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夕日

よろしくお願いします!

.


お茶会の後、暗くなる前にグリーン子爵領の見学は解散となった。

ハンナとエスタと私が同じ馬車に乗っている。

エッグ子爵領に、ナコッタ男爵領の馬車とアンダギー子爵領の馬車が迎えに来ているからだ。


「きっと今頃、ベルとフェーン殿下は2人きりの馬車でいちゃいちゃしているのでしょうね。」


「羨ましいわね。」


エスタと私は、ハンカチを噛み締めるふりをする。


「……あの。何故、ハナさんをいじめようとしていた私を責めないのですか?」


ハンナが恐る恐る私に聞いてくる。

やっぱり、ガーベラから指示されたこと、気にしていたんだ。


「ハンナは何もしてないでしょ?先に私に教えてくれたし、気にしなくていいの。」


「だって、私は、アリッサ様とリリア様がいなければ、お父様に逆らえなくて、ハナさんをいじめていました。友達をいじめる様な最低な人間なんですの……。2人にとって相応しい人間では無いのですわ。」


ハンナは泣き出した。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」


私はハンナを抱きしめる。

エスタは、ハンナの頭を撫で始めた。

確かにゲームのヒロインは、誰かにいじめられていた。

アリッサが主導のいじめだったけれど、階段の上から突き落とそうとした以外は、本人がやったという話はでてこなかった。

教科書を破ったり、鞄の中を水浸しにしたり、公爵令嬢のアリッサ本人がやるとは思えない内容だ。

ゲームでは誰がやったか説明されていなかったけれど、そうか、ハンナにやらせていたのかと逆に納得したくらいだ。


「ハンナ、私はいじめられてないよ。これからいじめるからねって言われてから、始まるいじめって聞いたことないし。ガーベラにはバレない様に私がいじめられているふりをすれば良いだけだから気にしないで。それに、夏休みが終わった瞬間に、リッツ先生にも言う気満々だから。」


「そうよ。ハンナは何もしていないんだから、気にしなくて良いのよ。私も特別外交官のバッチをあげるから、ハナをいじめてと言われたら考えるからね。」


「エスタ、それは酷いわ。」


「嫌ね、ハナ。冗談よ。もう特別外交官のバッチは貰っているし、ハナをいじめるなんてあり得ない話だから。」


私とエスタは笑い合う。


「ハナさん、本当に怒っていないんですの?」


泣きじゃくりながら、ハンナは言う。

目が真っ赤だ。


「本当に怒ってないわ。こんな事で友達を辞めるって言われたら、そちらの方が怒るわよ。」


「ハナさん……。ありがとうございます。これからも、私と友達でいて下さい。」


「ええ。勿論よ。」


ハンカチでハンナの顔を拭く。


「ほら、ずっと泣いているとせっかくの可愛い顔が台無しよ。」


「そうね。この顔はラルドくんには見せられないわね。」


「2人とも、酷いですわ。」


3人で笑い合う。

良かった。

ガーベラのせいで、大事な友達を無くすなんて絶対に嫌だから。

むしろ、私の友達をここまで泣かせたガーベラを許せない。

ガーベラをいじめようとかは、思わないけれど、いつかちょっとした仕返しをしよう。

寛大な私はその位で許すわ。

とにかく2学期が始まるのが、楽しみね。


「ほら、馬車の外を見て。夕日が綺麗よ。」


エスタが馬車の外を指さす。

確かに夕日が地平線に沈んで行くところが綺麗だった。


「良い?私達はベルを含めて4人とも親友よ。誰かが困っていたら絶対助けるわ。これは別に学園生の今だけじゃなくて、卒業してもずっとそうよ。」


「わかったわ。エスタが困っていたら、私が助けるわね。」


「私も絶対助けますわ。」


「うん、お願いするわ。」


揺れる馬車の中、私達は3人でぎゅっと抱きしめあった。

エッグ子爵領に着くまで、ずっとそうしていた。


2日後。

ハンナからたくさんのお菓子やリボンが届いた。

そんなに気を使わなくても別にいいのにね。

気持ちは嬉しいから受け取るけれど。

私もハンナへ婚約祝いを贈らなきゃだわ。

やっぱりナコッタ男爵領自慢の柑橘類の詰め合わせにしようかしら。

1年前に私が提案したシトラスの香りの香水やハンドクリーム、化粧水も素敵よね。

木で編んだバスケットの中に、緑色の綺麗な布を入れて、新鮮で状態の良い柑橘類をいれる。

ぶつかり合って傷まない様に一つずつ柔らかい緑の布で包む。

上から見た時に見えるところだけ、柑橘類が見える様にすれば完璧だ。

レモンの黄色やオレンジの色が緑の布で映える。

香水やハンドクリーム、化粧水はピンクの布でふろしきのように包んでリボン結びをする。

最後に手紙を書いてリボン結びの間に挟めば、完成。

ナサリーに頼んで、ハンナ宛に送ってもらった。


「お嬢様、とても素敵な贈り物ですね。なるべく早く、揺れない様に御者に運ばせますわ。」


「ナサリー、ありがとう。そうしてくれると嬉しいわ。」


ハンナが喜んでくれると良いな。

もらったお菓子は食べきれないし、せっかくだから、学園に持って行こう。

明日にはナコッタ男爵領を出発して、学園に向かう。

夏休みは終わって、二学期の始まりだ。

これからも楽しく過ごせます様に。



.

皆さん、読んで頂きありがとうございます!

この連載は勿論ですが、『愛する猫の恋物語』や『愛する猫の嫁入り』、『悪役令嬢として生まれた時はどうしようかと思ったけれど、ずっと好きだった幼馴染が婚約者で良かった』も沢山の方に読んで頂けて作者はとっても嬉しいです。

また、いいねや評価もありがとうございます!!

これからもよろしくお願いします!

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