頭に思い浮かぶのは
よろしくお願いします。
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「お嬢様、おはようございます。良く眠りましたね。」
「おはよう、ナサリー。もう朝なのね。」
ナサリーが紅茶を差し出してくれたので、受け取って飲む。
今日は、ニンカ男爵領の茶葉ね。
「夜に起こそうかと考えたのですが、よく眠られている様だったので、起こしませんでした。目も腫れていませんね。良かったです。」
「ありがとう。ただね、ナサリー。今日学園は休みだけれど、友達と買い物に行くから、十三時に食堂に集合なの。」
「……お嬢様、紅茶は置いて、先にお風呂に入りましょう。今から入れば、間に合いますわ。」
そこからは、ナサリーの手が凄いスピードで動いた。
編み込み等、とんでもない速さで完璧に仕上げてくれた。
流石、ナサリー。
今日はお出かけだが、食堂を利用する為、制服だ。
ナサリーのおかげで、十五分前には寮を出られた。
食堂まで、十分間に合う。
「皆、お待たせ。」
三人とも食堂の前にいた。
「大丈夫ですわ。私達が時間より早かっただけですから、待ってないですわよ。」
「そうそう。」
「それより、昨日はよく眠れた?」
「ええ、ぐっすり寝たわ。」
「良かった。じゃあ、食堂に入りましょう。」
三人と話しながら食べるご飯はいつも通り、美味しかった。
その後は、学園生なら誰でも使える馬車停留所に向かい、四人で一台を使い、エッグ商会へと向かった。
「お腹いっぱいね。いっぱい食べちゃったわ。」
「ハナは、いつも完食ですわね。それでいて、その細さ、羨ましいですわ。」
「私の身体燃費が悪いらしくて、沢山食べないと動けないの。」
「良いな。私は食べれば食べるほど、お肉になっちゃうから、気をつけないと。」
「もしかして、皆ダイエットしてるの?」
だから、皆いつも半分位残してるのか。
「そうよ。現状維持で気をつけてるの。」
「私もだよ。」
「私もですわ。」
「そうだったのね。聞いた話によると、ニンカ男爵領のお茶がダイエットに効くって言うよね。」
「ええ。王妃殿下にもお墨付きを頂いてますの。苦味の中に、美肌や便秘解消、ダイエットにも効果がある成分がはいっているそうですわ。」
ニンカ男爵は、ハンナの親戚だと前に言っていたから詳しいな。
「やっぱりそうなのね。私、週の半分位はその紅茶を飲んでいるわ。効果が出ている気がする。」
「そうなのですね。私は、苦味が苦手で、週に一回位しか飲んでませんでした。これからは、増やしてみようかしら。」
「私も苦味が苦手で、お茶会くらいしか飲んだ事ないわ。」
「私も余り飲んでいないな。」
「無理する事はないと思うわよ。皆細いし。」
「ハナさんは、細いから良いかも知れませんが、私は死活問題なんです。エッグ商会で買わなければいけませんね。」
「私も、久しぶりに飲んでみようかな。」
「私は、違う紅茶にしておく。」
「ベルも苦手ですの?」
「実はそうなんだ。子供の頃一口飲んで、それから飲んでないかな。」
「結構意外だわ。ベルは、苦いの平気そうに見えるわ。でも苦手なら、私と違うのをみよう。」
「うん、そうするよ。」
エッグ商会には、相変わらずたくさんの商品が置かれていた。
みんなで先に文房具を見てから、エスタとハンナは紅茶を見に行った。
「ハナは何か見たいものがある?」
「新しいリボンを見ようと思ってるわ。」
「いいね。私も見ようかな。」
リボンコーナーには、一番目立つ場所に新商品が置いてあった。
「新商品は、向こうが透ける位の薄さのリボンだね。」
「夏らしくて良いわね。」
「この青いリボン、ハナに似合うな。」
「本当かしら?濃い色は余り似合わないと思っているのだけれど、確かに透けるくらい薄いから、これなら似合うかも。」
「うん。良いと思うよ。」
「ベルには、この緑のリボンが似合うね。赤い髪に良く映えるし、夏にぴったりだわ。」
「緑か。」
「どうしたの?」
「ああ、何でもないよ。」
「とてもそうには、見えないけれど?」
「いや、フェーンの瞳の色が緑色だなって思って。」
「ベル、かわいいわ。リボンの色はこれで決まりだね。私と色違いだし、いいでしょ?」
「う、うん。」
「顔、赤くなってるよ。」
「もう、ハナからかわないで。」
「どうしましたの?」
「新商品のリボンだね、かわいいわ。」
「ベルが、緑のリボンを見て、婚約者の瞳の色だと思ったらしいの。かわいいわよね?」
「あら、熱いですわね。まだ、夏はこれからですのに。」
「流石、ラプン男爵の娘だね。」
「皆でからかうのは、酷いよ。」
「冗談ですわ。それにこのリボンはエッグ商会のおすすめ商品ですから、ベルが買うなら、皆で色違いにしましょう?」
「それが良いと思うわ。私は、ベルが選んでくれた青にしようと思っているの。」
「涼しそうでいいわね。私は何色にしようかな?」
「エスタは、黄色が似合うと思うよ。」
「本当だわ。ベル、よくわかっているわね。」
「ありがとう。」
「私は、何の色が似合うと思いますか?」
「ハンナは、オレンジとかどうかな?」
「良いね、よく似合ってるよ。」
「それにしますわ。」
賑やかにお喋りをして、買い物をして、気分がリフレッシュした。
今日は、三人とお買い物に出かけられて良かったな。
帰り道の中でも、四人で話をして帰った。
これでもう、昨日の事で泣く事は無さそうだ。
「お嬢様、お帰りなさいませ。贈り物が三つ届いていますわ。」
「誰からかしら?」
「一つは、クーヘン公爵令嬢から、もう一つは、王太子殿下からです。最後のものは、宛名がなく、ただ真の聖女へと書いてあります。」
「真の聖女と書いてあるなら、国王陛下から匿名の贈り物かもしれないわ。」
「そうだったのですね。捨てなくて良かったですわ。こちらに、三つとも置いてあります。」
私は、包みを順番に開ける。
一つ目は箱物だ。
中には、厳重に梱包された薔薇野雫先生が描いたキャラクター付きのサイン色紙だ。
先生のサイン、凄く嬉しい。
手紙がついていたので、中を確認する。
季節の事とか色々書いてあった為、要約する。『バーム伯爵令嬢から、薔薇野雫先生がお好きだと聞いたので、こちらを贈ります。気に入ってくださると嬉しいですわ。アリッサ=クーヘン』と書いてあった。
アリッサ、よくわかっているわ。
凄く嬉しい。
部屋に飾るわ。
後で手紙の返事を書いて、学園の敷地内にある美味しいお菓子と一緒に、ナサリーに送ってもらおう。
二つ目は、薄かった。
開けてみると、手紙だけだった。
ただ、内容が凄かった。
要約する。
『私のアリッサを助けてくれて、ありがとう。私からの贈り物は、君が困った時に一度だけ助ける事だよ。男爵領の事でも、君自身の事でも、嫁ぎ先の事でも良い。私が国王になってからでも構わない。ただ、デートして欲しいとか、アリッサが困る事は出来ないよ。ショーン=レッツェル』と書いてあった。
一回だけ何でも助けてくれるって凄い。
ただ、デートとかには、使えないのか。
閉まっておいて、ここだと言うときに使おう。
三つ目は、小さな箱だった。
宛名には確かに真の聖女へと書いてある。
これが、おそらく国王陛下からの贈り物だろう。
包装紙を剥がす。
箱には、猫と時計の絵。
そして、チェシャ宝飾宝石店と書いてあった。
このお店って、ナサリーが前に言っていた王族御用達の高いお店じゃないかな?
箱の中には、銀の華奢な鎖に大きな青い宝石が一粒ついたブレスレットだった。
手紙を見る。
『今はまだ、指輪の代わりにブレスレットを贈ります。貴女を愛するものより。R=S』
「ナサリー、国王陛下からでは、なかったわ。」
「どなたからでしたか?」
「それが、わからないの。イニシャルだけしか書いてなくて……。」
R=Sって、ルドルフ=シュマロ公爵のイニシャルだけれど、まさかね。
全然話もしなかったし。
「そうなのですね。これは!チェシャ宝飾宝石店のものではないですか。しかも、このお手紙。お嬢様、婚約のお申し込みでもあったのですか?」
「された覚えがないの。ただ、真の聖女と書いてあったから、変な方からではない事は確かよ。」
「素晴らしいですわ。男爵様にお手紙を書きましょう。お嬢様に贈り物をしてくる位ですもの。きっと男爵様にも手紙が届いていると思いますわ。」
「そうかしら。」
「ええ。ほら、見てください。お嬢様の華奢な腕にこのブレスレットはぴったりですわ。是非、私にお嬢様がつけている所を見せてください。」
ナサリーが興奮している。
誰だかわからない人からの贈り物だけれど、良いのかな?
左の手首にはめると、ブレスレットは、確かに良い長さだった。
「ああ、お嬢様もお嫁に行ってしまうのですね。」
「ナサリー、気が早いわ。」
「お嬢様、婚約が決まれば、学園を卒業したら、結婚になります。早くもないのですよ。」
エスタ達もその様な事を言っていたけれど。
「しかも、チェシャ宝飾宝石店の婚約指輪ではなく、ブレスレットを贈る事が出来る人物です。余程のお金持ちです。お嬢様がお金に困らなさそうで良かったですわ。」
お金持ちだから良いわけでもない。
「私は、自分で好きになった人と結婚したいの。」
「そうだったのですか……。因みにどなたが好きなのですか?」
ナサリーが真剣な顔で聞いてくる。
頭に思い浮かぶのは、銀髪に碧眼で、私をじっと見つめてくれた大人の男の人。
「今はまだ、居ないわ。」
「お嬢様。夢を見られる時間は、学園時代だけかもしれません。日々を大事にお過ごし下さいませ。」
最後まで、真剣な顔だった。
だって、前世では、二十歳でも三十歳でも何歳でも、好きな時に好きな人と結婚できたのよ。
それなのに、いきなり結婚とか考えられないわ。
学園を卒業したら、私の人生はどうなってしまうのかしら。
ショーンへのお願いは、結婚についてにしようかな。
色々と考えてしまう。
左の手首につけたブレスレットを見る。
凄く可愛いけれど、これって鎖か首輪と一緒なのかな。
ブローチや金の小鳥やイヤリングにネックレスを贈られた時は、素直に嬉しいと思ったのに、憂鬱になってしまった。
でも、せっかく贈ってくれた物だし、そういう風に考えるのも失礼だよね。
このブレスレットなら、授業中につけていても邪魔にならないし、大丈夫だろう。
ナサリーも喜んでいたし、つけておこうかな。
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読んで頂き、ありがとうございます。
やっと恋愛らしく、なってきました。
感想や評価をお待ちしてます。
これからも、よろしくお願いします。




