鑑定魔法
6/7、祝20000pv。
よろしくお願いします。
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「ベルが、ラプン男爵領のピンククオーツを知らない?そんなことあるの?」
「流石に自分の領地で、とれる宝石位は知っているよ。ただ今まで、ピンククオーツがとれたなんて聞いた事がないんだ。」
ベルが首を傾げる。
「私も昔、エッグ商会の為に各地の宝石を勉強しましたが、ラプン男爵領でピンククオーツがとれるというのは、知らなかったですわ。」
「私もテストの為に勉強したけれど、聞いた事ないかも。ハンナ、もう一度鑑定して欲しいわ。今度は、このピンククオーツの産地と採掘者と採掘責任者と購入者をお願い。」
「かしこまりましたわ。」
ハンナが神に祈る。
「わかりましたわ。産地はラプン男爵領。採掘者は、ヒロシ=イシイ。採掘責任者は、ダイアン=リンクル。購入者は、コンゴウ=リンクルとハナ=ナコッタ=ホイップですわ。」
「うわぁ……。採掘責任者の名字がリンクルなのが、凄く怪しいわね。確か、リンクル宝石店は、リンクル男爵の親戚一同での家族経営だったわよね。しかも、ラプン男爵領と領地が隣よ。」
「これってまさか、ラプン男爵領のピンククオーツをこっそり隠して採掘してるって事なのか?」
「残念ながら、私の鑑定魔法は、今まで一度も間違っていた事がないのですわ。」
4人とも黙ったまま、私のピンククオーツで出来たイヤリングを見つめる。
「とりあえず、私はお父様に速達で手紙をだすよ。後、リッツ先生にも相談してみる。家族の事でも相談に乗ってくれるって言ってたから。」
「それが良いと思うわ。今の時間なら、きっと職員室よ。」
ベルが椅子から立ち上がる。
「3人とも一緒に来てくれない?リッツ先生に事情を説明すると、そのピンククオーツをハンナにもう一度鑑定してもらう必要があるかもしれないから。」
「勿論よ。」
私達も立ち上がると、ベルと一緒に職員へ向かった。
「お前ら、研究発表会の準備はどうしたんだ?」
職員室に行くと不思議そうな顔をしたハンレーが出迎えてくれた。
「実は、ラプン男爵領のピンククオーツをリンクル男爵が盗んでいるかもしれない事がわかりました。」
「はあ?ベル、どういう事だ。どうして、そんな事がわかったんだ?」
「私の鑑定魔法で、ハナさんのピンククオーツのイヤリングを調べたら、産地がラプン男爵領。採掘者が、ヒロシ=イシイ。採掘責任者が、ダイアン=リンクル。購入者がコンゴウ=リンクルとハナ=ナコッタ=ホイップとでましたの。」
「おいおい、まじかよ。鑑定魔法ってそんなことできるのかよ。凄すぎないか?しかも、採掘者のヒロシ=イシイって捜索願いが出されている異界人じゃねぇか。」
ハンレーが、額に手をやる。
「大事すぎて、俺の手に余る。異界人の捜索は、王妃殿下が主導で行っていた筈だ。それに、他領の宝石を盗んでいたなら、国王陛下にも相談が必要になる。王宮に手紙を飛ばすぞ。」
「わかりました。私もお父様に速達で手紙を出します。」
「緊急事態だ。オリビア=クーヘンの羽魔法が1番早い。連れてくるから手紙をここで書いてろ。」
ハンレーが真っ白な便箋と封筒を置いて、外に出ていく。
「オリビア様は、先ほど図書室の一階で見ましたよ!」
「わかった。ありがとう。」
遠くから、ハンレーの声が聞こえてきた。
ベルが椅子に座ると勢いよくペンを動かして、手紙を書いていく。
「大変な事になりましたわね。窃盗に誘拐ですか。」
「ハンナのお陰で、事件が2つも解決しそうね。」
「魔法の研究をしていただけなのに、急展開だわ。」
「私が1番こんなことになるなんて、思っても見ませんでしたわ。ハナさんのアドバイスが凄すぎたのですわ。」
まさか、こんな事になるなんて、思いもしなかった。
このピンククオーツ、盗品だったんだ……。
「よし、書き上がった。」
ベルがペンを置くと、便箋を封筒に入れた。
「オリビアを連れてきたぞ。」
ハンレーとオリビアがやってきた。
「先生、寮に帰らないと封蝋がないです。」
「学園の封蝋を貸してやる。至急の意味がある封蝋だから、大丈夫だろう。俺も国王陛下宛に手紙を書く。5分待ってろ。」
封蝋を取り出すと、ハンレーも手紙を書き始めた。
季節の挨拶から書いているが、凄いスピードだ。
あっという間に書き上がった。
「よし。蝋も垂らした。オリビア、王宮とラプン男爵領宛に手紙を頼む。」
「かしこまりました。羽さん、手紙をお願いします。」
手紙の封筒から真っ白な羽が生えると、窓の外へと手紙が飛び立った。
「王宮のお父様の所へは、5分程度で着くと思います。ラプン男爵領へも馬を飛ばすより、長くはかからないでしょう。」
「オリビア助かった。ただ、手紙を飛ばした先のことは、内緒に頼む。緘口令がひかれるかもしれないからな。」
「かしこまりましたわ。ホイップ名誉男爵、またお会いしましたわね。それでは、私は研究に戻りますので、失礼致します。」
オリビアは私に向かって微笑みかけると、一礼して職員室を去っていった。
「はあ。とりあえず、返事が来るまではどうしようもないから、待機だ。今年の俺のクラスは、凄いことしか起きないな。聖女の編入生に、劇の事件、夏休みの馬車の事故に0点のテスト、今度は盗みに誘拐の証拠を発見か。」
「全部、ハナさんですわね。」
「うん。ほぼハナが関わっているね。」
「流石、真の聖女ね。」
「全部たまたまですわ。」
「ハナ、名誉男爵まで貰っておいて、それは無理があるぞ。」
ハンレーの困ったような微笑みが辛い。
「本当に偶然ですわ。」
誰もうなづいてくれなかった。
「申し訳ないが、そのアクセサリーは証拠品になるから、一度俺の方で預からせてもらうな。」
「わかりましたわ。イヤリングもネックレスを両方お渡ししたす。」
「ああ。ハナは他にもアクセサリーを持っているだろう?そっちを当分つけるんだな。」
「はい。そうしますわ。」
ハンレーがくれたピンクダイアモンドのアクセサリー。
普段からつけるには高級すぎるんだけれどな。
でも、せっかくつけて欲しいと言われたからつけよう。
「よし。お前らも魔法の研究に戻れ。また、困り事が出来たら、いつでも聞いてやる。それに、ベル宛に手紙が来たら、すぐ教えてやるから。王宮からのは、明日の朝には来るだろうよ。」
「先生、よろしくお願いします。」
ベルがハンレーにお辞儀をする。
私達は、教室に戻った。
「オリビアちゃんから話は聞いたよ。」
教室にはショーンとアリッサが椅子に座って待っていた。
「皆さんも座ってください。1年生達から、リッツ先生が慌ててオリビアを連れて行ったと聞いた時は驚きましたわ。その後にオリビアから、至急で手紙を飛ばしたとだけ聞いたのですが、今までの経験上、ホイップ名誉男爵が絡んでると思ってここで、待っていましたの。」
私達も2人の前の席に適当に座る。
「アリッサ様、お見事ですわ。その通りですの。」
「ちょっとハンナ。そんな事はないわ。」
「ハナのアドバイスがなかったら、こうはなっていなかったから、私もハンナのいう通りだと思うわよ。」
「そうそう。これから、緘口令がひかれるかもしれませんが、お2人なら知っていても構わないと思いますので、お話します。ラプン男爵領の宝石をリンクル男爵領が盗んでいる疑いと、リンクル男爵が異界人を誘拐した疑いがあります。」
「驚きだな。何故、その疑いがでたんだ?」
「ハンナの鑑定魔法でピンククオーツの産地と採掘者と責任者を調べた結果です。」
ショーンは少し考えると、大きくうなづいた。
「そういう事か。鑑定魔法をそういう風に使った事も驚きだな。」
「ハナさんの発想力が素晴らしいわね。」
「その2つの疑いなら、母上も父上もすぐ対応するだろうから、心配ないよ。ラプン男爵令嬢は、安心するといい。」
「お心遣いありがとうございます。」
「構わないよ。将来の義理妹になるのだから。もっと迷惑をかけてもらっても困らないよ。」
ベルが曖昧に微笑む。
「困らせてしまっているわ。」
「すまない。」
場の空気が冷える。
「そうですわ。王太子殿下に夏休みのお土産があるのです。」
私は自分の鞄の中から、アロマオイルを取り出す。
「アリッサ様には夏休みにお会いできましたが、王太子殿下には会えなかったですから、こちらほんの少しですが、良かったら使って下さい。元気が出ると言われるオレンジのアロマオイルですわ。」
「ありがとう。嬉しいよ。」
ショーンは受け取ってくれた。
「ショーンは、グリーン子爵領に行けなくて残念だったわね。」
「流石に王族が2人向かうのは無理だったんだ。次は一緒に行こう。」
「楽しみにしていますわ。」
アリッサが優雅に微笑んだ。
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読んで頂き、ありがとうございます。
最初にも書きましたが、皆さんのおかげで、6/7に祝20000pvを達成しました。
祝50話も記念しまして、6/16から連続投稿をしていきたいと思います。
連続の投稿数については、6/13以降にお知らせさせて頂きます。
これからも、どうぞよろしくお願いします!




