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具体的なイメージ

祝50話

よろしくお願いします。

.


階段を登ると2階には、ライがいた。


「ホイップ名誉男爵。話すのは1学期振りですね。元気でしたか?」


「とても元気ですわ。シュマロ公爵子息もお元気ですか?」


「ええ。私もとても元気です。ホイップ名誉男爵になったお話を聞きましたよ。馬車の事故の件は大変でしたね。」


「友達のラプン男爵令嬢も事故に遭って、たまたま近くにいたから、回復魔法をかけられただけなんですの。」


「いいえ。貴女が近くにいなければ、フェーン殿下もゲッティ皇国夫妻も無事では無かったでしょう。この国の貴族として、貴女に感謝を申し上げます。」


「顔を上げてください。」


ライは、ボウ・アンド・スクレープを私にしていた。

基本的には身分が上の人にしかやらないお辞儀だ。

公爵子息が名誉男爵にしたら困ってしまう。

慌てて周りを見渡すが、ライの友達数人からも頭を下げられた。


「困ってしまいますわ。」


「貴女を困らせるのは、本意ではありません。」


ようやく頭を上げてくれた。


「感謝の気持ちは、とても良く伝わりましたわ。ありがとうございます。私からは、普段おすすめの参考書をお聞きしているお礼ですわ。ナコッタ男爵領のアロマオイルです。紙や石や布にかけて香りをお楽しみ下さい。」


「成程。一緒に入っている紙についているのが、この匂いですね。さすが、ナコッタ男爵領。柑橘の香りがします。」


「グレープフルーツの香りですわ。シュマロ公爵子息には爽やかな香りが似合うと思いまして、選ばせて頂きました。」


「ありがとうございます。私からの贈り物も後で考えておきますね。」


「いいえ。参考書のお礼ですから。どうしてもと仰るなら、またおすすめの参考書を教えて下さいませ。」


「勿論ですよ。楽しみにしていて下さい。」


「ありがとうございます。楽しみですわ。では、失礼致します。」


お辞儀をして、にこやかにその場を去る。

エスタ達を探そう。

3階を探した後、階段を登ると、4階に3人の姿を見つけた。


「ハナ、遅かったわね。」


「オリビア様にだけではなくて、シュマロ公爵子息とも話していたから遅くなったわ。ごめんなさい。でも、みんながアイコンタクトだけで察してくれて嬉しかったわ。」


「あれは伝わるよ。」


「先に行ってて下さいと、しっかり伝わりましたわ。」


「良かったわ。それで、良い本は見つかった?」


「ダメね。借りようと思っていた本が、全部無かったわ。これだけ人がいると、借りられちゃうわね。」


「そうね。人が多いものね。」


4階から下の階を見下ろすと沢山の人がいるのがわかる。


「これはどうでしょうか?」


ハンナが差し出した本は『魔法の基礎』だった。


「この本は、ナコッタ男爵領にもあったわ。」


「貴族は小さい頃に必ずと言って良いほど読んでいる本だよね。」


「学園で勉強した今だからこそ、もう一度基礎を振り返ってみると面白いかもしれませんわよ。」


「確かに良い本はもうないし、そうしようか。4人で話し合えば、理解も深まるかもしれないし。」


「ずっと探しているとそれだけで、時間が終わりそうだし、賛成だわ。」


私達は、借りる手続きをすると図書館を後にする。

途中でオリビアが、私に向かって手を振ってくれたので、私も小さく振り返した。

笑った顔がかわいい。


「オリビア様と、とても仲良くなったんですのね。」


「サインして欲しいと言われたわ。」


「完全にハナのファンね。」


「可愛いファンだから、大歓迎よ。」


「それで、どんなサインをしたの?」


「自分のサインなんて考えたこともなかったから、名前の最初の文字を適当に崩して書いたわ。」


「有名人で書き慣れている人以外は、大体そうだよね。」


茂みを大きく回り込み、教室を目指す。

4人で話していれば、教室まですぐついた。

早速、本を広げる。


「そう言えば、ハナは回復魔法。ベルは結界魔法。ハンナは鑑定魔法よね。私は翻訳魔法。4人とも1人で魔法を検証するのは、難しいわよね。」


「そうだね。私の結界魔法は1人で結界ははれるけれど、どの位の強度かとかわからないからね。これが水魔法とかだったら、1人で検証できただろうけれど。」


「私、友達がいて良かったと思っているわ。」


「私もですわ。」


「まず、魔法についてだけれど、みんなは魔法を使う時にどんなイメージをしているの?」


「私の場合は、自分や相手を守りたいと思っているよ。ただ結界の範囲が広がるのが遅いんだ。」


ベルの指先が光ると半透明の膜が現れ、じわじわと手を覆っていく。

確かに、ナマケモノのゆっくりした動き位の遅さだ。

結界を張る速さは、遅いと言って良いだろう。


「ベルは、体の周りにボールみたいな円形で結界をはるイメージとかだと発動しないの?」


「ボールの様な円形?そうか。自分が中心となって展開されればいいのか。」


まだらに結界が現れると3秒ほどで、ベルを中心とした半透明な円が出来上がった。


「出来た……。速さをあげようとあれだけ努力してきたのに、まさか最初から円で発動をイメージするだけで、こんなに発動が早まるなんて……。これで、この間の事故みたいな事が起きてもすぐにはれる。」


一度結界を消すと、再度結界をだす。

次は2秒くらいで円形になった。


「円の発動になれれば、もっと時間も短縮出来そうだ。ありがとう。ハナ。とっても嬉しいよ。」


ベルに抱きつかれた。


「私はアドバイスしただけだから。何もしてないよ。」


「そのアドバイスが的確だから良いんだよ。」


「是非、私にもアドバイスして欲しいわ。私の魔法は翻訳だから、相手が何と言いたいか知りたいと思って聞いて、相手に伝えたいと思って話しているわ。」


「的確なアドバイスが出来るかはわからないんだけれど、気になってた事はあるわ。エスタの翻訳って人だけなの?動物の言葉とかは翻訳されないの?」


「た、試したことがないわ。確かに動物も話しているのなら、もしかしたら……。ちょっと、鳥の声でも聞いてみるわ!」


エスタは窓際に移動すると、鳥の声を聞き始めた。

しばらくすると、エスタの口から、鳥の鳴き声の様な声が出る。


「話せちゃったわ……。もうすぐ雨がふるから気をつけた方が良いですって。ハナのアドバイス、凄すぎるわ!」


エスタも勢いよく、私に抱きついてくる。


「ありがとう。ただ疑問に思ってた事を聞いただけなんだけれど、役だったなら、良かった。」


「私にもアドバイスをください!私の鑑定魔法は、詳しくわかりますようにと神に祈りを捧げています。」


「ハンナが鑑定すると何がわかるの?」


「名前と簡単な使い方がわかりますわ。」


「実際にこの宝石を鑑定してもらえるかな?」


ハンナの前に普段から使用しているピンククォーツのイヤリングを見せる。


「任せてください。」


ハンナが手を組むと目を瞑って祈りだす。

白い光が一瞬光って消えた。


「わかりましたわ。ピンククオーツのイヤリングですの。使い方は、耳たぶに挟んで使いますわ。」


「正解。そうだね。こうしたら、どうかな?」


私は紙に表を書く。


名前

材質

使い方

産地

持ち主


「イヤリングだったら、この5つ位かな?知りたい事を先に決めておいて、この5つを鑑定したいって思ったら、どうかな?」


「この5つの項目を鑑定したいですね。やってみますわ。」


ハンナは再度、神に祈る。


「名前は、ピンククオーツのイヤリング。材質は、ピンククオーツと金。使い方は、耳たぶに挟んで使う。産地は、ラプン男爵領。持ち主は、ハナ=ナコッタ=ホイップ名誉男爵ですわ。鑑定できる項目が増えましたわ!」


「漠然と詳しく知りたいより、知りたい項目を先に決めてから鑑定する方がいいかもね。」


「これからは、そうしますわ。ハナさんありがとうございます。」


ハンナも私に抱きついた。


「ちょっと待って。ピンククオーツの産地がラプン男爵領?うちの領地でピンククオーツが取れるなんて聞いたことが無いけれど。」


訝しげな顔をするベル。



.

読んで頂き、ありがとうございます!

皆様のおかげで50話になる事ができました!

これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

今回の50話ともう少しでpv20000になるので、お祝いに何か出来たらと考えています。

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