」
ガラガラ。
「少し、よろしいかな?」
「校長先生!どうされましたか?」
保健室に入ってきたのは、学園の1番偉い人だった。
立派なスーツにスキンヘッドのおじいちゃん先生だ。
「おっほん。あー、ここで回復魔法を受けると肩や腰の痛みが良くなると聞いてね。最近痛みが酷くなってきていて……。私にも回復魔法をかけて貰えるだろうか?」
「勿論ですわ。聖女ちゃん、大丈夫よね?」
「はい。大丈夫です。」
「良かった。よろしく頼むよ。」
「校長先生、こちらの椅子にどうぞ。」
校長先生が椅子に座ると、目の前に立ち、両手をかざす。
目が合う。
偉い人だから緊張するな。
「回復魔法をかけますね。」
「ああ。」
校長先生がうなづくのを確認すると、魔法をかける。
全身が白くなった。
「おお!身体中が軽い。回復魔法をかけてもらえて良かったよ。」
校長先生は嬉しそうに言った。
「お役に立てて良かったですわ。」
「ホイップ名誉男爵、ありがとう。君は優秀だね。魔法研究を楽しみにしているよ。それでは、失礼する。」
校長先生は、嬉しそうに教室を後にした。
「校長先生が来るなんて想定外だったけれど、聖女ちゃんの魔法は流石ね。」
「無事に治って良かったです。」
その日もそれ以上、怪我人は来なかったので、5人でコーヒーを飲んで終わった。
〜3日目〜
4人で保健室に行くと何故か列が出来ていた。
しかも、男性教師ばかりだ。
皆期待する様な目でこちらを見ている。
私達が保健室に入ろうとするとさっと退いてくれた。
「一体、なんだったんでしょうか?」
「聖女ちゃん、待ってたわ。」
「ラメラ先生、外の列はなんでしょうか?」
「それは、俺から説明する。」
保健室の中にはラメラ先生だけではなく、ハンレーもいた。
「リッツ先生?どうしたんですか?」
「ジジイどもに直談判されて、しょうがなく出てきたんだ。列整理だけでも面倒だった。外の奴らは皆ハナの回復魔法が目当てだよ。」
「皆さん、怪我をされているんですか?」
「いいや、違う。皆ハゲを治しにきたんだ。」
「ハゲですか?」
え?
ハゲって頭の?
「ああ。2日前に腰を痛めた事務員が来ただろう?昨日、その事務員の後頭部から髪の毛が生えてきたのを、校長がめざとく見つけてな。スキンヘッドの校長も昨日回復魔法を受けただろう?今日、髪の毛が全体的に生えてきたんだよ。まだ、一ミリくらいだが、元がスキンヘッドだったから目立ってな。それで、ハゲ達がみんな校長に話を聞いて、今日保健室に群がったわけだ。今日でハナの保健室の助手は終わりだから、魔力がなくなる前に、受けたいと凄い騒ぎだったよ。」
外で待っていた先生達、確かにみんな頭が寂しかった様な……。
本当に皆、ハゲを治しにきたの?
「ふふふ。」
ベルが笑った。
「わらうな。本人達は至って真面目だから、一生根に持たれるぞ。笑うなら、皆帰ってからにしろ。」
帰ってから笑うのは良いんだ。
「聖女ちゃん、そういう訳なの。回復魔法を使ってもらえるかしら?」
「勿論ですわ。」
「じゃあ、1人ずつ保健室に入れるわね。」
ラメラ先生が1人の教師を保健室に入れて、椅子に座らせる。
「おほん。肩こりが酷くて、回復魔法をお願いします。」
「わかりましたわ。」
誤魔化そうとしているのは、分かるけれど、ネタがわかっているから、笑ってしまいそう。
でも、本人にとっては酷く真面目なのよね。
笑わない様に気をつけなきゃ。
「回復魔法をかけますね。」
「よろしくお願いします。」
目が本気だ。
私は手をかざすと回復魔法をかける。
全身が白く光る。
「おお!体が楽です。本当にありがとうございました!」
嬉しそうに教師は去っていった。
「次の方いれるわね?」
「はい。」
それから6人の先生を治した。
6人が6人とも肩こりや腰痛を治しに来たと言っていたので、帰った後にハンレーが大爆笑していた。
「俺には、はっきり言い切ったのに、ハナには言えないのか。笑える。」
おなかを抱えて大笑いだった。
「面白いもの見れたわ。ありがとう。じゃあ、ハナ。この後も頑張れよ。」
ハンレーは笑うだけ笑うと、保健室を出ていった。
「聖女ちゃん、変なことに巻き込んでごめんね。」
「いや、お役に立てたなら良かったです。皆さん、魔法研究に書いてもいいと言ってくれましたし。」
「一応念のために言っておくけれど、ハゲが治ったことは書いちゃダメよ?」
「勿論です。絶対書きませんよ!」
ラメラ先生の発言にみんな思いっきり笑った。
ドンドン。
凄い音でノックされる。
保健室のドアが勢いよく開いた。
「大変です!ラメラ先生、すぐに来てください!」
髪の毛が焦げた男性が保健室に駆け込んできた。
「調理場で火事があって!」
「すぐ行くわ。」
ラメラ先生が素早く走り出した。
私も後を追いかける。
男性も調理場に向かって走り出した。
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読んだ頂きありがとうございます。
次の投稿は2日空けて、3日後の6/23です。
評価や感想お待ちしています。
これからもよろしくお願いします。




