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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第九章 護国の剣

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アイドルが死んだ日


 もっとも、そう簡単に都合のいい人材が見つかるとは思えないが……。


「お、変わったな」


 信号が青になったのを確認すると、俺とリオは腕を絡ませながら横断歩道を渡る。

 真ん中ほどまで進んだところで、前方からやってきた女子高生の集団が、「あれ中元と斎藤理緒じゃない?」と声を上げた。

 遅れて聞こえてくる、スマホのシャッター音。きっと俺達のイチャイチャを撮影し、どこかのSNSにでも上げているのだろう。いいねに変換されるプライバシー。


 だが、何も恐れることはない。

 この国のSNSは公安が日夜監視しており、俺にとって不利な世論が掲載されないよう、工作活動を行ってくれているのだから。


 俺はリオの尻を撫でながら、さきほどの女子高生に視線を送った。

 ……試してみるか。


「ステータス・オープン」

「?」


 柔らかな尻肉の感触を楽しみつつ、少女達の能力鑑定を行う。


「……やっぱな」

「ねえ、何してんの? 人の体まさぐりながら他の女を見るとか、やめてくんない? そういうの興奮するんだけど!」

「本音漏れてんぞ」


 リオはこういう扱いをされると喜ぶから、このままでいいとして。

 怪訝そうに俺を見つめる女子高生達は、全員がレベル1。ただし、MPは20~30前後はある。


「悪くないな」

「……」


 リオの唇が、小刻みに震えているのがわかる。

 そろそろ誤解を解いてやらないと、嫉妬のあまりこの場で性行為をねだってくるかもしれない。


「別に女漁りしてるわけじゃない。人材発掘の一環だ」

「……あいつらに才能があるっていうの?」

「全くないわけじゃない。根気強くレベルアップさせたら、そこそこの使い手になるだろうな」

「嘘でしょ」


 リオは自らを無断撮影した少女達に、凄まじいガンを飛ばす。


「あの子達を鍛えるつもり?」

「いや。あの程度の素質だと、年単位の修行が要るだろうな。とてもじゃないが開戦までは間に合わない」

「ふうん」


 今度は通りがかりのOLを鑑定する。

 こちらもMPは20前後。十年ほどみっちり鍛えればよい魔法使いになれただろうが。


「なんでさっきから女の人ばっか調べてんの……戦力を探してるなら、男の人に声かければいいじゃん」

「確かに男の方が物理方面のステータスは高いんだが、そっちは現代兵器で代用できるからな。自衛隊が出動すれば、異世界の騎士と対等に渡り合えるだろうさ。問題は科学では補えない力――魔力だ。魔法方面のステータスは、女の方が高い傾向にある」

「ふうん」


 きっとその言葉では説明のつかない力を、人々は霊感や呪いと呼んできたのだろう。

 巫女や魔女、占い師に霊感女。女性が神秘に惹かれる傾向にあるのは、偶然ではないのだ。


「そして若くて精神的に不安定な女の子ほど、魔力が高い」

「要はメンヘラ女ほど魔法の才能があるってこと?」

「もうちょっと言葉を選んでくれ」


 あとお前も一般人にしては高いMPだったからな。

 

「ってことは、精神科に行けばいいんじゃない? 不安定な女子がいっぱい転がってると思うけど」

「……それこそなんとかに刃物だろ。力を与えても、悪用しない人間を選ぶ必要がある」

「じゃあ、適度に狂ってる女を見つけなきゃいけないんだね」


 適度に狂ってるって、どういうことなんだろうな。

 情緒不安定だけど、きちんと話の通じる若い女。そんなのがたくさん集まる場所というと――


「あ」


 灯台下暗しとはこのことだ。

 俺達がこれから行こうとしている施設――テレビ局には、そんな輩がいくらでもいる。

 芸能界に所属している女の子は、皆どこか壊れているのだから。




「大当たりだな」


 楽屋に入るなり、俺は共演者の女の子を片っ端からステータス鑑定してみたのだが、MPが100を超えているような者がゴロゴロと出てきた。

 前にやった時は、クロエの鑑定妨害のせいでよくわからなかったんだよな。

 まさかこんなに才能豊かな集団だったとは。


 考えてみれば、芸能は本来、宗教行事と密接な関係にある仕事だ。

 歌や踊りで神々と対話する、シャーマンのような存在。それが本来の「芸能人」なのである。

 モデル上がりの女の子より、音楽活動をしている子の方がステータスが高いのも頷ける。


 しかも人気グループに所属している子ほど、レアなスキルを持っているのだ。

 自分の魔力やスキルを、無自覚のうちにパフォーマンスに生かした結果かもしれない。


 つまりは俺がすべきことは――人気アイドルとお近付きになり、異世界絡みの事情を全て話した上で、レベルアップさせる。ひたすらこれを繰り返す。

 もちろん、そこまでの信頼関係を築き上げるには、男女の仲になるのが手っ取り早い。


「……」

 

 向こうが恋愛禁止だろうとなんだろうと、一切関係ない。

 この星を守るため――


 俺は――


 アイドルを、食い尽くす。


「もしもし、黒澤プロデューサーですか? 急な話で申し訳ないのですが、最近、司会者に芸人を据えたアイドル番組が増えてますよね? ええ、はい。もし枠が空いてるなら……」


 俺は若干の後ろめたさと、微かな高揚感を覚えながら、売り込みを始めた。

 すまないドルヲタの皆。

 仕方ないんだ。世界の命運がかかってるんだ。背に腹は代えられないんだ……!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「そして若くて精神的に不安定な女の子ほど、魔力が高い」 「要はメンヘラ女ほど魔法の才能があるってこと?」 「もうちょっと言葉を選んでくれ」  あとお前も一般人にしては高いMPだった…
[一言] アイドルを喰い尽す……表沙汰にでもなったら、SNSを見張ってる公安の人が過労死しちゃう!? ……あと、レベル上げするだけなら、PT組んで分身勇者を倒すって裏技があるよね…… アンジェが発狂…
[一言] アイドルは 力を持たせると何とかに刃物 にならないのでしょうか・・・? 馬鹿野郎、いい匂いのする十台のママがそんなことするわけないだろ! とか言いそうですけど。
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