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名前を呼ぶのは

よろしくお願いします。

.

部屋の中に、向日葵の花束が置いてある。

7本の向日葵の花言葉は、密かな愛。

ハンレーは考えてくれたって言ってたし、これは期待してしまう。


「お嬢様、向日葵を見つめてどうされたのですか?」


「綺麗だなと思ったの。向日葵が咲くなんて、すっかり夏ね。」


「そうですね。テストが終われば夏休みですし、男爵領に帰るのが楽しみですね。お嬢様に教えて頂いた薔薇野雫先生の話を皆にもしなければ。まさか、お嬢様の家庭教師の先生が薔薇野雫先生だったなんて、ビックニュースですわ。」


「私も驚いたわ。知っていたらサターニャ先生にサインを頂いたのに。またお会いしたいわ。」


「お嬢様は、社交界デビューされたら、またお会いする機会があると思いますわ。」


「そうよね。そうしたら、サインもお話もするわ。その前に今日のテストを頑張るわ。」


「お嬢様、頑張ってください。」


支度をすると、校舎へと向かう。

今日のテストは、外国語、地理、算数の三科目だ。

クラスに到着すると、珍しく騒がしい。

何かあったのかな?


「ハナ、ご機嫌よう。」


「エスタ、ベル、ハンナ、ご機嫌よう。クラスが騒がしいけれど、何かあったの?」


「近衛騎士団の1人が、ムパイ伯爵子息を連れて行きましたの。魔法の思念をテストで使ってしまったのかしら?」


「テストに魔法を使っただけで、近衛騎士団が来るかしら?もっと大事な気がするわ。」


「それにしても、テスト期間の最中にくるなんて、ムパイ伯爵子息も災難だね。」


その後、ムパイ伯爵子息が帰ってくることはなく、そのままテストが始まった。


「昨日も言ったが、夏休みの補習にならない様、しっかりテストを受ける様に。では、外国語のテストから始める。」


テストの用紙を裏返す。

内容は、魔法学園の一生徒として、ゲッティ皇国の大使を魔法学園にお招きする手紙を書くという物だった。

手紙を書くのは、想定外だったわ。

ナコッタ男爵領でサターニャ先生に受けた、手紙の授業を必死に思い出す。

季節の挨拶、本文、締めの構成で成り立っていて、名前は、ハナ=ナコッタではなく、ナコッタハナと書くのがポイントだったはずだ。

季節の挨拶は、向日葵を使おう。

一応形としては、これで良いはず、不安だけれど、しょうがない。

誤字脱字はないし、赤点は逃れますように。


「次のテストは地理だ。解答はきちんと埋める様に。」


地理のテストの内容は、貴族年鑑にのっている物も結構多い。

高位有名貴族の名前と領地、その特産物。

また、近年の災害場所とレッツェル王国の対策方法。

ただし、自分で考えて書く問題もあった。

もし、自分の領地が災害にあったらどう対処するか。

自分の目の前に魔物が来たら、どう対処するか。

自分の領地に魔物が来たら、どう対処するか。

自由記載で書く欄も大きいし、どうしよう。

時間がない。

必死に手を動かす。

ぎりぎり書き終わったところで、時間になった。


「次は算数だ。最後まで気を抜かないように、気をつけろ。」


テスト用紙を見て、安堵する。

この内容なら、問題ない。

中学生の問題だ。

最後の証明の問題、二つ解答を思いついたから、それぞれ書いておいた。

時間が余って、考え事をする。

さっきの地理のテストで、自分の領地に対してどうするかって問題が出ると思ってなかった。

災害は、落雷による大規模な火災の対策方法を書いたけれど、あれで良かったのかしら。

初期消火をして止まらなければ、広がらない様に、一定の木や民家などを壊すという江戸時代くらいの対策しか書けなかった。

魔物にいたっては、自分だけだったら、逃げる一択だし、領地にでたら、住民に避難を促し、辺境騎士団に連絡するだもの、これは地理のテスト点数低いかもしれないわね。

頼むから、赤点は回避したいわ……。


「そこまで。テスト用紙を回収しろ。」


ハンレーの回収の声で、テスト用紙を前の席のベルにおくる。

算数は、満点ね。

まって、今名前の欄が書いてなかった様な……。

私、何故書いてなかったの……。


「テストはこれで終わりだ。それぞれの最初の授業で返却する。今日は、これで解散。」


ハンレーが教室からいなくなると、隣の席のエスタが声をかけてきた。


「ハナ、どうしたの?顔が真っ青よ。算数は得意よね、何があったの?」


「名前書いてなかったみたい……。」


「え?」


「算数の答えは全部わかったから、書いたのに、よりによって、名前書くの忘れたの……。」


「あー。やってしまったわね。」


「最後、用紙をベルに送る時に気づいたの。絶望したわ。」


「確かに、私も受け取った時に、ちらっと見えたけれど、書いてなかったな。」


「やっぱり、そうだよね……。」


「元気出してください。先生と夏休みも一緒に入れますわよ。」


「補習は嬉しくないかな……。」


「とりあえず、今日は終わったので、4人で甘い物でも食べに行きませんか?プリン・ア・ラモードにアイスクリームが乗った物が、あるらしいですわ。」


「それは、良いね。テストで頭を使ったから、甘い物で気分転換しに行こう。」


「そうよ。終わった物は、どうしようもないし、今を楽しみましょう。アイスクリームなら、今の季節にもぴったりだし。」


「そうよね……。アイス、食べにいくわ!」


魔法学園の馬車を使って校門を抜けて、魔法学園の喫茶店にやってきた。

4人の目の前には、ふるふる震えるプリンに真っ白な生クリームとバニラアイス。

沢山のフルーツ。

可愛いし、美味しい。

テスト、何それ。

もう終わったわ。

解答用紙が帰ってくるまで、怖くないわ。

甘い物は正義ね。


「ところで、夏休みは皆さんどう過ごされる予定ですの?良ければ、またお泊まり会をしませんか?」


「いいね。去年のお泊まりは楽しかったから、またやりたいな。今年はハナも含めて4人でやろう。8月の最初の頃なら、大丈夫だよ。」


「ハンナの領地はエッグ商会があるから、目新しい物も沢山あるし、都会よね。私も行きたいわ。日程も大丈夫よ。」


「去年、3人で楽しいことしてたのね。私も行きたいわ。お父様も許してくれると思う。日程も大丈夫だと思うわ。」


「良かったですわ。また夏休みになったら、詳しい招待状を送りますね。」


「楽しみ。」


4人で美味しい物を食べて、存分に癒されて寮に帰った。


「ナサリーただいま。」


「お帰りなさいませ、お嬢様。今日はお帰りが遅かったですね。」


「帰りに友達と喫茶店に寄っていたの。プリンにアイスが美味しかったし、お喋りは、楽しかったわ。夏休みにお泊まり会をやることになったの。」


「それは、良かったですね。お泊まり会はどこでやるのですか?」


「エッグ子爵領よ。」


「エッグ商会のお嬢様とお友達と言っていましたものね。他のお友達も以前仰っていた、外交官のお嬢様と恋愛結婚で有名なラプン男爵のお嬢様ですか?」


「そうよ。皆良い子で、仲が良いの。」


「それは、良かったですわ。夏休みに帰る前に、ナコッタ男爵にもお手紙で知らせておくと良いと思いますわ。」


「そうね。今から書いてしまうわ。」


ナコッタ男爵へ夏休みに友達とお泊まり会をしたい事を手紙に書く。

心配させないように、3人の苗字までしっかり書く。

これで大丈夫だろう。


「ナサリー、後で手紙を出してもらえる?」


「かしこまりました。」


「ありがとう。私、少し出かけてくるわね。」


「遅くならない様に、お気をつけていってらっしゃいませ。」


冷蔵庫で冷やしてあった紅茶のポットとカップ。

蜂蜜檸檬の箱をバスケットに入れて、日傘を持って寮をでる。

きっと、今日もルーンは校庭にいるはずだ。

差し入れをしに行こう。


「ナコッタ男爵令嬢?今日もきてくれたのですか?」


相変わらず、石を引いて走るルーンがいた。

小麦色に日焼けしてきているし、最初に会った時に比べると、少し筋肉もついてきた気がする。


「ええ。何だか、今日もいる気がしたから。暑い中、よく頑張っているわね。」


「学園祭とテスト週間中は、準備も含めてできなかったので、今日からまた走り始めようと思いまして。まさかナコッタ男爵令嬢がきてくれるとは思いませんでした。ありがとうございます。」


「いいのよ、これ、差し入れ。冷たい紅茶といつもの蜂蜜檸檬よ。」


「最初は、蜂蜜檸檬が酸っぱいとおもっていましたが、先輩がよく持ってきてくださるので、段々と大好きになってきました。冷たいレモンティーも美味しいですね。」


「好きになってくれたなら、嬉しいわ。レモンティーは、そのつもりはなかったのだけれど、美味しいならいいわよね。」


ルーンのタオルを手に取ると、顔の汗を拭く。

顔が少し赤い。

熱中症に気をつけないとだな。


「どの位走っていたの?」


「お昼ご飯を食べてからきたので、3時間位ですかね。」


「暑いから飲み物は、いっぱい飲んでね。熱中症で倒れちゃうわ。」


「熱中症って何ですか?」


「汗がでると、体の中の水分や塩分が無くなるの。水分を取らずに活動を続けて、酷くなると倒れてしまうの。それを熱中症って言うのよ。」


「初めて聞きました。そうだったのですね。今度から飲み物を持ってきます。」


「それがいいわ。夏休みは会えなくなるし、気をつけてね。」


「ええ。ありがとうございます。良い夏休みを過ごしてくださいね。」


「こちらこそ。ルーンも良い夏休みを過ごしてね。」


「え?」


「どうしたの?」


「いえ、あの。何でもないです。」


ルーンの顔が赤くなる。


「大丈夫?顔が赤いけれど、熱中症かしら?」


「いや、これは違います。先輩は日焼けしちゃいますし、そろそろ寮に帰られた方がいいと思います。」


「ちゃんと、日傘を差しているわよ?」


「それでも、遅くなると僕が心配ですので。」


「わかったわ。ルーンも気をつけてね。」


「……ありがとうございます。」


ルーンが慌てていておかしかったのが、気になったが、寮に帰った。

何かあったのかな?


「お嬢様、おかえりなさいませ。早かったですね。」


「遅くなると心配だから、早めに帰った方が良いと言われて、帰ってきたわ。」


「良かったです。ナサリーも心配になりますから。これからも是非、そうして下さいね。」


「わかったわ。」


「今日はきっとお疲れでしょうから、お風呂に入った後、マッサージを致します。お肌によいクリームもつけましょう。」


「ナサリーのマッサージは気持ちいいから好きよ。是非、お願いしたいわ。」


身体の色々なツボを的確に押してくれるし、マッサージの後は、顔や手足が細くなる様に感じる。

その日はいつもよりぐっすり眠れるから好きだ。

いい夢見れそう。

おやすみなさい。



.

読んで頂き、ありがとうございます。

暑かったり、寒かったり、不安定な天気が続きますね。

作者は、風邪を引いて辛かったので、皆様もお身体にお気をつけ下さい。

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