夢の中
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お気をつけ下さい。
よろしくお願いします。
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視界が全て暗い。
暗闇だ。
これは、怖いな。
あ、正面の一部分だけが、スポットライトを当てた様に明るくなった。
目の前に広がるのは、桜の花。
白い豪華な噴水。
それに校舎。
ここは、春の魔法学園だ。
髪も瞳もピンク色の女の子が必死に走っている。
曲がり角で、王子様とぶつかった。
王子様は、転がった女の子の為に跪くと優しく手を差し伸べ、手の甲にキスしている。
これは、ゲームの世界?
本当は起こるべきだったイベントだよね。
何故、今このイベントを見ているんだろう。
(……神に愛されし魂を持つ子よ。神の愛子よ。聞こえますか?)
何処からか、優しい声が聞こえる。
これは、誰の声……?
(良かった。聞こえているようですね。私は神からの使い。わかりやすく天使にしておきましょう。今、貴女の夢の中をお借りして、話かけています。)
夢の中。
そうだよね。
私は、エスタ達と一緒に寝ているはずだ。
何故、天使が。
それに私が神に愛されている、神の愛子?
(不思議に思うことは、色々あるでしょう。これは、今回の転生における心のアフターケアの様な物です。この夢から覚めれば、いつもの様に忘れていますから、安心してください。)
アフターケア?
いつもの様に忘れる?
(ええ。貴女の魂は、神にとても愛されています。何度も繰り返し人の女性となり、輪廻転生を繰り返しているのです。愛され具合は、神に我儘を聞いてもらえるほど、恵まれているのですよ。今回は前回の生で行ってみたかったゲームそっくりの世界に転生となりました。)
そういう事だったの。
だから、ここは、あまりにもゲームの世界にそっくりなのね。
(ええ、そうです。前回の世界も、前々回の貴女の希望が反映された結果です。毎回貴女の希望が可能な限り反映されているのです。ただ、今回はいつにも増して特別でした。前回の生で事故にあって亡くなられた貴女は、咄嗟に一緒に亡くなった2人も救いたいと思っていた。神はその我儘を可能な限り叶える為、この世界にその2人の魂を転生させたのです。)
あの時、線路に一緒に落ちたカップルの事ね。
(はい。因みに貴女は、その2人にもう出会っていますよ。その2人のせいで、世界の起こるはずだったイベントが変わっているわけでもあるのですが……。)
そういう事か、納得した。
その2人に今も前世の記憶があって、もしゲームのストーリーを知っているのだとしたら……。
成程。
姿が直前まで見えないはずの曲がり角で、避けられたのも、納得だわ。
彼が私に厳しくて、彼女が私に優しいのも。
生まれ変わっても、美男美女のカップルとか良いな。
(毎回、貴女が転生してから一定期間がたった時に、こうして夢の中を訪れているのです。さあ、いつもの質問ですが、貴女はこの世界に満足されていますか?)
ええ。
ゲームそっくりの世界だし、魔法で人を救えているし、親しい友達もいる。
ゲーム通りのイベントは起きなくても、この世界にとても満足しているわ。
(……良かったです。神に良い報告が出来ます。では、素敵な今世をお過ごしください。また、来世でお会いしましょう。さようなら。)
さよなら、天使さん。
またね。
また、暗闇に景色が戻る。
でも、今は怖く無い。
この後、友達の待つ王宮で、目が覚めるはずだから。
「……ハナ。ちょっと、良い加減に起きて頂戴。私は第二王子殿下を必要以上に待たせるなんてしたくないわよ。」
「フェーンは、優しいから、少しくらい平気だよ。」
「ベルさんにとっては、そうかもしれませんが、私達低位の貴族にとっては、雲の上の存在です。私もエスタさんに賛成ですわ。ハナさん、今すぐ起きてください。」
ぱち。
「あれ、もう朝なの?おはよう。」
「暢気ね。もう既に一般の貴族令嬢の朝としては遅刻気味よ。ハナも第二王子殿下をお待たせしたい派かしら?」
「今すぐ着替えるわ。待たせてごめんなさい。」
「良かったですわ。王宮のドレスが借りられて、今回のご褒美にそのまま持って帰って良いのですって。私達の様にいつも以上にドレスアップして貰うといいですわ。」
エスタやベル、ハンナの奥には、準備満タンのドレスや化粧道具を持った侍女達の集団がいる。
よく見たら、3人ともいつも以上に豪華なドレスだし、メイクだ。
私は侍女達に取り囲まれ、ドレスを着せられ、メイクをされた。
「あ、ちょっと待って。コルセットは、もうそんなに閉まらないわ。」
「お嬢様は、細いですしお若いですし、まだまだしまりますわ。私達に全てをお任せ下さいね。」
にっこり笑った笑顔に、反抗できない。
「……はい。」
出来上がった私は、鏡の前に立ち茫然とする。
「……これが私。」
いつもの2割り増しくらい可愛く見える。
王宮の侍女、凄い。
「私達も同じ気分になりましたわ。」
「さあ、ご飯にしよう。」
円卓のテーブルに、お皿やカトラリーの準備がされている。
「お嬢様方、紅茶はいかがされますか?」
「ニンカ男爵領の紅茶をお願いするわ。」
「私もハナと同じ美人清流紅茶を。」
「私はレモンティーが良いですわ。」
「私もレモンティーをくれる?」
「畏まりました。美人清流紅茶が2つとレモンティーが2つをご用意致します。」
てきぱきと紅茶の準備がされる。
あっという間に、コース料理も始まった。
「夕食も凄かったけれど、朝食も凄いわね。彩りが豊かで使われている食材も豪華だわ。学園の食事も凄いけれど、実際に食べてみるとそれ以上ね。」
「多分、いつもより豪華だよ。国の恩人だから、特別扱いだと思う。」
「そういう事なのね。」
一口、一口を噛み締めながら食べた。
美味しい。
コルセットが無ければ、もっと食べられるのに。
最後のデザートまで、食べ切ったが途中半分位残す事になったのが残念だ。
「この後、第二王子のフェーン殿下がいらっしゃいます。皆様、このままこちらでお待ちくださいませ。」
食器が下げられると侍女の1人が言った。
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