祝福される身分差
この話の前に、5/23に祝15000pvで投稿しております。
まだそちらを読んでいない方は、そちらからご覧下さいませ。
いつも読んで頂きありがとうございます。
よろしくお願いします。
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温室を出て、馬車に乗ると本日泊まる予定のグリーン子爵邸にやってきた。
ナコッタ男爵領にある家と同じ位の大きさだ。
煉瓦でできた可愛らしい外見の建物で、可愛い。
玄関には、メイドと執事が1人ずつ待機していた。
「「お帰りなさいませ。ご主人様。お客様。」」
「ただいま。伝えてあった大切なお客様達だから、よろしく頼むよ。」
「かしこまりました。」
「お茶の準備が出来ております。お客様方、ご案内致します。」
執事の後をついて、建物の中を歩いていく。
内装も凄く可愛い。
壁や家具が茶色やベージュ等でまとめてある。
そうかと思えば、廊下に植物の絵や、子供が描いただろう人の絵、薔薇野雫先生の絵等が飾ってある。
「こちらでございます。」
執事がノックをして部屋を開ける。
「こんにちは、お待ちしておりました。本当は玄関までお出迎えしたかったのだけれど、外に出るのを止められていて、申し訳ないですわ。私はカナ=グリーンです。よろしくお願いしますね。」
そこには、黒髪に黒目の日本人の女性がいた。
「カナ。無理して立ち上がらなくても良いんだ。」
「そういう訳には行きませんわ。お客様の前ですし、挨拶はしっかりしないと。それに、今日は体調が随分と良いですから。」
「本当か?余り無理はしないようにな。」
「母ちゃん、ずっと気持ち悪そうだったじゃん。無理しない方が良いって。」
「病気じゃないから、大丈夫よ。」
確かにふらふらとしていて、顔色も悪そうだ。
心配になるだろう。
「あの、よろしければ、私が魔法をかけますか?」
「あら、貴女が聖女さんかしら?」
「申し遅れましたわ。ハナ=ナコッタ=ホイップです。回復魔法が使えますわ。」
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。これは悪阻だから、回復魔法では治らないと思いますから。」
「悪阻。お子様がお腹にいらっしゃるのね。おめでとうございます。」
「あら、ありがとうございます。」
カナさんの顔が、にこにこと微笑んだ。
「皆様、どうぞお座り下さいませ。珍しいお茶とお菓子をご用意していますから。」
テーブルに着くと、お茶とお菓子が運ばれてきた。
「コエドから取り寄せた緑茶と大福になります。お茶は緑色ですが、紅茶と同じ茶葉を使っていますので、ご安心下さい。大福は甘いあんこの外側を先程見学された米を使った皮で包んだお菓子になります。毒味も済ませますから、安心してお召し上がり下さい。」
楊枝が置いてあったので、大福を一口大にきる。
もちの部分が伸びて切りづらい。
「私のおすすめは、手で掴んでそのまま食べる方法ですわ。汚れたら手を洗えば良いですから、安心して齧ってくださいね。」
カナさんがもちを手で持って齧る。
その動作でも下品には見えない。
私も楊枝は諦めて手で食べる。
アリッサも手づかみに抵抗が無さそうだ。
もちもちしていて美味しい。
あんこはこし餡だ。
甘すぎない甘さがある。
「面白い食べ方だね。」
「コエドだと、お菓子は手で食べる事の方が一般的らしいぜ。」
「そうなんだ。文化の違い何だろうけれど、きっと歴史があってこの食べ方になったのだろうね。」
「フェーンは難しい事を考えるよな。多分、手づかみになったのは、そっちの方が早く食べられるからだと思うぜ。」
「ラルド。お友達ができて、良かったわね。」
「そう。俺の親友のフェーン=レッツェル。こいつ良いやつなんだよ。」
ラルドがフェーンの肩に腕を回して、紹介する。
「まあ。いつもラルドがお世話になっています。」
「こちらこそ、ラルドと仲良くなれてよかったです。」
「ありがとうございます。これからも仲良くして頂けると嬉しいですわ。そちらにいらっしゃるのは、グリーン子爵領の施策が気になって見学に来てくださったお二人ね。田んぼを作っている最中だったから、余り面白くなかったでしょう?」
「私の名前は、アリッサ=クーヘンと言います。水田の土地づくりがあんなに大変だと思っていませんでしたから、とても勉強になりましたわ。」
「私はリリア=バームですわ。国王陛下肝入りの施策だと聞いて是非見たくなったんですの。今度は、田植えが終わった後も見てみたいですわ。」
「お2人とも、ありがとうございます。農業をするのに、土づくりは非常に大事ですの。田植えの後が見たいのなら、来年も是非お越し下さい。今頃は、田植えが終わってすくすく成長している頃でしょうから。」
「ありがとうございます。可能でしたら、また見に来たいですわ。」
「私も一緒に行きますわ。」
「お待ちしていますね。ラルドの反対側のお隣はハンナちゃんね。久しぶりだわ。見ない間に大きくなったわね。」
「カナ様。お久しぶりですわ。ラルドと婚約が決まって、グリーン家の一員になれる事が凄く嬉しいです。」
「こちらこそ、ハンナちゃんがお嫁さんに来てくれるの凄く楽しみよ。後、私の事は義理お母さんと呼んでくれていいのよ。」
「それは、まだ早いですわ。」
ハンナが手で頬を押さえて、体をくねらせる。
結婚後の事を考えて、恥ずかしかったのだろう。
「ハナちゃんも含めて、後の3人はハンナちゃんのお友達かしら?」
「私はエスタロッサ=アンダギーと言います。ハンナとは、同じクラスで友達です。水田だけではなく、パイナップルや薔薇なども見せて頂き、ありがとうございます。」
「私はベル=ラプンです。ハンナと友達です。他にもここにいる女の子は全員同じクラスでお友達です。今日は水田や薔薇等見せて頂きありがとうございます。」
「私もグリーン子爵領を見学できて、楽しかったです。この緑茶や大福も好きです。ありがとうございます。」
「皆さん、よろしくお願いしますね。田んぼもそうだけれど、温室の植物も自信作なので、褒めて頂けて嬉しいですわ。それに、ベルちゃんはラプンという事は、あの有名な恋愛の一族なのね。私、『愛する猫の恋物語』と『愛する猫の嫁入り』、どちらも好きでファンなのですわ。まさか、その娘さんに社交デビュー前から会えるなんてラッキーですわ。」
カナさんが立ちあがろうとする。
そこに、侍女がやってきて2冊の本を手渡した。
その2冊は大分読み込まれているのがわかる。
タイトルはそれぞれ『愛する猫の恋物語』と『愛する猫の嫁入り』と書いてあった。
「ありがとうございます。両親や祖父母の恋愛話を読んでファンと言って頂けるのは、嬉しいです。」
「良かったわ。気持ち悪いと思われたらどうしようと思っていたの。それにファンとして気になるのがベルちゃんの婚約者なのだけれど、もう決まっていたりするのかしら?」
「気持ち悪いなんて、思っていませんよ。私に婚約者はまだいません。ただ、私の話が大恋愛になるかどうかはまだわかりませんわ。」
「ベル、大丈夫だよ。安心して。色々考えてあるから。ただ、ベルは裸で木の上から落ちてこないだろうし、私も長すぎるディープキスはする予定はないけれど。私は私なりに考えているから。」
「フェーン、色々考えているって……。」
「きゃあ。え?そう言う事ですの?そう言う事ですのね。王子殿下とラプン男爵令嬢の大恋愛。素敵。素敵すぎますわ。ファンの集いの方にも共有しないとですわ。」
「グリーン子爵夫人。他の方に話すのは、私達の婚約が無事に決まったらにしてもらえないかな?私はまだベルにきちんと言葉を伝えられていないですから。」
「かしこまりましたわ。婚約発表されるまで、口を閉じておきます。」
「ありがとうございます。良かったです。」
フェーンはにっこり笑った。
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読んで頂き、ありがとうございます。
この話に出てきた『愛する猫の恋物語』と『愛する猫の嫁入り』はどちらも作者の短編から読めます。
ベルのお祖母様とお母様の恋愛話です。
気になる方は、是非そちらもお読み下さいませ。
これからもよろしくお願い致します。




