温室
祝15000pv特別投稿です。
普段より、投稿が早くなっています。
よろしくお願いします。
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「アリッサ様は、勘違いされやすいのですわ。優しい方なのに、素直になれないせいで、皆から誤解されてしまって、私は友達として歯痒く思っていましたの。」
「リリアさん、そんな事を思っていたの……。」
「アリッサ様は、とても可愛くて思いやりのある方だと言う事を、皆さんにもわかって頂きたかったんですの。」
アリッサは、リリアの言葉に感動している様だ。
ちょっと目が潤んでいる。
「だから皆さん、アリッサ様と私とお友達になって頂けると嬉しいですわ。」
「ええ、勿論ですわ。ハンナがお2人を信用しているのがよくわかりましたし、さらに私に情報を伝えて頂いて、お二人が優しいのがよくわかりましたから。」
それに多分、アリッサ様は転生者だから。
私も是非お友達になりたい。
「私もですわ。」
「私も将来、義理の姉妹になるわけだし、こんなに良い人達なら仲良くなりたいです。」
エスタとベルも深くうなづいている。
「私も仲良くなりたいですわ。」
「ハンナさん、酷いですわ。私達はもう前からお友達じゃない。アリッサ様、そうですわよね?」
「ええ。ハンナさんは、もうお友達だと思っていたわ。」
「ありがとうございます。」
ハンナがついに泣き出した。
隣にいたエスタが、ハンカチをハンナの目元に優しく当てている。
馬車が目的地に着くまで、皆でハンナを慰めていた。
「さあ、皆さん着きましたよ。こちらがグリーン子爵領の実験施設になります。」
そこには、巨大なビニールハウスが建っていた。
中に入ると気温も湿度も高い。
空気がもわもわしている。
「ここは果物を栽培している場所になります。木の上になっているのが、パイナップルですね。」
グリーン子爵の指さす場所を見ると、何本も木がたっていて、1番上に前世で見たことあるパイナップルが1つそのままついていた。
パイナップルってあんな風に実がなるの。
知らなかった。
「その奥の棟がバナナになります。上手くいくと甘く実るはずなのですが、まだまだ実験中です。」
緑色のバナナが房になって、垂れ下がっていた。
バナナは何となく実り方を知っていたけれど、大きいし、何本もあると圧巻だ。
「1番奥は薔薇です。季節狂いの薔薇として販売したり、お風呂に浮かべる花びらにしたり、香水にしたり、ローズヒップをとる為の物です。」
綺麗。
温室が薔薇の花園になっていた。
赤や白やピンク。
黄色やオレンジ。
色とりどりの薔薇だ。
甘い良い香りもしている。
「父ちゃん、一本もらうな。」
ラルドは艶やかに咲き誇る、満開の赤い薔薇を一輪摘むと、ハンナに差し出した。
「これ、綺麗だから。ハンナに似合うよ。」
「ラルド、ありがとうございます。」
ハンナの顔が赤く染まるとふんわりと笑った。
「泣いてるより、そっちの方がずっと似合うよ。」
ラルドが白い歯を見せて笑った。
ハンナの目が赤くなっていたのは、私の魔法で治したけれど、馬車の話、御者台まで聞こえていたんだろうな。
ラルド、良い男だ。
「すまない。凄く言いづらい雰囲気何だが、それは国王陛下から注文が入ってた王妃殿下に贈るための特別な薔薇で……。」
グリーン子爵、顔色が悪い。
「色も形も匂いも全て一級品を満たすのは本当に数が少なくて、この温室でも今日はその一本くらいで。」
汗が垂れた。
「今日この後、納品何だが、どうしよう……。国王陛下からは、根毎、鉢植えで欲しいと言われていて。」
空気が凍る。
「そう言えば今日は、父上が母上にプロポーズした記念日だね。」
フェーンがのほほんと言った。
「か、回復魔法をかけてみます!」
摘み取られた薔薇に対して回復魔法をかける。
切り取られた部分が白く輝くと、切れ目が盛り上がり、上に伸びていく。
蕾ができ、大きくなると、花が綻んで開いた。
先ほどの薔薇の花よりも大きくて色鮮やかな花が咲く。
「良かった。国王陛下からの依頼が達成出来ないところだった……。ホイップ名誉男爵、本当にありがとうございます。」
グリーン子爵が額の汗を拭っている。
「いえいえ、薔薇が綺麗に咲いてくれて良かったですわ。」
「父ちゃん、ごめん。」
「いや、良いんだ。おまえの気持ちもわかるから。ただ次からは、摘み取る前に返事を待ってくれ。」
「わかったよ。」
どうにかなって、良かった。
「グリーン子爵、今度僕からも薔薇を依頼させて下さい。」
「第二王子殿下、勿論ですよ。」
「ベル。その日1番の薔薇を君に贈るね。」
「うん、待ってるよ。」
フェーンとベルから、甘い空気が漂う。
「その内私も、ショーンから、薔薇が贈られそうだわ。」
アリッサがぼそっと呟いた。
「ふふふ。私も今度、ウッドに頼んでみますわ。」
リリアが笑う。
「ハナ、皆婚約者がいて良いわね。」
「エスタ、私もそう思っていたところよ。」
「ちょっと待って、私もまだ婚約してないよ。」
「もう相手がいるでしょ?」
「雰囲気から見て秒読みじゃない。もう婚約しているといっても全然過言じゃないわ。」
「そんなことは……。」
「そうだ、ベル。今度僕から大事な話があるんだけれど、時間を開けてくれるかな?」
「ほら。やっぱり。」
「ベル、おめでとう。」
「なんか、私に対して雑じゃない?」
「独り者の妬みよ。」
「私にも素敵な人が現れないかしら。」
「なんか、ごめん。」
「「謝らないで。」」
私とエスタの声が揃うと、皆の笑い声が温室に響いた。
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読んで頂き、ありがとうございます。
皆様のおかげで、5/19に15000pvを超える事が出来ました。
作者のやる気がかなり上がりました!!
これからも頑張っていきますので、評価を頂けると嬉しいです。
次回の投稿は、いつも通り2日空いて5/26となります。
これからも、よろしくお願い致します!




