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グリーン子爵領

主人公視点に戻っています。

よろしくお願いします!

.


青い空。

白い雲。

暑い日差し。

男達が魔法を使って、地面を耕している。

ここは、グリーン子爵領。

国王陛下の依頼で、田んぼ作りの真っ最中だ。

私たちは、この間コンサートに行ったメンバーで、ラルドから招待を受けてやってきた。

今日は皆一般国民の中にいてもおかしくない様に裕福な商人の子どもの服装をしている。

麦わら帽子にワンピース。

白いエプロンドレスだ。

カントリー風で可愛い。

自分の色のワンピースは緑と白のギンガムチェックで結構気に入っている。

ただ、暑すぎてパラソルの下から出られていない。


「よく晴れたわね。日焼けに気をつけなきゃだわ。」


「あの。どうしてここにアリッサ様がいらっしゃるのですか?」


エスタありがとう。

私もめちゃくちゃ気になってた。


「あら、私もいますわ。」


リリア様までいる。


「私が招待したんですの。」


「ハンナが誘ったの?」


「はい。丁度、お話する機会がありまして。」


「聞いてなかったから、びっくりしたわ。」


「フェーン第二王子殿下がいるなら、公爵令嬢の私なんて、別に驚かないでしょう?」


そんなわけない。

いきなり、悪役令嬢が来たら驚くわ。


「フェーン第二王子殿下は年下ですし、ベルの婚約者ですし、また違いますわ。アリッサ様はクラスの憧れの存在ですから。」


「そうそう。私なんてただのベルのおまけだよ。」


「フェーン、面白がってるでしょ?」


「ばれた?」


フェーンがお茶目に舌をだしている。

ベルの前だと自由だな。


「私は目的があってここに来ているの。将来のお義理父様やお義理母様が進めている計画と聞いて是非、自分の目で見たくなったのよ。」


アリッサ様が海辺で黒ビキニとか着ている様子なら、想像ができるけれど、田んぼを作っている長閑な田舎の風景は、正直似合っていない。

でも、麦わら帽子に白いワンピースと生成のエプロンのコーデは、すごく可愛い。

ウエストの茶色のリボンがスタイルの良さを十分に見せている。

そうか。

しっかりした目的があってくるなんて真面目だな。


「みんな、待たせたな!アイス持ってきたから食べようぜ。」


「こら。ラルド。偉い方々になんて口の聞き方だ。もっと礼儀正しくしないか。」


ラルドとグリーン子爵がやってきた。

2人の格好は農家スタイルだ。

麦わら帽子にチェックの長いシャツに吊りズボン。

日焼けもしているし、馴染んでいる。


「親父は、うるさいよ。フェーンは、俺の喋り方が好きだって言ってくれるぜ?」


「その立場にあった話し方があるんだよ。礼儀作法の授業は、何を聞いていたんだ。」


「はいはい。それより、アイス溶けるぜ。みんな、何味がいい?」


「はあ。一体どうしたら。」


「グリーン子爵。私はラルドの喋り方や気やすさを気に入っているので、このままでお願いします。」


「第二王子殿下がそうにおっしゃるのでしたら。」


ラルドは、手に持った保冷用の魔道具から次々と食べられるコーンを使ったソフトクリームを取り出し、皆に渡していく。


「ハンナは苺で、ベル姉ちゃんはオレンジ。フェーンはソーダでいいよな?」


ラルドがコーンに紙を巻いて渡してくれる。


「はい。大丈夫ですわ。」


「美味しそうだね。ありがとう。」


「いつものやつだね。もらうよ。」


「おう。毒味で一口齧っといたぞ。」


「助かるよ。」


「他の姉ちゃん達は何にする?」


「何味があるんですの?」


「うーんと、バニラに、レモン。パイナップルにぶどうが残ってるよ。」


「私はパイナップルにしますわ。」


「はい。リリア姉ちゃん。」


「お姉ちゃんですか。新鮮な気分です。」


リリアが目を輝かせながら、アイスを受け取る。

アイスをスプーンに乗せて口に入れる。


「冷たくて、おいしいですわ。」


「暑いから、冷たいものが最高だよな!」


「はい。新たな発見をした気分です。」


「溶けるから気をつけろよ。他の姉ちゃんは?」


「私はバニラにしますわ。」


「私はぶどうでお願いしますわ。」


「じゃあ、残ったレモンにしますわ。」


アリッサ様はバニラ。

エスタは、ぶどう。

私はレモンにした。

アイスを口に入れる。

ミルクのアイスが元になってて、そこにレモンを加えたんだろうな。

ミルクが濃厚で、さっぱりしたレモンが美味しい。

これなら幾らでも食べられそうだ。


「姉ちゃん達、スプーンあるんだから、使えば良いのに。」


「「あ。」」


つい前世のくせで、そのまま舐めてた。

横を見ると、アリッサ様もそのまま舐めてた。

公爵令嬢がスプーンを使わないなんて意外だ。

アリッサ様ってもしかして……。

ラルドが私達にスプーンを渡してくれる。


「さて、食べながらで構わないので、説明させて頂きますね。ここは、来年度から米を作る為、水田を幾つも作っている所になります。今年の田植えは間に合わないので、土作りを念入りに行っています。王妃殿下の伝手で、稲穂の堆肥が手に入ったので、来年は豊作が期待できますね。」


「魔法を使っているようですが、何をされていますの?」


「ここは今まで人の手が入っていない土地だった為、地面が固いのでそれを掘り返して柔らかくしています。後は、堆肥を混ぜて土を良くするのと、水が流れやすく溜めやすいように、凹凸をつけています。」


「お米を作るのには、土作りにも色々な手間がかかるのですね。」


「そうですね。美味しいお米を作るには欠かせない事です。」


「国王陛下の計画とは聞いていましたが、まさか見渡す限り全て田んぼにされるとは思っていませんでした。」


「王妃殿下からも国内に米を浸透させてほしいと頼まれましたので、大規模にさせて頂いています。ただ病気等が怖いので、土地を離して3箇所で作業を進めています。」


「質問ですが、米を作る人達はどこから連れて来たんですの?」


「元々ムパイ領で麦を作っていた方々ですよ。数年は税金を取らない事。3年は実りがなくても給与を保証する事で米づくりに参加してもらっています。」


「麦を作る量が減るのは大丈夫なのですか?」


「ええ。国中で作っていますし、国庫に余剰の麦が大量に保管される程ですから。むしろ、米を作った方が良いと判断をしました。」


「そうでしたの。納得致しましたわ。」


専門的な話すぎる。

それについていく、アリッサ凄い。

本当に真面目に見に来たんだな。


「ずっとこの景色を見ているのもつまらないでしょうから、グリーン子爵領を案内させて頂きます。皆様、荷物を乗せる馬車を改造したものですが、クッションを沢山乗せたので、お乗りください。」


足の太い馬が2頭つながっている。

雨除けの屋根はあるが、横の壁はない。

背もたれの代わりにポールが何本か渡っていて、その上にクッションを重ねている。

前世のトラックの荷台に座る様な気分だ。

ラルドとフェーンは、それぞれの相手をエスコートした後、御者台に座った。

グリーン子爵が他の皆をエスコートして座るのを見届けると御者台に周り、馬車はゆっくりと動き出した。


「動きましたわね。ハンナさん、今が皆様に伝えるチャンスですわよ。」


リリアがハンナに向けて行った。


「そうね。先に話を通しておけば、嫌がらせでは無くなるでしょうし、私もそれがいいと思うわ。」


アリッサが深くうなづいた。


「ですが、どうに伝えたらいいかわからないですわ。」


ハンナがおろおろし始めた。


「簡単な事ですわ。私達も出席したお茶会で、ガーベラさんがハンナさんに、夏休みが終わった後の学園で、ハナさんへの嫌がらせを命じたのですわ。」


アリッサがきっぱり言い切った。


「ハンナ、それは本当?」


「私、嫌がらせなんてそんな事できないですわ。ただそうしないとお父様との契約を無かったことにすると言われて、どうしたらいいかわからなくなってしまって……。」


「ハンナさんのお父様は厳しい方ですから。仕事の契約を盾に、ハンナさんが断れないのを知っていて、命じたのですから、卑怯ですわ。」


「そんな事があったんですね……。でも、先に相談して貰えて良かったです。対策がとれますから。お2人ともありがとうございます。」


「別に、ここの見学のついでだから、大したことはしていないですわ。」


「ハンナさんが困ってらっしゃったから、アリッサ様が気を利かしてくれたんですの。」


「ちょっと、リリアさん。」



.

読んで頂きありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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