推しの笑顔
読んで頂き、ありがとうございます。
ここからは、ヒロイン視点に戻っています!
よろしくお願いします。
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頭、痛い。
全身がだるい。
私は、また倒れたのか…。
王妃殿下の願いをちゃんと叶えてあげられたのかな?
とりあえず、目を開けないと。
ミコさん、びっくりしただろうな。
ぱちん。
「目が覚めたのですね。良かった。気分はいかがですか?」
目の前に推しが居た。
なんだ、夢か。
もう一回寝て起きれば、きっとミコさんがいるはず。
「あれ、今目が開いた気がしたのですが、気のせいでしょうか?」
推しの声、まだする。
これ、夢じゃないんじゃ。
ぱちん。
「良かった。お目覚めですね。」
最高の笑顔の推しがいる。
しかも私、手を握られているし、今2人きりじゃない??
「……お、おはようございます。」
「まだ朝では無いですが、とりあえず、今晩は月が綺麗ですよ。」
にこにこと笑う顔が最高に美しい。
何故こんなシチュエーションなのかまったくわからないけれど、ミコありがとう。
意識を失った甲斐がありまくりすぎる。
「あの。ここは、どこですか?」
「ここは、国王陛下の執務室の隣りにある仮眠室のベッドです。勿論、ベッドメイキングしてから、誰も使っていないので、ご安心下さい。」
え?
どうして、国王陛下の執務室にいるの?
「ど、どうして、私はここにいるのですか?」
「貴女が倒れたことに、王妃殿下は大層驚かれてしまいまして、緊急事態用の呼び出しで私を呼び出したのです。転移で私が王妃殿下の元へ向かい、ベッドのある執務室へと運びました。国王陛下にも許可を貰っているので、安心して下さい。今、紙を転移させて侍女を呼び出したので、このまま待っていて下さいね。」
びっくりした。
確かにあの部屋は人払いしてあったから、私とミコさん以外誰も居なかったし、私が倒れたら、ミコさんもびっくりするよね。
でも、緊急事態の時、宰相のルドルフを呼べるなんて、流石王妃殿下という感じだな。
「おや、侍女が来た様です。私は一度執務室の方へ出て居ます。必要になったら、呼んでください。」
ワゴンを押した侍女とすれ違いでルドルフが外へ出ていく。
「宰相様に呼ばれて、やって参りました。ハリエルと申します。よろしくお願い致します。」
私と2つか3つ位しか変わらない真顔の女性だ。
オレンジ色の髪をお団子にしている。
「貴女、なんでこんな所にいるのよ?ここは、国王陛下の執務室よ。貴女みたいな小娘が居て良い場所じゃないわ。は、まさか貴女、国王陛下の愛人とか?」
小声で盛大な勘違いをしている。
「ち、違います。私は、王妃殿下の治療をして、魔力の使いすぎで意識を失ってここに運ばれただけです。けして、国王陛下の愛人では、ありません。」
「そんなわけないでしょ?もしそうだとしても王宮には、他にもたくさんベッドはあるし、国王陛下の執務室のベッドに運ばれるわけないでしょ?」
「いや、それはそうなんですけれども。運んだのは、宰相様なんです。本当なんです。信じてください。」
「貴女、嘘をついて良いことと、悪い事があるわよ。」
ガチャ。
扉が開いて、ルドルフが、顔を出す。
「ホイップ名誉男爵、気分は良くなりましたか?王妃殿下の治療の為とはいえ、魔力を出し切るなんて大変でしたね。そちらの侍女もいますし、ゆっくりして下さいね。食べられそうだったら、食事もご用意しますよ。いつでも言ってくださいね。」
ガチャ。
扉が閉まった。
「申し訳ございません。まさか、本当の話だとは、思わず失礼なことを申しました。」
「いえ、私も何故この状況なのか、よくわかっていないですし、疑われてもしょうがないなと少し思っていたので、気にしないで下さい。」
ハリエルが深々と頭を下げている。
いや、本当にこちらも申し訳なくなってくる。
これは、事故だ。
気を取り直して、話を続けよう。
「あの、今は何時でしょうか?先程まで意識がなかったので、わからなくて……。」
「今は、19時になります。本日は王宮に泊まると聞いています。お食事の準備や湯浴みの準備をされますか?」
「両方、お願いします。先に食事がしたいです。」
魔法を使ったからだろうか。
凄くお腹が空いた。
「かしこまりました。どちらもお任せ下さいませ。先に紅茶の準備をさせていただきます。それを飲みながら、ゆっくりお待ち下さいませ。」
優雅な動作で紅茶が淹れられる。
香りが良い。
「素敵な香りですね。」
「ええ。とっておきの紅茶を出す様にと指示がでましたから。王妃殿下のスペシャルブレンドでございます。ごゆっくりお楽しみ下さい。」
仮眠室のテーブルに紅茶の入ったティーカップとシンプルなクッキーがお皿に乗って出される。
私はベッドからゆっくり立ち上がると、テーブルの前に置いてある椅子に座った。
「美味しい。」
流石、ミコさんのスペシャルブレンド美味しい。
「良かったです。では、私は準備が出来ましたら、こちらに参ります。」
綺麗な礼をして、ハリエルは部屋の外に出ていった。
さて、状況を整理しよう。
ミコさんの治療をして、魔力を使い切り、意識を失って倒れた。
ここまでは、わかる。
何故その後、推しに運ばれて国王陛下の執務室にきたの??
いや、来たものはしょうがないんだけれど、何故執務室?
ハリエルじゃないけれど、もっと他にも部屋があったでしょう。
昨日の部屋でも良かったでしょうに。
一体何故。
「ああ、紅茶が美味しい。」
「気に入って頂けて良かったです。王妃殿下から、丁重に扱う様にと言われていますからね。そちらのブレンドを気に入って頂けて良かった。」
あ、ぶない。
紅茶を口から吹き出すところだった。
何故ルドルフが私の隣の椅子に座っているの?
今までいなかったよね?
「ノックをして、声もかけたのですが、気づかなかったでしょうか?驚かせてすみません。」
本当だ。
ドアが開いてる。
「いえ、此方こそ気づかなくてすみません。考え毎をしていて。」
「いえ大丈夫です。侍女が出てきたので、部屋に戻ってきただけですから。もう顔色も良さそうですね。」
「はい。もうすっかり元気です。」
「それは、良かった。この後、食事にすると聞きました。私も一緒に良いですか?」
推しとご飯。
私ちゃんと食べられるかな?
隣にいるのも緊張するんだけれど。
「はい、勿論です。」
口が勝手に返事をしちゃった。
いや、断る選択肢はないし、しょうがないけれども。
胃が痛くなりそう。
「良かった。私も楽しみです。貴女とご飯を食べるなんて久しぶりですね。」
「……久しぶりですか?」
「いえ、何でもないです。普段は1人で食べる事が多いので、誰かと一緒に食事を取るなど久しぶりだなと思いまして。」
その笑顔。
写真撮りたい。
ちょっと胡散臭いのが良い。
どうしてここにスマホが無いんだ。
それに、推しがぼっち飯だった。
私が一緒に食べてあげないと!
謎の使命感が湧いてきた。
ルドルフがこちらを見てニコニコしているから、私もニコニコ返す。
あれ、ルドルフの頬が段々赤くなってきた様な。
「貴女は、相変わらず魔性の女ですね……。」
「何か言いましたか?小声で聞き取れなくて。」
「いえ、なんでもありませんよ。」
推しの笑顔は、実に胡散臭かった。
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読んで頂きありがとうございます。
推しに近くからファンサされて緊張と動揺が凄いヒロインです。
次回、平和に食事ができるのか?
どうぞ、ご覧下さいませ。
次回投稿は、5/16を予定しています。




