コエド料理
突然の飯テロ回です。
お気をつけ下さい。
作者もお腹空いてきました。
よろしくお願いします。
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コンコンコン。
「失礼致します。」
ハリエルが戻ってきた。
「お食事の準備が整いました。王妃殿下が是非一緒にとの事です。いかがされますか?」
「勿論ご一緒させて頂きますわ。」
「私も参加します。」
「宰相様もこちらにいらっしゃったのですね。では、一度その話を伝えて参ります。」
「大丈夫ですよ。王妃殿下は国王陛下と一緒にいるでしょうし、国王陛下の側使えに参加すると手紙を飛ばしてありますから。」
「畏まりました。それでは、ご案内致します。」
ハリエルに案内されるままに、王宮の奥へと廊下を進んでいく。
内装が豪華絢爛から、必要最低限で質の良い物に変わっている。
「ここから先は、王族の方のプライベートな空間でございます。今回の様に呼ばれていないと通れないので、お気をつけ下さい。」
「プライベートな空間ですか。」
「今回の食事の場は、王族の方の為の食堂となります。」
「王族の為の食堂ですか……。凄く緊張しますわ。」
「余り気にすることは無いですよ。第二王子殿下の命の恩人で、王妃殿下を治療された真の聖女ですから、招かれて当然だと思う位で良いと思いますよ。」
「宰相様、そういう訳にはいきませんわ。」
「貴女は奥ゆかしい所も、素敵ですね。」
ルドルフの笑顔も素敵だ。
「着きました。こちらでございます。」
ハリエルは一礼すると、扉を外側に開いた。
「ここは……。」
「ハナちゃん、待っておったよ。」
そこは、廊下と比べて一段高くなっており、畳が敷いてあった。
テーブルも円卓のちゃぶ台だ。
ただ、大人10人は座れそうな程広い。
そこに国王陛下とミコさんが座椅子に座って待っていた。
靴を脱ぎ、畳へと上がる。
畳を踏む足の感触すら、懐かしい。
「お招き頂き、ありがとうございます。」
カーテシーを行う。
「気にすることは、ないよ。フェーンの件も、ミコの件も話は聞いている。こちらこそ、ありがとう。むしろ、勲章と名誉男爵だけでは、到底足りないと思ってきた所だよ。」
「まあまあ、今日は正式な晩餐会とかではなく、個人的な食事会じゃ。無礼講じゃよ。飲んで食べて、大いに話そうなのじゃ。メニューは全部コエド料理じゃよ。楽しんでおくれ。さあ、こちらに座るのじゃ。」
「ありがとうございます。」
座椅子は座り心地が良かった。
ドレスも余り気にならない。
「お招き頂き、ありがとうございます。」
「いや、ルドルフ。しれっと混ざっているが、お前は招いていない。まあ、良いけれど。」
「日頃の働きに感謝というやつじゃな。」
ルドルフが少し邪険に扱われている。
普段の推しはこんな感じなんだ。
「さあ、お通しからじゃぞ。」
食事がお盆に乗って運ばれてくる。
小鉢には、大根とツナの煮物が入っていた。
目の前の箸を取ると、一口分を口に運ぶ。
あまじょっぱくて美味しい。
砂糖や醤油の味がする。
日本の家庭料理の味がして懐かしい。
「妾の好きなメニューなんじゃよ。」
「凄く美味しいですね。」
「ふふふ。顔が緩んでおるの。ハナちゃんを招いて良かったのじゃ。」
ちゃぶ台に食事がどんどん運ばれてくる。
コース料理ではなく、どうやら日本の旅館スタイルらしい。
目の前に艶々と白く輝く白米が置かれた。
湯気が立ち上っている。
見ただけで美味しそうだ。
隣にはわかめと豆腐の味噌汁。
味噌汁も食べるのが久しぶりだな。
こちらも湯気が立ち上っていて、熱々だ。
おかずには、天ぷらや肉じゃが、ハンバーグがある。
「全部おかわり自由じゃよ。好きなものは、言うのじゃ。」
「ありがとうございます。本当に幸せです。」
自然と笑顔が溢れる。
私、知らない間に日本食に飢えてたんだ。
ミコさん本当にありがとう。
コエド料理最高。
まずは、白身魚の天ぷらからだ。
塩をちょっとだけつけて、口に運ぶ。
サクッと衣の良い音がする。
噛むと白身魚から良い味がする。
そんなに強い味がする訳じゃないけれど、白身魚の天ぷらって、いくらでも食べられるくらい好きだ。
次はピーマン。
ちょっぴり苦味があるのが、好きだ。
カボチャの天ぷらは、甘くてホクホクしている。
しいたけの天ぷらは、じゅわっとしみでるエキスが美味しい。
小エビと玉ねぎのかき揚げ。
ザクザクと食べ応えがあるし、小エビの香ばしさと玉ねぎの甘さが美味しい。
白米が進む。
天ぷらだけで殆どご飯がなくなった。
「幸せです。」
「泣くほど、喜んで貰えるなんて招き甲斐があるの。まだまだあるから、たんと食べるのじゃ。」
ミコさんがハンカチを目元に当ててくれた。
うわぁ、恥ずかしい。
でも、美味しい。
私、他の人たちから見たら、泣くほどの食いしん坊に見えるよね。
ミコさんはわかってくれるだろうけれど、ルドルフにもそう思われるのはな……。
「おや、そんなに見つめられるなんて、頬に米粒でもついていますか?」
ルドルフが自分の頬に手をやる。
「いえ、そんな事はありませんよ。綺麗な所作だなと思いまして、つい見つめてしまいました。」
「ああ。私は良くコエド料理を食べていまして、箸の使い方に慣れているだけですよ。むしろ、ホイップ名誉男爵こそ、箸の使い方が綺麗ですね。」
「……ええ。私も昔食べる機会がありまして。」
「そうですか。コエド料理は美味しいし、健康にも良いので、女性には嬉しいですよね。」
「はい。大好きです。」
「元気になった様で良かったです。さあ、まだまだありますから、一緒に食べましょう。」
「ハナちゃん、白米のおかわりいるかの?」
「下さい!」
ミコさんが直々におひつから、ご飯をもってくれた。
「すみません。ありがとうございます。次からは自分で盛ります。」
「妾が好きでやっているのだから、気にしないのじゃ。その為の人払いじゃからのう。」
本当だ。
いつの間にか、侍女さんとかがいなくなっている。
「この方がご飯が美味しく食べられるじゃろう?」
「お気遣いありがとうございます。」
「ハナちゃん、固いのじゃ。親戚のおばさんちで食べるご飯位の気やすさでいいのじゃよ。」
「それは、難しいです。」
「はっはっは。ハナちゃん、面白いな。そうだよな。俺とか一応国王陛下だし、こっちは宰相だし、難しいよな。」
「ハナちゃん、あれはお酒が入ったただの酔っ払いだから、気にしないでいいのじゃ。全くあれほど飲むなと言ったのに。」
「コエド料理が美味すぎるのがいけない。」
「ダメな大人じゃの。」
ミコさんがため息をついている。
場の空気は明るい。
和やかにご飯が進む。
うわぁ、この肉じゃが美味しい。
じゃがいもほくほくだし、お肉も噛めば噛むほど、美味しい味がする。
高い良い物を使っているのだろうな。
「またご飯が無くなりそうですね。今度は、私が盛りましょうか?」
「いや、宰相様にその様なことをして頂く訳には行きません。」
「王妃殿下がされたのですから、後は国王陛下以外誰でも一緒だとおもいますよ。それに私、慣れているので大丈夫ですよ。」
ルドルフは、私の茶碗と自分の茶碗を取ると、おひつからご飯を盛った。
私の分は小盛りで、自分の分は大盛りだ。
食いしん坊キャラ恥ずかしいと思っていたから、ルドルフがそれよりいっぱい食べてくれるの嬉しい。
「この位で大丈夫ですか?」
「勿論です。ありがとうございます。」
「良かった。沢山食べましょう。」
今日は、推しのファンサがえぐい。
沢山の笑顔にご飯までよそってくれた。
今日が私の命日かな?
それ位充実している。
あ、このハンバーグも美味しい。
中から肉汁が溢れてくる。
とろりととろけるチーズも絶品だ。
私、魔法が回復で本当に良かった。
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読んで頂き、ありがとうございます。
因みに今回のコエド料理は全部ミコさんの手作りです。
その為、毒味要らずで温かいまま、ご飯が食べられています。
これからもよろしくお願いします。




