お姫様抱っこ
よろしくお願いします。
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私達とルドルフは、挨拶をすると、ソファに座った。
「そうでしたか。私が事故の報告を受けて、転移すると、ナコッタ男爵令嬢が丁度倒れそうな所でしたので、支えました。近くの者に報告させると、事故はあったが、全員が回復魔法で無傷。馬車や服はエッグ商会が用意し、ゲッティ皇国の大使夫妻の対応や接待は、アンダギー子爵令嬢がしてくれていました。私がした事は、再度第二王子殿下と大使夫妻の無事を確認して、貴女を抱き上げ、そのまま殿下と夫妻とこちらにいらっしゃる方々全員を王宮にご案内した位ですね。ありがとうございます。本当に助かりました。」
深々とお辞儀をされる。
「そんな頭を上げてください。」
「私達は出来ることをしただけですわ。」
「たまたま近くにいたから、出来ただけですのよ。」
「そう。幸運なことに、貴女達が近くにいてくれたから、尊い命は失われず、外交問題にもならなかった。本当に幸運ですよ。直ぐにでも、国王陛下の方から御礼の言葉があるでしょう。それまで、こちらでお待ちください。飲み物でも食べ物でもお好きな物を部屋付きに伝えて下さい。それから、ラプン男爵令嬢は、婚約者の第二王子殿下と一緒にいらっしゃるので、ご安心ください。では、失礼します。」
ルドルフはそれだけ言うと、あっさりと部屋を出ていった。
「国王陛下から、御礼のお言葉ですか……。緊張しますわね。家の者に指示しただけの私が行って良いんでしょうか。」
「家の力だってある物は使えばいいのよ。それで人が助かったんだから。それにしても、私。宰相様に抱き上げられたの?」
「そうよ。綺麗なお姫様抱っこだったわ。王宮に来た時、抱っこを代わろうとした方もいたのに、ここにあるベッドに寝かせるまで、宰相様がずっと抱き上げていたのよ。国を救った恩人だからって。」
「素敵でしたわ。絶対に離さないという強い意志を感じました。ハナさんは、それだけ凄いことをしたのですね。」
「うわ……。恥ずかしい。重くなかったかな。」
「ハナ、顔真っ赤よ。」
「ハナさん、年上好きだったの?」
「そうよ。宰相様の事、年齢も顔も雰囲気も全部好みなの。」
「そうでしたの。私はてっきり、王太子殿下やシュマロ公爵子息様の事が好きなのかと思っていましたわ。」
「違うわ。私にとっては、王太子殿下も宰相様のご子息のシュマロ公爵子息様も年齢による渋さが足りなさすぎるわね。」
「本当に年上好きね。」
「私の間違えだったようですわね。」
コンコンコン。
ナサリーが扉を開ける。
「はい。どうされましたか?ワゴンですね。受け取りますわ。」
ガラガラとワゴンを押しながら、ナサリーがソファにやってくる。
「お嬢様方に、宰相様から飲み物とお菓子です。」
テーブルいっぱいに飲み物とお菓子が置かれた。
「お昼の時間も大分過ぎていますし、お腹が空きましたわ。ありがたく食べちゃいましょう。」
「そうね。この一口パイ、美味しそうだわ。」
「こちらのクッキーも美味しいですわ。」
わいわい言いながら、お菓子を食べ、アイスティーを飲んだ。
お腹も大分いっぱいになった所で、今度は国王陛下から呼ばれた。
案内に従って、王宮の中を進む。
案内がなかったら、絶対迷子になってる。
「真の聖女、ハナ=ナコッタ男爵令嬢。並びに、エスタロッサ=アンダギー子爵令嬢、ハンナ=エッグ子爵令嬢がご入場致します。」
大きい2枚の扉が、こちら側に開くと中には、玉座に座るロイード国王陛下と横に宰相のルドルフ、周りをお偉い方々が並んでいた。
緊張する。
この中を私達3人で静々と進んでいき、止められた所でカーテシーを行う。
「面をあげよ。」
声に従い、顔を上げる。
「国王陛下からのお言葉である。」
「3人とも此度は大義であった。皆の知る所である、第二王子であるフェーンと婚約者のベルが乗った馬車とゲッティ皇国の大使夫妻が乗った馬車が事故にあった。それを真の聖女の勲章を持つハナ=ナコッタ男爵令嬢が全て癒し、他の2人がそれを助けたのだ。この3人に褒美を授けたい。まず、エッグ商会を手配し、早急に物資を届けたエッグ子爵令嬢には、なんでもはいる鞄を授けよう。この広間位の大きさの物ならはいってしまう魔道具だ。手元に鞄があれば、商会を手配する時間も少なくなるだろう。次に、アンダギー子爵令嬢だが、ゲッティ皇国の大使夫妻に対して、素晴らしい対応を行った。特別外交官としてのバッチを授けよう。アンダギー子爵令嬢の進路の助けとなるだろう。最後にナコッタ男爵令嬢であるが、彼女は直ぐ前にも大変な功績を残して、真の聖女としての勲章を授けている。今回は、今代限りの名誉男爵位を授けることとする。これ以降は、ハナ=ナコッタ=ホイップと名乗るが良い。以上だ。」
「「「有り難き幸せでございます。」」」
「うむ。退場を許す。」
「「「御前失礼致します。」」」
退場して部屋の扉が閉まると、腰が抜けそうになった。
緊張感が凄すぎた。
「今夜はもう遅い為、王宮で止まって帰るようにとの事です。ラプン男爵令嬢から、4人一緒の部屋が希望と伺っていますが、お間違えないでしょうか?」
「「「はい。それでお願いします。」」」
従者の方に、3人揃って返事をしてしまった。
つい謁見みたいになったわ。
従者は一礼すると、私達を案内してくれた。
「みんな、待ってたよ。」
部屋を開けると、ベルが待っていた。
「頼んでダブルベッドを4つくっつけてもらったんだ。少しお泊まり会っぽいでしょ?」
「1人1部屋とか言われるより、凄くいいよ。王宮で1人は心細すぎる。」
「私も不安だったから有難いわ。」
「大変な目に遭いましたが、豪華で素敵なお泊まり会になりそうですね。」
「みんななら、そう言ってくれると思ってたんだ。フェーンや他の人達を救ってくれてありがとう。」
「「「どういたしまして。」」」
「良かった。3人が来たら、一緒に夕食にしようと思ってたんだけれど、お腹空いてる?」
「大丈夫。」
「お菓子いっぱい食べたけれど、意外と大丈夫そう。」
「安心したら、お腹空いてきましたわ。」
「夕食にしよう。王宮のは、豪華で美味しいよ。」
ベルが部屋付きの侍女に伝えると、あっという間に豪華なコース料理が準備された。
「なんだか、夢見たいね。」
「自分が王宮でご飯を食べているなんて、信じられませんわ。」
「今日は色々ありすぎたもんね。」
「それにしても、みんなご褒美貰ったんだって?」
「最高だわ。特別外交官のバッチなんて!性別なんて関係なく、外交官になる道が開けたわ。」
「私も鞄は、最高の持参品になりますわ。」
「私は子爵位なんて、大きすぎてよくわからないわ。」
「これからは、ハナ=ナコッタ=ホイップ名誉男爵だもんね。女性が、爵位を持つなんて滅多にないことよ。婚約の申し込みがこれから凄いかもね。」
「爵位狙いってこと?」
「そうよ。次男以降継げる爵位が無い人たちから、大人気でしょうね。」
「持つ物の定めかな。」
「その前にもっと上の爵位の方から、申し込まれる可能性もありますけれどね。そこは、ハナさん次第ですわね。」
「それはないと思うけれど。」
夕食は話をしながら、楽しく終わった。
豪華な料理に、仲が良い友人達。
王宮にいるけれど、全然緊張しなかった。
お風呂も王宮の侍女に入れてもらって、最高のマッサージを受けた。
香油の匂いも普段嗅いだ事が無いくらい、素敵だ。
寝る支度を全て整えてもらい、ダブルベッドの上に4人寝転がる。
「お泊まり会なら、恋愛の話しようよ。」
「ベルはフェーン第二王子殿下とどうなの?」
「恥ずかしいな……。とりあえず、事故の後ハナのおかげでもうすっかり元気だよ。私が隣にいたのに、結界で守れなくてごめんて言ったら、そんなことか、気にしなくていい。ベルが怪我しなくて良かったと言ってもらえたよ。私達の仲は良いと思うよ。」
「しっかり惚気がありますわね。大変よろしいですわ。ハナさんや、エスタさんはありますか?」
「私は2人には言ったけれど、年上好きなのよ。特に宰相様が1番好みなの。だから、お姫様抱っこされたと聞いて顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったわ。」
「そうね。お姫様抱っこをしている宰相様は、かっこよかったわ。」
「私に意識があれば、お顔を近くで見られたのに残念だわ。」
「今度、話せるようにフェーンに聞いてみようか?」
「いいの。遠くからお顔を見ているのが1番だわ。」
「それなら、それで良いけれど。」
「さあ、次はハンナよ。」
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